婚約破棄されたので森の奥でカフェを開いてスローライフ

あげは

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第二部

拗ねてない

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「ティア、随分と遅かったですね」

『ちょっとね~。それよりこいつね? うちの子たちから力を奪っている愚か者は』

 いつになく冷たい声。
 以前も話を聞いてお怒りでしたが、それ以上です。
 やはり本人を前にすると抑えられないようですね。

「わ、わしの力をっ……。一体何者じゃ」

『あんたなら見てわかるでしょ。それだけうちの子たちから奪ったのだから。それでもわからないというのなら、その程度ということね。今まで威張り散らしていたみたいだけど、あたしたちからしたら塵みたいなものよ』

「わしの力を、塵だ、と!? おのれ貴様!」

 ティアの挑発に乗せられおじいさんもお怒りみたいです。
 また体から黒い靄が出てきました。
 溢れだした靄は勢いそのままにティアに襲い掛かります。

『だから、言っているでしょ。こんなものであたしをどうにかできるとでも?』

 ティアが右手を軽く振っただけで黒い靄は霧散しました。
 今の、なんだかカッコイイですね! 
 私もやってみたいです。

「なっ!? そのようなことがあってたまるかっ!」

『いい加減諦めたらどう? あたしはただあんたにそれを教えたじじいについて聞きたいだけだし。ちょっと面倒くさくなってきたのよね。早く終わらせて帰りたいわぁ』

「ば、バカにしおってぇぇぇ。それなら!」

 おじいさんは今度はそれを私たちに向けてきました。
 ティアのようにやってみたいのですが、ダメですか? ダメ? なら仕方ないですね……。

「カイ」

『―――――――――!!』

 カイが珍しく神獣のような咆哮。
 耳を劈く咆哮を間近で受けたので少しキーンとなりました。
 おじいさんは何やら腰を抜かしていますね。

『主。珍しくも何も我は神獣であるぞ。よもや忘れていたわけではあるまいな』

「あなたもですか!? どうして皆そうやって私の心を読むんですか! ぷらいばしぃの侵害です。訴えてやりますからねっ!」

「いえ、わかりやすい表情をしているお嬢様がいけないかと。可愛いので特に問題はありませんが」

「大ありです! わ・た・し・が! 困るんです!」

『ねぇねぇ。そんなことより早く聞きたいこと聞いて帰りましょうよ~』

「そんなことって何ですか! 私にとっては大事なことなんですよっ!」

「そうですね。では、帰ってから話を聞きましょう。今はそんなことは後回しです」

「ぐすっ……。最近私の扱い雑じゃないですか……?」

 あっ。
 誰一人として私の話を聞いてくれていませんでした。
 嘘泣きもバレていますね、これ。
 私が恥ずかしいだけじゃないですか。
 それはそれで本当に泣きますよ? いいんですか? 泣いちゃいますからねっ。

『で? あんたにそれを教えたじじいは何処にいるの?』

「…………し、知らない。あの時はたまたま会っただけじゃ。かの方は噂でしか聞いたことなかったからの」

「どんな噂ですか?」

「神出鬼没で力を求める者の前にのみ姿を現す。その老魔導士に会ったものは必ず力を手に入れる」

『へぇ。そんな噂になってたのね、あのじじい。うちの子たちに捜索させようかしら』

「ティア様。先ほどからその言い回しだと知り合いなのでしょうか?」

『そう、ね……。この話はあとでしましょう。それよりこいつどうにかしましょう。聞きたいことは聞いたし、もう用済みね。処分しましょう』

「ま、待ってくだされ! 命だけはっ、頼みます! 命だけは、勘弁してほしい!」

「と、言っていますが?」

『面倒。ミシェルに任せるわ。あたしは先に戻ってるから』

「かしこまりました。では、おじいさん。命だけは助けてあげます。お嬢様の前でそのような野蛮な事をするわけには参りませんので」

「ほ、ほんとですかな!?」

「ええ。あとはご自分で何とかしてください。それでは」

「へっ? この穴はああぁぁぁぁぁぁ」

「これで終わりですね。お嬢様、いつまでも拗ねていないで帰りますよ」

「あれ? おじいさんは? というか、拗ねてないしっ」

「拗ねてたじゃないですか。……おじいさんなら転移させました。どこに行ったかは私もわかりませんが」

 そうなんですか。私が砂で遊んでいる間に。
 まあ、ミシェルが言うことですから間違いないですね。

「では、アリアたちを拾って帰りましょう」





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