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第二部
うるさい王子は放置
しおりを挟むアリアを迎えに来ると、先ほどとはかなり人が減っていました。
妹のカナリアさんはもういなかったです。
おそらく連行されたのでしょうね。
「何者だ、貴様ら! 王太子である私に対して無礼だろう!!」
うるさいですね。
というかこの人まだいたのですか。
カナリアさんと一緒に連れていかれたものかと思っていました。
先ほども姿は見せたはずなのですが、もうお忘れなのでしょうか。
「無礼……と申されましても。私は別にあなたの国の民ではないですし、それに王太子と言っても敬うに値しない相手とは思えませんが。どう思う、ミシェル?」
「明らかに無能臭が漂っていますね。立場だけの張りぼてとしか思えません」
「だそうですよ。考えを改めてやり直してはいかが?」
「……き、きさま、らぁ!! 私を馬鹿にしているのかっ!!!」
それ以外にどういう意味があると思っているのでしょうか。
不思議な方ですね。
「そんなことより、アリア。もう終わったのですよね? でしたら、帰りましょう。今日は来る前にミシェルがプリンを作ってくれたのですよ。一緒にお茶しましょう!」
「え、あの、えっと……。ははは……」
「すげぇな、お嬢様。まるで空気を読まずにあんな楽しそうな。どんなメンタルしてんだよ」
「お嬢様ですから。切り替えの早さは世界一です」
そこのメイドと騎士。
余計なことは言わなくていいのですよ。
変な王子の相手なんてしていられませんもの。
こういうのは無視して放置が一番ですよ。
「私をっ! 無視! するなぁぁ!!」
さっきから本当に騒がしい人ですね。
もう終わったのですからあなたも帰ればいいではないですか。
後ろにいる兵士さんたちも帰りたそうにしていますよ。
「アリア。この人はどうしてこんなに怒っているのかしら?」
「えっと……なんて言えばいいのか……」
「無能王子はまだアリアを偽物だと思っているんだ。だからカナリアを連れていかれて怒り心頭。そして神獣の存在すら受け入れられない。なんせ無能だから。将軍が王子をどうにかできる人を連れて来るらしいが、それを待つ義理はない。正直、俺たちも早くこの場から離れたいと思っている」
シュウさんが簡潔に説明してくれました。
何ともわかりやすく、まとまった説明で、私もすんなりと理解することができました。
ということは、この人は未だにアリアを捕まえようとしているわけですね。
なんて……。
「なんて、愚かな人」
「なんだと!?」
「だってそうでしょう。あなたは自分の行いが全て正しいと思っている。自分の行動が正義でありそれ以外は全て悪。そういう認識なのでしょう?」
「当然だ! 私は――――」
「王子だから、ですか? 一周回って憐れですね。王子だから何をしても正しい。王子だから何をしてもいい。そんなのは妄言です。子供の時分に卒業しておくべきものです。自分の非を……失敗を認め反省し、次に生かす。そうして人は成長していくものです。自分は全て正しいなどと愚かな発言をこうも堂々と言えるとは。厚顔無恥とはこのことですね」
「なっ!? わ、私はっ!」
「それはもう聞き飽きました。それに周囲の言葉を聞かず自分勝手に行動するのも良くありませんね。それは迷惑しか生みません。
あなたがご執心のカナリアさんは自分の非を認めましたよ。私の想像ですが、おそらく罪は重いでしょう。それでも彼女は自らを省みることができました。もし命が残れば、カナリアさんは立派な女性に成長することでしょう。
――あなたはどうですか?」
「み、認めん! 私は、認めんぞっ!!」
「これ以上は無駄ですね。残念です。カイ、お願いします」
『心得た』
「何を――っが!?」
王子が気絶し、倒れました。
カイにお願いして威圧してもらいました。
神獣というのはこういうとき助かります。
後はもういいでしょう。兵士さんたちにお任せします。
うるさい王子はこうして放置しておくに限ります。
それでは私たちは帰りましょうか。
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