48 / 123
第二部
ピクニック
しおりを挟むあの後二時間くらい、ミシェルが抱き着いて離れてくれませんでした。
ティアの言った言葉通りに言った結果なので、助けを求めたのですが眠いからパスと言われました。
ティア、酷い……。
それに何より途中ミシェルが「お嬢様……えへ……えへへ……やわやわですねぇ……それにいい匂い……役得……」なんて言いながら鼻血が。
さすがにこれはアウトです。
人に見せられません。シュウさんなんかアリアの目を塞いでいましたもの。
本当、うちのメイドがごめんなさい。
ミシェルを落ち着かせて(物理)からそろそろ他の騎士さんたちも動けるようになったので、作戦会議をすることにしました。
今日はいい天気なので聖樹の前でピクニックです。
私たちが外に出ると、自ずと動物たちが集まってきます。
最近はその数も増え、今では数えるのも億劫になるほど大所帯です。
ご飯をもらうために待機する子や私の足元の集まる子、それと聖樹の周囲を走り回って遊ぶ子。様々です。
ちなみにヴィルは走り回っています。
元気いっぱいですね。
「お待たせしました~」
上機嫌なミシェルが大量の料理を運んできました。
一体何人分の料理を作ったのでしょうか。シートに入りきらないですよ。
まあ、騎士さんたちがいっぱい食べてくれるでしょう。それに動物たちもたくさんいるので問題なしですね。
それにしても今日のは特に美味しそうですね。
騎士さんたちは見たことのない料理に訝し気な眼を向けつつも、喉を鳴らしています。
「たくさんあるのでどうぞ~。おかわりもありますからね~」
ミシェルがそう言うと、騎士さんたちは我先にと料理に手を伸ばしました。
そんなに焦らなくてもすぐにはなくなりませんよ。
ミシェルは私用に果物たっぷりのパンケーキを作ってくれたみたいです。
とても美味しいです。しかし、解せないことが一つ。
私もお料理のお手伝いをしようと思ったのですが、ミシェルに止められてしまいました。一体なぜでしょうか。
ティアもどうしてか私をキッチンに入れないようにしていました。
いつの間にミシェルと結託していたのですか。これは裏切りと言うものでは?
「お嬢様、そのように納得できない顔をされてもダメですよ。お嬢様にお料理はさせません」
「どうしてですか? アリアは良くて私がダメな理由を教えてください」
「アリアさんはお料理上手ですよ。ここに来てから時々お手伝いしていただいているのですが、かなりの腕前です。サンドリオンのお料理も教えていただきました。それに比べてお嬢様は私が教えているのにも関わらず、劇物を精製するではないですか。ちゃんとしたお料理が作れるようになるまでは許可しませんからね」
むぅ。
納得いきません。不満を表明します。
私がいつ劇物を精製したというのですかっ。
私は、いつも、歴とした、お料理を、しているではありませんか。
「お嬢様。お料理とはですね、味だけではないのです。見栄えも重要なのです。食べる人が食欲をそそるようなものがお料理と呼べるのです。ですので、カレーもオムライスもハンバーグも全部無色透明になるものをお料理とは言えません。むしろどうしたらそうなるのか教えてほしいですね」
「こ、心を読むんじゃありませんっ! それに私だってどうして色がなくなるのかわからないのっ。ミシェルに言われた通りやっているのだからっ」
「ふ~ん……」
「………………。そ、そんなことより、作戦会議をしましょう。そのためにこうやってピクニックをしているのです。リラックスした空気の中やればいい案が思い浮かぶでしょ」
ミシェルがジト目で見てきますが、無視です。気にしてはいけません。
それより本来の目的を果たしましょう。
周囲にそう声をかけたのですが、誰からも反応がありません。
見渡すと、なかなかカオスな状況でした。
騎士さんたちはなぜか大食い勝負をしていました。どうしてそうなったのですか。
ティアはカイとヴィルに絡んでいます。精霊王と神獣ということで意外と仲がいいのです。いやしかし、そんな場合ではありません。
――――アリアとシュウさんがとてもイチャイチャしているからです。
なんですかあの甘々な空気は。完全な桃色空間です。こういうの娯楽本で読みました。
アリアがシュウさんにあ~んして食べさせて世話を焼いています。
シュウさんがお腹いっぱいになったのかなんだか眠そうな顔をすると、お膝をポンポンと叩いて上目遣い。
その視線を受けたシュウさんはアリアのお膝に頭をのせて寝転がります。
いわゆる膝枕というやつです。私知っています。恋人がよくやるって本に書いてありました。あれは本当だったのですね。
なんだか見ているだけでドキドキしてきました。
「お、お嬢様っ!! 見てはいけませんっ! ま、まだお嬢様には早いです。あんなものをお嬢様の視界に入れるのは教育上いけないことなのですっ!!」
ミシェルの声が響き渡りました。
せっかくいい雰囲気だったのに、このメイドは。
後でお仕置きですっ!
13
お気に入りに追加
523
あなたにおすすめの小説
「無加護」で孤児な私は追い出されたのでのんびりスローライフ生活!…のはずが精霊王に甘く溺愛されてます!?
白井
恋愛
誰もが精霊の加護を受ける国で、リリアは何の精霊の加護も持たない『無加護』として生まれる。
「魂の罪人め、呪われた悪魔め!」
精霊に嫌われ、人に石を投げられ泥まみれ孤児院ではこき使われてきた。
それでも生きるしかないリリアは決心する。
誰にも迷惑をかけないように、森でスローライフをしよう!
それなのに―……
「麗しき私の乙女よ」
すっごい美形…。えっ精霊王!?
どうして無加護の私が精霊王に溺愛されてるの!?
森で出会った精霊王に愛され、リリアの運命は変わっていく。

土属性を極めて辺境を開拓します~愛する嫁と超速スローライフ~
にゃーにゃ
ファンタジー
「土属性だから追放だ!」理不尽な理由で追放されるも「はいはい。おっけー」主人公は特にパーティーに恨みも、未練もなく、世界が危機的な状況、というわけでもなかったので、ササッと王都を去り、辺境の地にたどり着く。
「助けなきゃ!」そんな感じで、世界樹の少女を襲っていた四天王の一人を瞬殺。 少女にほれられて、即座に結婚する。「ここを開拓してスローライフでもしてみようか」 主人公は土属性パワーで一瞬で辺境を開拓。ついでに魔王を超える存在を土属性で作ったゴーレムの物量で圧殺。
主人公は、世界樹の少女が生成したタネを、育てたり、のんびりしながら辺境で平和にすごす。そんな主人公のもとに、ドワーフ、魚人、雪女、魔王四天王、魔王、といった亜人のなかでも一際キワモノの種族が次から次へと集まり、彼らがもたらす特産品によってドンドン村は発展し豊かに、にぎやかになっていく。

悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!
えながゆうき
ファンタジー
妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!
剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!
【完結】追放された生活錬金術師は好きなようにブランド運営します!
加藤伊織
ファンタジー
(全151話予定)世界からは魔法が消えていっており、錬金術師も賢者の石や金を作ることは不可能になっている。そんな中で、生活に必要な細々とした物を作る生活錬金術は「小さな錬金術」と呼ばれていた。
カモミールは師であるロクサーヌから勧められて「小さな錬金術」の道を歩み、ロクサーヌと共に化粧品のブランドを立ち上げて成功していた。しかし、ロクサーヌの突然の死により、その息子で兄弟子であるガストンから住み込んで働いていた家を追い出される。
落ち込みはしたが幼馴染みのヴァージルや友人のタマラに励まされ、独立して工房を持つことにしたカモミールだったが、師と共に運営してきたブランドは名義がガストンに引き継がれており、全て一から出直しという状況に。
そんな中、格安で見つけた恐ろしく古い工房を買い取ることができ、カモミールはその工房で新たなスタートを切ることにした。
器具付き・格安・ただし狭くてボロい……そんな訳あり物件だったが、更におまけが付いていた。据えられた錬金釜が1000年の時を経て精霊となり、人の姿を取ってカモミールの前に現れたのだ。
失われた栄光の過去を懐かしみ、賢者の石やホムンクルスの作成に挑ませようとする錬金釜の精霊・テオ。それに対して全く興味が無い日常指向のカモミール。
過保護な幼馴染みも隣に引っ越してきて、予想外に騒がしい日常が彼女を待っていた。
これは、ポーションも作れないし冒険もしない、ささやかな錬金術師の物語である。
彼女は化粧品や石けんを作り、「ささやかな小市民」でいたつもりなのだが、品質の良い化粧品を作る彼女を周囲が放っておく訳はなく――。
毎日15:10に1話ずつ更新です。
この作品は小説家になろう様・カクヨム様・ノベルアッププラス様にも掲載しています。

家庭菜園物語
コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。
その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。
異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。
138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」
お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。
賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。
誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。
そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。
諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる