71 / 123
第二部
旅立ちの日
しおりを挟む
あれからどれくらいの月日が経ったでしょうか。
半年? 一年? おそらくそれくらい。
ついにこの日が来ました。
彼女たちは今日、新しい場所へと旅立ちます。
「ユミさん、長い間お世話になりました」
「私は楽しかったですよ。アリアはどうでした?」
「もちろん。楽しかったです。ユミさんと出会えて本当に良かった」
「私もです。よいお友達ができました。また、いつでも遊びに来ていいですからね。ずっとお待ちしてます」
「はい。いつかまた」
お互いに手を振り合ってお別れをします。
彼女たちはこれからいろいろな国を旅するそうです。
そしていつかだれかと一緒に家庭を築き、幸せに暮らすのでしょうか。
そういう当たり前の幸せに憧れはありますが、私は私らしくここで。
『それじゃ、行くわよ~』
ティアが彼女たちを転移で送ります。
本当にもうお別れなのだと思うと、なんだか寂しさがこみ上げてきました。
ダメです。ちゃんと笑顔でお別れしないと。
「――ユミさん。本当にありがとうございました。絶対……また、会いに来ますから。だから……だからっ、泣か……ないで……っ」
アリアにそう言われて気づきました。
私は我慢しているつもりでしたが、意識してしまうと止まらないです。
心の奥底からこみ上げてくるように涙が溢れてきてしまいます。
よく見るとアリアも同じでした。
私たちは二人の様子をシュウさんとカナリアは微笑ましいものを見るかのように見守っていました。
「……ごめんなさい。こんなつもりではなかったのですが……やっぱり寂しくて。でも、もう大丈夫です。会いに来てくれるのでしょ? 待っていますから。約束ですからね」
「もちろん。約束です」
二人で指切りをして、お互い笑顔でお別れです。
「「さよなら」」
そうして彼女たちは森を出ました。
いつか、旅のお話しを聞かせていただきましょう。
楽しみですね。
「……行ってしまいましたね」
「……そうね。でも、いいのよ。いつか会いに来てくれるから。私たちはここで待っていましょう」
「そうですね。どんなお話を聞かせてくれるのか楽しみですね、お嬢様」
「……ええ。ミシェル、お茶にしましょう。何か甘いものが食べたいわ」
「そう言うと思って用意してあります。今、お茶淹れますね」
「ありがとう」
騒がしかった日々は終わり、私たちはまた、三人の日常に戻った。
一抹の寂しさを残して――。
◇◇◇
「――――ミシェル。ミーシェールー!」
「なんですか、お嬢様。そんなに呼ばなくても聞こえてますよ」
「見て見て! 手紙! アリアから!」
アリアから手紙が届いた。
アリアの側にいる精霊が届けてくれた。
ここ十年、毎月欠かさず手紙を送って近況を報告してくれる。
「なんて書いてあるんですか?」
「えっとね……まぁ! カナリアに子供が生まれたって! 元気な女の子らしいわ。それで今度みんなで遊びに来るそうよ。またアリアのとこの双子ちゃんと遊べるわ!」
「それは嬉しいお知らせですね。お祝いをしなくてはですね」
「ええ、ええ。カナリアには何を送ったら喜んでくれるかしら。忙しくなるわね」
アリアたちを歓迎するためにいろいろと準備をしなければいけないわ。
お祝いも用意して、他にも……。
それよりお返事を書かなきゃ!
私たちも変わらず元気です。
あなたたちに会えるのを楽しみにしています。ってね。
~~第二部 完~~
半年? 一年? おそらくそれくらい。
ついにこの日が来ました。
彼女たちは今日、新しい場所へと旅立ちます。
「ユミさん、長い間お世話になりました」
「私は楽しかったですよ。アリアはどうでした?」
「もちろん。楽しかったです。ユミさんと出会えて本当に良かった」
「私もです。よいお友達ができました。また、いつでも遊びに来ていいですからね。ずっとお待ちしてます」
「はい。いつかまた」
お互いに手を振り合ってお別れをします。
彼女たちはこれからいろいろな国を旅するそうです。
そしていつかだれかと一緒に家庭を築き、幸せに暮らすのでしょうか。
そういう当たり前の幸せに憧れはありますが、私は私らしくここで。
『それじゃ、行くわよ~』
ティアが彼女たちを転移で送ります。
本当にもうお別れなのだと思うと、なんだか寂しさがこみ上げてきました。
ダメです。ちゃんと笑顔でお別れしないと。
「――ユミさん。本当にありがとうございました。絶対……また、会いに来ますから。だから……だからっ、泣か……ないで……っ」
アリアにそう言われて気づきました。
私は我慢しているつもりでしたが、意識してしまうと止まらないです。
心の奥底からこみ上げてくるように涙が溢れてきてしまいます。
よく見るとアリアも同じでした。
私たちは二人の様子をシュウさんとカナリアは微笑ましいものを見るかのように見守っていました。
「……ごめんなさい。こんなつもりではなかったのですが……やっぱり寂しくて。でも、もう大丈夫です。会いに来てくれるのでしょ? 待っていますから。約束ですからね」
「もちろん。約束です」
二人で指切りをして、お互い笑顔でお別れです。
「「さよなら」」
そうして彼女たちは森を出ました。
いつか、旅のお話しを聞かせていただきましょう。
楽しみですね。
「……行ってしまいましたね」
「……そうね。でも、いいのよ。いつか会いに来てくれるから。私たちはここで待っていましょう」
「そうですね。どんなお話を聞かせてくれるのか楽しみですね、お嬢様」
「……ええ。ミシェル、お茶にしましょう。何か甘いものが食べたいわ」
「そう言うと思って用意してあります。今、お茶淹れますね」
「ありがとう」
騒がしかった日々は終わり、私たちはまた、三人の日常に戻った。
一抹の寂しさを残して――。
◇◇◇
「――――ミシェル。ミーシェールー!」
「なんですか、お嬢様。そんなに呼ばなくても聞こえてますよ」
「見て見て! 手紙! アリアから!」
アリアから手紙が届いた。
アリアの側にいる精霊が届けてくれた。
ここ十年、毎月欠かさず手紙を送って近況を報告してくれる。
「なんて書いてあるんですか?」
「えっとね……まぁ! カナリアに子供が生まれたって! 元気な女の子らしいわ。それで今度みんなで遊びに来るそうよ。またアリアのとこの双子ちゃんと遊べるわ!」
「それは嬉しいお知らせですね。お祝いをしなくてはですね」
「ええ、ええ。カナリアには何を送ったら喜んでくれるかしら。忙しくなるわね」
アリアたちを歓迎するためにいろいろと準備をしなければいけないわ。
お祝いも用意して、他にも……。
それよりお返事を書かなきゃ!
私たちも変わらず元気です。
あなたたちに会えるのを楽しみにしています。ってね。
~~第二部 完~~
20
お気に入りに追加
521
あなたにおすすめの小説
「無加護」で孤児な私は追い出されたのでのんびりスローライフ生活!…のはずが精霊王に甘く溺愛されてます!?
白井
恋愛
誰もが精霊の加護を受ける国で、リリアは何の精霊の加護も持たない『無加護』として生まれる。
「魂の罪人め、呪われた悪魔め!」
精霊に嫌われ、人に石を投げられ泥まみれ孤児院ではこき使われてきた。
それでも生きるしかないリリアは決心する。
誰にも迷惑をかけないように、森でスローライフをしよう!
それなのに―……
「麗しき私の乙女よ」
すっごい美形…。えっ精霊王!?
どうして無加護の私が精霊王に溺愛されてるの!?
森で出会った精霊王に愛され、リリアの運命は変わっていく。

婚約破棄された上に国外追放された聖女はチート級冒険者として生きていきます~私を追放した王国が大変なことになっている?へぇ、そうですか~
夏芽空
ファンタジー
無茶な仕事量を押し付けられる日々に、聖女マリアはすっかり嫌気が指していた。
「聖女なんてやってられないわよ!」
勢いで聖女の杖を叩きつけるが、跳ね返ってきた杖の先端がマリアの顎にクリーンヒット。
そのまま意識を失う。
意識を失ったマリアは、暗闇の中で前世の記憶を思い出した。
そのことがきっかけで、マリアは強い相手との戦いを望むようになる。
そしてさらには、チート級の力を手に入れる。
目を覚ましたマリアは、婚約者である第一王子から婚約破棄&国外追放を命じられた。
その言葉に、マリアは大歓喜。
(国外追放されれば、聖女という辛いだけの役目から解放されるわ!)
そんな訳で、大はしゃぎで国を出ていくのだった。
外の世界で冒険者という存在を知ったマリアは、『強い相手と戦いたい』という前世の自分の願いを叶えるべく自らも冒険者となり、チート級の力を使って、順調にのし上がっていく。
一方、マリアを追放した王国は、その軽率な行いのせいで異常事態が発生していた……。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

精霊の森に捨てられた少女が、精霊さんと一緒に人の街へ帰ってきた
アイイロモンペ
ファンタジー
2020.9.6.完結いたしました。
2020.9.28. 追補を入れました。
2021.4. 2. 追補を追加しました。
人が精霊と袂を分かった世界。
魔力なしの忌子として瘴気の森に捨てられた幼子は、精霊が好む姿かたちをしていた。
幼子は、ターニャという名を精霊から貰い、精霊の森で精霊に愛されて育った。
ある日、ターニャは人間ある以上は、人間の世界を知るべきだと、育ての親である大精霊に言われる。
人の世の常識を知らないターニャの行動は、周囲の人々を困惑させる。
そして、魔力の強い者が人々を支配すると言う世界で、ターニャは既存の価値観を意識せずにぶち壊していく。
オーソドックスなファンタジーを心がけようと思います。読んでいただけたら嬉しいです。
【完結】追放された生活錬金術師は好きなようにブランド運営します!
加藤伊織
ファンタジー
(全151話予定)世界からは魔法が消えていっており、錬金術師も賢者の石や金を作ることは不可能になっている。そんな中で、生活に必要な細々とした物を作る生活錬金術は「小さな錬金術」と呼ばれていた。
カモミールは師であるロクサーヌから勧められて「小さな錬金術」の道を歩み、ロクサーヌと共に化粧品のブランドを立ち上げて成功していた。しかし、ロクサーヌの突然の死により、その息子で兄弟子であるガストンから住み込んで働いていた家を追い出される。
落ち込みはしたが幼馴染みのヴァージルや友人のタマラに励まされ、独立して工房を持つことにしたカモミールだったが、師と共に運営してきたブランドは名義がガストンに引き継がれており、全て一から出直しという状況に。
そんな中、格安で見つけた恐ろしく古い工房を買い取ることができ、カモミールはその工房で新たなスタートを切ることにした。
器具付き・格安・ただし狭くてボロい……そんな訳あり物件だったが、更におまけが付いていた。据えられた錬金釜が1000年の時を経て精霊となり、人の姿を取ってカモミールの前に現れたのだ。
失われた栄光の過去を懐かしみ、賢者の石やホムンクルスの作成に挑ませようとする錬金釜の精霊・テオ。それに対して全く興味が無い日常指向のカモミール。
過保護な幼馴染みも隣に引っ越してきて、予想外に騒がしい日常が彼女を待っていた。
これは、ポーションも作れないし冒険もしない、ささやかな錬金術師の物語である。
彼女は化粧品や石けんを作り、「ささやかな小市民」でいたつもりなのだが、品質の良い化粧品を作る彼女を周囲が放っておく訳はなく――。
毎日15:10に1話ずつ更新です。
この作品は小説家になろう様・カクヨム様・ノベルアッププラス様にも掲載しています。

冤罪で山に追放された令嬢ですが、逞しく生きてます
里見知美
ファンタジー
王太子に呪いをかけたと断罪され、神の山と恐れられるセントポリオンに追放された公爵令嬢エリザベス。その姿は老婆のように皺だらけで、魔女のように醜い顔をしているという。
だが実は、誰にも言えない理由があり…。
※もともとなろう様でも投稿していた作品ですが、手を加えちょっと長めの話になりました。作者としては抑えた内容になってるつもりですが、流血ありなので、ちょっとエグいかも。恋愛かファンタジーか迷ったんですがひとまず、ファンタジーにしてあります。
全28話で完結。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる