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第二部
仲直り *アリア視点
しおりを挟む「ねぇ、カナリア」
「何よ」
カナリアは素っ気なく返事をした。
私の方を向いてくれないのは、やっぱりまだ私のことを……。
それでもいいか。
私は私で伝えよう。せっかくユミさんがこんなチャンスを与えてくれたのだから。
「私は……嬉しい。こうしてカナリアとまた話せて。もう二度と会えないと思っていたから。だから……だから、これからはちゃんと、姉妹として。やり直したい」
私は思っていることを素直に言った。
こんなこと真正面から言うのは恥ずかしいけれど。
カナリアは俯いて顔を見せない。
「…………バカじゃないの」
小さな呟きが聞こえた。
やっぱりダメかな。
都合が良すぎるとか言われるかな。
正直、少し怖いと思っている。
「今、何歳だと思っているわけ? 今さらやり直すって言ったって、そんなの無理に決まってるでしょ。もうそんな子供じゃないわよ」
「そ、そうだけど……でもっ」
「私たちの関係はやり直すとか、その程度のものじゃないわ。恨まれても当然のことをしたのよ。だから処刑される覚悟を決めたの。それを台無しにされたっていうのに、のん気な事なんて言えるわけないわ」
カナリアの言う通りかもしれない。
私たちの関係はそんな簡単なものではないのは分かっている。
それでも私は……。
そう思うけど、言葉が出てこない。
やっぱりダメだった。
せっかくユミさんがここまでしてくれたのに、私ではその期待に応えられない。
「そっか……。ごめんね。勝手な事言って……」
せめて刑を免れたカナリアを自由にしてあげたい。
それくらいならユミさんも許してくれるかな。
「――――まだ、話は終わってないわよ。勝手にどこ行こうとしてるの」
「え?」
ユミさんにお願いに行こうとした足が止まる。
「確かにやり直しはできない。私たちの間にはそんな簡単な言葉で済ませられるはずのないしこりがある。それだけのことをしたのよ、私は」
「そうだけど」
「それでもっ。それでも、私を許してくれるというのなら……」
そこで一度言葉を切って、意を決したように告げた。
「――新しく始めたい。やり直すのではなく、新しく。聖女アリアと聖女カナリアではなく。アリア・サンダードとカナリアサンダードでもなく。ただのアリアとただのカナリアとして、そんな普通の姉妹として、新しく始めたいっ。……もう一度、今度こそ心の底から、私は…あなたのことをお姉様と呼びたいっ!」
そう言ったカナリアはどこか恥ずかしそうに、でも必死に想いを伝えてくれた。
その顔はまるで純粋な少女のようであり、そして妹が姉へのわがままを言っているかのような、そんな顔をしていた。
そんなカナリアを見て、私は懐かしいあの日を思い出していた。
まだ私が聖女として認定される前、屋敷の庭で二人で遊んでいた頃。
私は勉強して学んだ魔法をカナリアに見せていた。
こんなことできるようになったんだよ、と言って。
その時カナリアは確かこんなこと言っていた。
『私もいつかお姉様みたいになる!』
あの頃は二人中のいい姉妹だったと、そう思う。
あの頃のカナリアが今重なった。
そして私の目からは涙が溢れだしていた。
「……ほ、ほんとに……いいのぉ……?」
「それはこっちのセリフよ。あんなことした私を簡単に許せるのならね。って言っても、聖女様ならそんなこと簡単か……」
「……もう……せいじょじゃないよぉ……!」
感極まった私はカナリアを抱きしめた。
もう絶対に離さないと気持ちを込めて。
「ちょっ。そのぶっさいくな泣き顔、どうにかしなさいよ。まったく……」
困ったお姉様ね、と苦笑して、私の背中に手が添えられた。
この日この時、ようやく私たちは本当の姉妹になれたのだと思いました。
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