婚約破棄されたので森の奥でカフェを開いてスローライフ

あげは

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第二部

追跡

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「一体どこまで行くのでしょうか。カイからこんなに逃げられるなんて、意外とあのおじいさんて凄い人なんですかね」

「まあ、仮にも精霊に対して事を起こせるくらいですからね。それなりでしょう。…………それよりお嬢様、そんなにのんびりとしていられると困ります。もう少し緊張感というものをお持ちになっていただきませんと」

 ミシェルがそう言うが仕方ないと思います。
 だって、周りは砂漠なので一面砂しかなく、景色に変化がないです。
 それをひたすらおじいさんと追いかけっこですよ。
 なんだか飽きてきました。

「ああ、ほら。そろそろ追いつきそうですよ」

 ミシェルがそう言うので、姿勢を正し前を見る。
 相変わらず砂以外何もない場所。
 どうしてこんなところまで逃げてきたのでしょうか。
 ちなみに私は、ミシェルを背もたれにしてカイの上で寛いでいました。
 なかなかスリルと優雅を同時に堪能できる機会なんてありませんからね。
 ある種の暇つぶしです。
 そんなことよりおじいさんですね。

「……まさか、ここまで追ってくるとは思わなんだ。神獣に追いかけられるとはなかなか経験できませんからな。少々楽しんでしまいました」

「もう鬼ごっこは終わりですか? こんなところまできて、何か目的でもおありで?」

「そんなもの聞かれても答えられませんよ。しかし、それをわかっていながらここまで来るとは、存外おつむが弱いと見ました」

「そんなことはありません! お嬢様はとっても賢く美しく愛らしい方なのですっ! それを、どうしてあなたのような枯れた老人風情の尻を追っかけなければならないのか。残念で仕方ありません。できればお嬢様のような超絶美少女になってから追いかけられてください! ですが、お嬢様を越えられるとは思わないことです!」

「「…………」」

 思わず無言になってしまいました。
 おじいさんもなんとも言えない表情をされています。
 この子はいきなり何を言っているのでしょうか。
 こういう時くらいは少し空気というものを読んでほしいですね。

「私は空気を読めないのではなく、読まないのです。お嬢様とは違うのです」

「だからっ! 人の心を読むんじゃありません! まったく、あなたのせいで変な空気になってしまったのですからね」

「いやいや、お嬢さんも大概だと思いますがね。……それにしても面白いメイドさんではないですか。そこまで精霊と契約している人間を見たことがありませんよ、わしは。ぜひ、いろいろと研究させていただきたいものですなぁ」

「遠慮します。私の身も心も全てお嬢様のもの。お嬢様以外にこの身を捧げることはありません。なのでその汚らしい視線を向けるのはやめなさい。そういう視線を私に向けていいのもお嬢様だけです」

「向けません。馬鹿なこと言ってないで、まずはおじいさんを捕らえなさい」

 このままではいつまでたっても話が進みません。
 とにかくあのおじいさんには聞きたいことがあるのです。
 動けないようにしましょう。

「おっと。こんなところで精霊魔法を使うのはオススメしませんな。せっかくの精霊さんがかわいそうですよ」

「いえ、あなた程度に精霊魔法を使うまでもありません。これで十分です」

 そう言ってミシェルが手を振ると、おじいさんの体が砂に埋まった。
 首から上だけを残して、おじいさんはその場でキョトンとしていた。

「……へ?」

「さすがミシェルですね。それではおじいさん、いろいろとお話を聞かせてもらいましょうか」







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