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第二部
作戦会議 (4)
しおりを挟む「見たんですか? 怪しげな魔導士を」
『ああ。ボロボロのローブを纏った小柄な男だろう。其方の妹の側にいた。奴は奴でこの森のことを調べているらしい。詳しいことは知らんがな』
話を聞くだけでも怪しいですね。
ボロボロのローブを纏った魔導士って、時代錯誤にもほどがありませんか?
現代の魔導士は皆綺麗な格好をしていらっしゃいますよ。
それにローブとかではなく礼服のようなものを着ていましたね。
「そいつで間違いないな。俺が見たのもその小柄な男だった。つまりカナリアはその魔導士の協力を得ていると確信できた」
「そうですね。まさか妹が、とも思いましたが、私が知らないだけでそういう子だったのでしょうか……」
アリアが悲し気に顔を伏せます。
そういう話は聞いていたけど、やはり妹のことを信じていたかったのでしょう。
血の繋がった双子の姉妹ですものね。
私にはわからないことですが。
「しかし、王子と組んでいると思っていたがそうじゃなかったみたいだな。もしかするとカナリアは王子まで利用しているのかもしれないな」
「かなり狡猾な方のようですね。そこまでして地位が欲しいのでしょうか」
「地位が欲しいというのもあるだろうが、アリアが聖女だったというのが一番の要因だろう。あいつは幼い頃からアリアと比べられてきた。憎んでいると言っても過言ではない。そのアリアから地位を奪うことに意味があるのだろうな」
「そうなんですね。……まったく、くだらない話です」
「お嬢様、思っていることが口に出てしまっていますよ」
これはいけません。うっかり。
しかし、そう思うのはミシェルも同じでしょう。
顔に書いてありますよ。
「私にはわからないのですが、そんなにこだわるものではないはずです。他に目を向けるべきものはたくさんあります。私から見たら視野が狭いとしか思えません」
「確かにお嬢様から見たらそうかもしれない。けれど、カナリアにとってはそれが自分の存在を証明できるものであり、そうすることでしか自分を肯定できないんだ」
「なんだか可哀想な人ですね。だからと言って、私は容赦したりしません。この森を狙ってくるというのであれば返り討ちにします。私の友人を傷つけるのであれば相応の仕返しを。何より精霊さんに対する不敬に他ならない。徹底的に排除するべきです。……そうですね、ミシェル?」
「お嬢様がそれを望まれるのなら、私はただお側で支えるのみ。お嬢様の障害となるものは完膚なきまで粉砕してご覧に入れましょう」
さすがミシェルですね。
頼りになります。
「おっかねぇなぁ。こんなの敵に回したくないわな。あいつらが若干不憫に思えてきた」
「そ、そうですね。なんだかお二人から言い知れぬ迫力を感じました……」
シュウさんとアリアが頬を引き攣らせて顔を見合わせています。
もちろんあなたたちの力にも期待していますからね。
「それでどうしますか? ここまで来るというのなら待っていますか?」
「それじゃどれだけ時間がかかるかわからないだろう。こっちから乗り込んでいった方がいいのではないか?」
「サンドリオンはここからではかなり遠いですよ」
「大丈夫です。私たちはカイに乗っていきますからすぐです」
「お嬢様、そんな目立つことはできませんよ。あちらに乗り込むとしても、住んでいる民を徒に混乱させるのはいけません。もっとこっそり行きませんと」
悩ましいですね。
もっと近ければよかったのですが。
『我がミシェルを連れていき、転移用の拠点を作ればいいのでは?』
それは……なかなか魅力的な提案ですね。
他になければそれで行きましょう。
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