上 下
52 / 123
第二部

作戦会議 (4)

しおりを挟む

「見たんですか? 怪しげな魔導士を」

『ああ。ボロボロのローブを纏った小柄な男だろう。其方の妹の側にいた。奴は奴でこの森のことを調べているらしい。詳しいことは知らんがな』

 話を聞くだけでも怪しいですね。
 ボロボロのローブを纏った魔導士って、時代錯誤にもほどがありませんか?
 現代の魔導士は皆綺麗な格好をしていらっしゃいますよ。
 それにローブとかではなく礼服のようなものを着ていましたね。

「そいつで間違いないな。俺が見たのもその小柄な男だった。つまりカナリアはその魔導士の協力を得ていると確信できた」

「そうですね。まさか妹が、とも思いましたが、私が知らないだけでそういう子だったのでしょうか……」

 アリアが悲し気に顔を伏せます。
 そういう話は聞いていたけど、やはり妹のことを信じていたかったのでしょう。
 血の繋がった双子の姉妹ですものね。
 私にはわからないことですが。

「しかし、王子と組んでいると思っていたがそうじゃなかったみたいだな。もしかするとカナリアは王子まで利用しているのかもしれないな」

「かなり狡猾な方のようですね。そこまでして地位が欲しいのでしょうか」

「地位が欲しいというのもあるだろうが、アリアが聖女だったというのが一番の要因だろう。あいつは幼い頃からアリアと比べられてきた。憎んでいると言っても過言ではない。そのアリアから地位を奪うことに意味があるのだろうな」

「そうなんですね。……まったく、くだらない話です」

「お嬢様、思っていることが口に出てしまっていますよ」

 これはいけません。うっかり。
 しかし、そう思うのはミシェルも同じでしょう。
 顔に書いてありますよ。

「私にはわからないのですが、そんなにこだわるものではないはずです。他に目を向けるべきものはたくさんあります。私から見たら視野が狭いとしか思えません」

「確かにお嬢様から見たらそうかもしれない。けれど、カナリアにとってはそれが自分の存在を証明できるものであり、そうすることでしか自分を肯定できないんだ」

「なんだか可哀想な人ですね。だからと言って、私は容赦したりしません。この森を狙ってくるというのであれば返り討ちにします。私の友人を傷つけるのであれば相応の仕返しを。何より精霊さんに対する不敬に他ならない。徹底的に排除するべきです。……そうですね、ミシェル?」

「お嬢様がそれを望まれるのなら、私はただお側で支えるのみ。お嬢様の障害となるものは完膚なきまで粉砕してご覧に入れましょう」

 さすがミシェルですね。
 頼りになります。

「おっかねぇなぁ。こんなの敵に回したくないわな。あいつらが若干不憫に思えてきた」

「そ、そうですね。なんだかお二人から言い知れぬ迫力を感じました……」

 シュウさんとアリアが頬を引き攣らせて顔を見合わせています。
 もちろんあなたたちの力にも期待していますからね。

「それでどうしますか? ここまで来るというのなら待っていますか?」

「それじゃどれだけ時間がかかるかわからないだろう。こっちから乗り込んでいった方がいいのではないか?」

「サンドリオンはここからではかなり遠いですよ」

「大丈夫です。私たちはカイに乗っていきますからすぐです」

「お嬢様、そんな目立つことはできませんよ。あちらに乗り込むとしても、住んでいる民を徒に混乱させるのはいけません。もっとこっそり行きませんと」

 悩ましいですね。
 もっと近ければよかったのですが。

『我がミシェルを連れていき、転移用の拠点を作ればいいのでは?』

 それは……なかなか魅力的な提案ですね。
 他になければそれで行きましょう。






しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

聖女の紋章 転生?少女は女神の加護と前世の知識で無双する わたしは聖女ではありません。公爵令嬢です!

幸之丞
ファンタジー
2023/11/22~11/23  女性向けホットランキング1位 2023/11/24 10:00 ファンタジーランキング1位  ありがとうございます。 「うわ~ 私を捨てないでー!」 声を出して私を捨てようとする父さんに叫ぼうとしました・・・ でも私は意識がはっきりしているけれど、体はまだ、生れて1週間くらいしか経っていないので 「ばぶ ばぶうう ばぶ だああ」 くらいにしか聞こえていないのね? と思っていたけど ササッと 捨てられてしまいました~ 誰か拾って~ 私は、陽菜。数ヶ月前まで、日本で女子高生をしていました。 将来の為に良い大学に入学しようと塾にいっています。 塾の帰り道、車の事故に巻き込まれて、気づいてみたら何故か新しいお母さんのお腹の中。隣には姉妹もいる。そう双子なの。 私達が生まれたその後、私は魔力が少ないから、伯爵の娘として恥ずかしいとかで、捨てられた・・・  ↑ここ冒頭 けれども、公爵家に拾われた。ああ 良かった・・・ そしてこれから私は捨てられないように、前世の記憶を使って知識チートで家族のため、公爵領にする人のために領地を豊かにします。 「この子ちょっとおかしいこと言ってるぞ」 と言われても、必殺 「女神様のお告げです。昨夜夢にでてきました」で大丈夫。 だって私には、愛と豊穣の女神様に愛されている証、聖女の紋章があるのです。 この物語は、魔法と剣の世界で主人公のエルーシアは魔法チートと知識チートで領地を豊かにするためにスライムや古竜と仲良くなって、お力をちょっと借りたりもします。 果たして、エルーシアは捨てられた本当の理由を知ることが出来るのか? さあ! 物語が始まります。

[完結]前世引きこもりの私が異世界転生して異世界で新しく人生やり直します

mikadozero
ファンタジー
私は、鈴木凛21歳。自分で言うのはなんだが可愛い名前をしている。だがこんなに可愛い名前をしていても現実は甘くなかった。 中高と私はクラスの隅で一人ぼっちで生きてきた。だから、コミュニケーション家族以外とは話せない。 私は社会では生きていけないほどダメ人間になっていた。 そんな私はもう人生が嫌だと思い…私は命を絶った。 自分はこんな世界で良かったのだろうかと少し後悔したが遅かった。次に目が覚めた時は暗闇の世界だった。私は死後の世界かと思ったが違かった。 目の前に女神が現れて言う。 「あなたは命を絶ってしまった。まだ若いもう一度チャンスを与えましょう」 そう言われて私は首を傾げる。 「神様…私もう一回人生やり直してもまた同じですよ?」 そう言うが神は聞く耳を持たない。私は神に対して呆れた。 神は書類を提示させてきて言う。 「これに書いてくれ」と言われて私は書く。 「鈴木凛」と署名する。そして、神は書いた紙を見て言う。 「鈴木凛…次の名前はソフィとかどう?」 私は頷くと神は笑顔で言う。 「次の人生頑張ってください」とそう言われて私の視界は白い世界に包まれた。 ーーーーーーーーー 毎話1500文字程度目安に書きます。 たまに2000文字が出るかもです。

2人の幸せとは?今世も双子の姉妹で生まれちゃいました!

☆n
恋愛
何度生まれ変わっても双子の妹に全てを奪われる姉。 そしてその姉を見守り続けた者(物)達。 ー姉を見守り続けた者(物)達は、全ての力を今世に生まれたあの子に注ぐー どれだけ悔しかったか...。あの子を幸せにできない自分達をどれだけ痛めつけてきたか...。 悔し涙の分だけ持った私達の力の全てを今世のあの子に...

追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中

四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。

憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!

さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ 祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き! も……もう嫌だぁ! 半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける! 時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ! 大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。 色んなキャラ出しまくりぃ! カクヨムでも掲載チュッ ⚠︎この物語は全てフィクションです。 ⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!

【完結】追放された生活錬金術師は好きなようにブランド運営します!

加藤伊織
ファンタジー
(全151話予定)世界からは魔法が消えていっており、錬金術師も賢者の石や金を作ることは不可能になっている。そんな中で、生活に必要な細々とした物を作る生活錬金術は「小さな錬金術」と呼ばれていた。 カモミールは師であるロクサーヌから勧められて「小さな錬金術」の道を歩み、ロクサーヌと共に化粧品のブランドを立ち上げて成功していた。しかし、ロクサーヌの突然の死により、その息子で兄弟子であるガストンから住み込んで働いていた家を追い出される。 落ち込みはしたが幼馴染みのヴァージルや友人のタマラに励まされ、独立して工房を持つことにしたカモミールだったが、師と共に運営してきたブランドは名義がガストンに引き継がれており、全て一から出直しという状況に。 そんな中、格安で見つけた恐ろしく古い工房を買い取ることができ、カモミールはその工房で新たなスタートを切ることにした。 器具付き・格安・ただし狭くてボロい……そんな訳あり物件だったが、更におまけが付いていた。据えられた錬金釜が1000年の時を経て精霊となり、人の姿を取ってカモミールの前に現れたのだ。 失われた栄光の過去を懐かしみ、賢者の石やホムンクルスの作成に挑ませようとする錬金釜の精霊・テオ。それに対して全く興味が無い日常指向のカモミール。 過保護な幼馴染みも隣に引っ越してきて、予想外に騒がしい日常が彼女を待っていた。 これは、ポーションも作れないし冒険もしない、ささやかな錬金術師の物語である。 彼女は化粧品や石けんを作り、「ささやかな小市民」でいたつもりなのだが、品質の良い化粧品を作る彼女を周囲が放っておく訳はなく――。 毎日15:10に1話ずつ更新です。 この作品は小説家になろう様・カクヨム様・ノベルアッププラス様にも掲載しています。

美味しい料理で村を再建!アリシャ宿屋はじめます

今野綾
ファンタジー
住んでいた村が襲われ家族も住む場所も失ったアリシャ。助けてくれた村に住むことに決めた。 アリシャはいつの間にか宿っていた力に次第に気づいて…… 表紙 チルヲさん 出てくる料理は架空のものです 造語もあります11/9 参考にしている本 中世ヨーロッパの農村の生活 中世ヨーロッパを生きる 中世ヨーロッパの都市の生活 中世ヨーロッパの暮らし 中世ヨーロッパのレシピ wikipediaなど

処理中です...