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第二部
お説教
しおりを挟むそれからまたミシェルに事細かに事情を説明しました。
アリアにも協力していただきましたよ。
大変でした。ミシェルが納得してくれないのです。
「………………まあ、いいです。今回はそれで良しとしましょう」
三十分ほど時間をかけ、ようやくミシェルが折れてくれました。
しかし、まだお説教する気はあるみたいです。
つらい。これ以上正座は無理です。足が、足がぁぁ。
「神獣と遭遇したのはたまたまでしょう。彼らは基本的に気まぐれです。カイがいい例です。気に入られたのもアリアさんということで、そこもまあいいでしょう。そちらはシュウさんにお任せします。
――ですが。約束を破ったことはいけません。前にもお説教したはずなのですが、お嬢様はお忘れになられたのですか?」
「い、いえ……そのようなことは……」
「昨今の子供でも同じことで怒られるようなことはしませんよ。いくらお嬢様が可愛くて愛らしくて私の天使であっても、約束を破ることは許しません。しかも、私に嘘を吐きましたね? これは大罪です。今回ばかりはしっかりと反省していただきます」
本気のようです。
今までのお説教と比にならないくらいの恐怖を感じました。
いつぞやの冒険者ギルドの時と同じ気がします。
これはいけません。何か、何か策を。
アリア、助力を…………ダメそうです。あっちはあっちでシュウさんに怒られています。
しかし、怒られているのに嬉しそうなのは一体どうしてでしょうか……?
「お説教中によそ見をするとは、意外と余裕そうですね、お嬢様?」
「い、いえ、これは違うのですっ」
「言い訳無用っ! ですが、私もお嬢様にお説教をするのは心苦しいのです。少しだけ釈明を許可しましょう。何かありますか?」
相変わらずミシェルは優しいですね。
こんなに怒っていてもちゃんと私の話を聞いてくれるのです。
ただ怒るようなことはしないのです。
ですが、釈明と言われてもどうしたものか。
『いい方法があるわよ~』
頭の中でティアの声が。
これは……念話でしょうか。
しかし眠そうですね。今日もお昼まで眠っていたじゃないですか
『せぇ~か~い。というか、私が引きこもりみたいな言い方しないでくれるかしら。確かにこの森からあまり出ないけど。
それはそうとこの窮地をどうにかしたいんじゃなかったの~?』
そうでした。
このお説教を乗り切り、私の足を守らねばならないのです。
そろそろ感覚がなくなってきました。
『いや、それは別に正座をしなければいい話だけど、それはいいか。とりあえず、こう言いなさい。ミシェルに聞く魔法の言葉よ~』
なんですかそれは。
そのようなことを言うだけでこのミシェルの怒気が収まるとでも。
『あ、そうそう。ちゃんとこんな感じで顔も作るのよ。そうすれば効果抜群だから~』
なんと表情のイメージまで頭の中に送られてきました。
そんな顔をしなければならないのですか。
ですが、躊躇っている場合ではありませんね。いざ!
「………………み、みしぇるが最近、シュウさんにばかり構ってるから。だ、だから、仕方、ないのですっ! ミシェルの気を引くちょっとしたお茶目ですっ!」
い、言ってやりました。
なんだか、とても恥ずかしいです。
顔から火が出そうなほど恥ずかしいです。
それにティアの言う通りちゃんと拗ねたような表情も作りました。
さて、ミシェルの様子は……おや? 意外と効いて……。
えっ!? な、泣いてます!?
「お、お嬢様っ。そ、そのような、寂しい思いをしていたなんてっ。私は常日頃から申しておりますように、お嬢様一筋ですっ! お嬢様のためだけのミシェルですっ!男になんて興味ありません。誤解ですから。ちょっとした故郷の話をしていただけですから。しかし、お嬢様をないがしろにしていたわけではないとは言え、お嬢様がそのように感じていらしたのもまた事実。反省いたしました。これからはさらに、私のお嬢様への愛をお伝えしていく所存。これからは寂しい思いなんてさせませんからねっ!」
め、めっちゃ泣いてるじゃないですかーーーー!
大号泣ですよ。かつてないほど涙を流していますよ。
ティア、この反応は、想定外でした…………。
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