婚約破棄されたので森の奥でカフェを開いてスローライフ

あげは

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第二部

帰還

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「これで問題ないですね。――――そこの兵士さん方。今のうちに王子をお連れください。気絶しているので何も言えませんよ」

 そう。
 王子は今気絶している。
 ユミさんが神獣様の名前を呼んだと思ったら、王子はいきなり倒れてしまった。
 正直私には何をしたのか見当もつかない。
 ヴィルはなんだか憧憬の眼差しで神獣様を見ているような。

「さ、さすが神獣と言ったところか……。あんなのと敵対なんかしたくないわな」

「シュウは何をしたかわかったの?」

 シュウにそう聞くと、一瞬目を丸くした後驚愕の表情に変わった。

「おまっ、あれで何も感じなかったのか!? いや……そう言えばアリアも契約者か。それなら……いやでも」

「もうっ。何なのよ。ちゃんと説明してよ」

「説明も何も、ただ威圧しただけだぞ?」

「威圧? それだけ?」

「そうだ。それだけって言っても神獣だからな。かなりビビったぞ」

 そう言ってシュウは腕をまくり、私の前に差し出した。
 よく見るとシュウの腕は鳥肌がすごかった。
 それに小刻みに震えていた。

「……シュウでも怖いと思ったの?」

「そりゃ俺だって怖いと思うことはあるさ。あんなのと対峙してみろ。一瞬で殺されるわ。……いつかヴィルもあれくらいはできるようになるんじゃないか」

 確かに。
 ヴィルのお母様は迫力がすごかった。
 前に立っているだけで体が竦んでしまう。
 そう思うと私の契約している子ってかなり……いやいや、考えないようにしましょう。
 ……ただの子犬……この子はただの子犬……。

 というか、それならユミさんはどうなのだろう。
 故郷がクィンサス王国という話は聞いた。
 神獣と共に生活していた国として有名だったから私でも知っている。
 幼いことからあのカイ様と遊んでいたという話もしていた。
 ユミさんは怖いと思ったことはないのだろうか。

「――――アリア?」

「うわぁっ」

 いつの間にか目の前にユミさんがいた。
 しかも私を覗き込むようにして見上げている。
 え? 何この美少女。本当に同じ女の子とは思えないのですが。
 頭の中がユミさんで埋め尽くされていくぅぅぅ。

「アリア、大丈夫ですか?」

「はっ!? だ、大丈夫! です!」

「本当? 変な顔になっていますよ? なんだか変な時のミシェルみたいな……」

「だ、大丈夫ですから! 全然! ミシェルさんみたいな変態な顔はしてませんから!」

「……アリアさん。さすがの私でも傷つくことはあるのですよ……?」

 はっ。
 いけない。つい変なことを口走ってしまった。
 別に、ミシェルさんのことを変態さんだなんて思っていません。
 時々ユミさんに対しておかしなことをするときはありますけど、思ってませんから。
 本当ですから!!

「アリア。……全部口に出てるぞ」

「はっ!? しまった!」

「……アリアさん」

「は、ハイ!」

「覚悟しておいてくださいね。帰ったら……ふふふ」

 ひ、ひぇぇぇぇ。
 帰ったら何をされるのでしょうか……。

「そんなことより、そろそろ帰りましょう。ほら、あれ見てください」

 ユミさんが指さした方を見ると、馬に乗った集団がすごい勢いでこちらに向かってきていました。
 そう言えば、将軍さんが戻ってくると言っていましたね。
 それじゃあれって……。

「まずいな。王が出張ってきてる。それに神官長に大司祭まで。確実にアリアを元の聖女に戻すつもりだな」

「え……嫌」

「なので。ねっ? 帰りましょう?」

「そ、そうですよっ! 早く帰りましょう! ユミさん。そんな能天気に笑ってないで早く!!」

「え……私が悪いのですか? 私が帰ろうって言っていたはずなのに……?」

「はぁい。お嬢様ぁ、転移しますから早く私の手を掴んでくださいね~。もしくは私に抱き着いても構いませんよ! 大・勧・迎です!!」

 ミシェルさんが何か言っているのを無視して、私はユミさんの手を握る。
 反対の手でミシェルさんの手を掴み視線で促す。
 なぜかミシェルさんが睨んでいたのが気になったけどこの際後回し。
 早く転移してくださーい!

 私たちの足元に巨大な魔法陣が出現し、強い光を放った。
 光が収まった時、私たちの姿は消えていた。




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