婚約破棄されたので森の奥でカフェを開いてスローライフ

あげは

文字の大きさ
上 下
63 / 123
第二部

 *アリア視点

しおりを挟む


意外とすんなり終わった。 
カナリアがあんなに素直になるとは思ってなかった。
まあ、こうなったのは神獣のおかげ。ヴィルがいなかったらもっと……。

でも、終わったものは終わったのだから、もう何も言わない。
カナリアもどこか晴れやかな表情をしている。
私たち姉妹の間に、多少のしこりは残っているかもしれないけれど、蟠りはもうないはず。
今後カナリアがどんな罰を受けるかは分からない。
もし、国外追放とかだったら一緒に旅をするのもいいかもしれない。
今までできなかった姉妹としての時間を、なんて憧れもある。
……難しいかも。そうなったらいいな。

「…………どう思う、シュウ?」

「そうだな。アリアがそれを望むなら叶えてやりたいとは思うが、難しいだろうな。今のカナリアであれば害はない。周りがそれを許さないがな」

「…………そう、よね」

なんだか残念だわ。
もう私たちのことは放っておいてほしいのに、他の人が解放してくれないなんて。
それだけ迷惑をかけたのは事実だから、文句を言える立場ではないけど。

「そんな甘っちょろい考えができるなんて、ほんとお人好しなのか何なのか。私に待っているのは、極刑か死ぬまで幽閉よ。もう二度とお姉様と会うことはないわ。これでお別れ。だから、私のことは忘れなさい。それで今度はあんたが自由に生きるの。こんな国で生涯を終えることなんて、私が許さないから。そんなことになったら化けてでも出て来るから、覚悟しなさい」

「……うん。わかったわ。私はこの国には戻らない。もっといろいろな国を……世界を見て回るから。………………いつか、あなたにいっぱいお話してあげるから」

これで本当に終わりね。
最後、ちゃんとカナリアと和解?ができたから、良かったと思う。
カナリアに会えなくなるのは寂しいけれど、彼女のあの顔を見たら何も言えないじゃない。

「それじゃ、行くわ。じゃあね、お姉様」

「さようなら、カナリア」

カナリアは兵士に連行されていった。
将軍と呼ばれた男性が私たちに敬礼して去って行った。
この国のことは彼らがどうにかしてくれるだろう。
そんな不思議な信頼感があった。

あとは…………。

「――おい、待て! カナリアをどこに連れて行く気だ! 彼女は聖女だぞ。なぜ偽聖女ではなくカナリアを捕らえているのだ!」

未だに状況を理解していない王子だけ。
ここまで何を見ていたのかしら。
本当にこんなのに私は振り回されていたと思うと、だんだん腹が立ってきた。

「殿下。そろそろ現実をご覧ください。偽聖女はこの者です。神獣と契約した方が偽物になる筈もありません。我々が間違っていたのです。どうか、ご理解を」

「何をバカなことを言っているのだ! 神獣などいるわけがないだろう! 騙されているんだ! あの女の口車に乗せられるな!!」

ほんと、どうしようかしら…………。








しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

ひめさまはおうちにかえりたい

あかね
ファンタジー
政略結婚と言えど、これはない。帰ろう。とヴァージニアは決めた。故郷の兄に気に入らなかったら潰して帰ってこいと言われ嫁いだお姫様が、王冠を手にするまでのお話。(おうちにかえりたい編)

【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。

138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」  お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。  賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。  誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。  そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。  諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。

男装の二刀流令嬢・ヴァレンティーナ!~婚約破棄されても明日を強く生き!そして愛を知る~

兎森りんこ
恋愛
とあるパーティー会場で、傍若無人な婚約破棄宣言を受けた黒髪令嬢・ヴァレンティーナ。 彼女は男装で二刀流を操る、気高い『男装令嬢』だった。 パーティーでも颯爽とした振る舞いを見せ退場したヴァレンティーナ。 ムダ遣いで財産を食い潰したバカな父親は、ヴァレンティーナに自分から謝り嫁げと怒鳴る。 その時、彼女は父親に静かに反抗をする。 怒り狂った父は勘当を言い渡すが、また颯爽と家を出るヴァレンティーナ。 彼女は妹分のメイドのアリスと一緒に旅を始める。 雨の山道で助けを求めた少年がキッカケで、ヴァレンティーナは一人の男、ラファエルと出逢う。 精悍なラファエルは一体どんな男なのか? ほんの数日の間に燃え上がる恋。 初めての感情に、ヴァレンティーナは戸惑うが……。 強く生きる男装の令嬢・ヴァレンティーナが見つけた愛の行方は……。 ◇◇ヴァレンティーナ・サンドラス(20)◇◇   伯爵令嬢。黒髪で長身。祖母が考案したマルテーナ剣術という二刀流剣術の使い手。   美しい顔立ちで普段から男装をしている。 ◇◇ラファエル・ラウドュース(22)◇◇   辺境の地で、大きな屋敷に住む好青年。   村の皆に慕われ、剣道場も開いている。   茶色の柔らかい髪に、琥珀色の瞳。剣士の体つき。    ◇◇アリス(18)◇◇   メイド。   ヴァレンティーナに拾われた過去から、彼女を何よりも慕っている。   明るく可愛い人気者。 ◇◇ルーク◇◇   山道で助けを求めていた少年。 ブクマ、評価、いいね、感想頂けますと泣いて喜びます! 5万字程度の中編作品ですが、長編化可能です。 このお話はなろう様、ベリーズカフェ様でも投稿しております。     過去に「二刀流令嬢」という掌編小説を書きましたが、話は全く別物です。

失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~

紅月シン
ファンタジー
 聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。  いや嘘だ。  本当は不満でいっぱいだった。  食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。  だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。  しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。  そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。  二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。  だが彼女は知らなかった。  三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。  知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。 ※完結しました。 ※小説家になろう様にも投稿しています

「無加護」で孤児な私は追い出されたのでのんびりスローライフ生活!…のはずが精霊王に甘く溺愛されてます!?

白井
恋愛
誰もが精霊の加護を受ける国で、リリアは何の精霊の加護も持たない『無加護』として生まれる。 「魂の罪人め、呪われた悪魔め!」 精霊に嫌われ、人に石を投げられ泥まみれ孤児院ではこき使われてきた。 それでも生きるしかないリリアは決心する。 誰にも迷惑をかけないように、森でスローライフをしよう! それなのに―…… 「麗しき私の乙女よ」 すっごい美形…。えっ精霊王!? どうして無加護の私が精霊王に溺愛されてるの!? 森で出会った精霊王に愛され、リリアの運命は変わっていく。

通称偽聖女は便利屋を始めました ~ただし国家存亡の危機は謹んでお断りします~

フルーツパフェ
ファンタジー
 エレスト神聖国の聖女、ミカディラが没した。  前聖女の転生者としてセシル=エレスティーノがその任を引き継ぐも、政治家達の陰謀により、偽聖女の濡れ衣を着せられて生前でありながら聖女の座を剥奪されてしまう。  死罪を免れたセシルは辺境の村で便利屋を開業することに。  先代より受け継がれた魔力と叡智を使って、治療から未来予知、技術指導まで何でこなす第二の人生が始まった。  弱い立場の人々を救いながらも、彼女は言う。 ――基本は何でもしますが、国家存亡の危機だけはお断りします。それは後任(本物の聖女)に任せますから

野生児少女の生存日記

花見酒
ファンタジー
とある村に住んでいた少女、とある鑑定式にて自身の適性が無属性だった事で危険な森に置き去りにされ、その森で生き延びた少女の物語

追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中

四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。

処理中です...