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第二部

事情説明

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「――それで? どういうことか、ちゃんと説明していただけるのですよね、お嬢様?」

 これはいけませんね。
 非常にまずいというやつです。
 ミシェルが大変お怒りのようです。笑顔が怖い。
 ここはひとつ、和ませるべきではないかと。

「え~と、ミシェル? そんなに怒ってどうしたのかしら。私はミシェルの笑った顔の方が好きよ」

「ええ、ありがとうございます。嬉しいです」

 ふう。

「――とはなりませんからね」

 ダメでした。
 さっきの一瞬のデレっとした表情は一体どこに。
 まったくミシェルったら演技派ね。

「……どうして私に原因があるみたいなことを。拾ってきたのはアリアよ」

「そうだとしても、そこに行く過程に原因があるのは明白です。そしてそれの原因は言うまでもなくお嬢様だということがわかります。カイに聞くまでもありません」

 これは。
 今回はちょっと本格的にまずいですね。
 完璧にバレています。おそらく私が何をどうしてきたのかも全て。
 こういう時、万能メイドの能力は困りものです。
 アリアなんて私の後ろで震えてしまっています。ああ、そんなに強く抱きしめたら苦しそうですよ。
 せっかく拾ってきたのですから、優しく。

「……わかりました。ちゃんと説明します。そうですね、たしか――」




 ◇◇◇



 川です。
 湖に繋がっているというだけあってとても綺麗です。
 透き通っています。

「カイ、穴倉というのは何処にあるのですか?」

『ここから少し行ったところだが、あまりオススメしない』

「そ、そうですよ。何があるかわからないのですから。いくら神獣様が一緒だからと言って、危険な事をする必要は……」

「何をおっしゃいますか。せっかくここまで来たのですから、穴倉というものがどんなものか、見に行きましょう」

 カイに先導してもらって穴倉を目指します。
 アリアは私の後ろをぴったりとくっついて歩いています。
 意外と臆病なようです。わざわざ脱獄してまで国を出てきたのですから、もっと大胆な方だと思っていました。

 のしのし、てくてく、じゃりじゃり、ぽてぽて。

 歩いて数分くらいの距離にあるそうです。
 そんな遠くはないそうですからこの分だとすぐに……。

 何か足音多くありませんか?
 先頭にはカイ、そしてその後ろを私とアリア。アリアとの距離が近いので彼女の足音は良く聞こえます。
 その後ろから聞こえる小動物の足音は一体?

「カイ」

『気づいたか? 花畑を過ぎてからずっとだ。別に悪い気配ではないがな』

 そうですか。
 敵意も悪意もないそうです。
 それなら遠慮はいりません。思い切って振り返ってみましょう。

「………………おや?」

「ひっ。きゅ、急にどうしたんですか? 一体何が……?」

 私が急に振り返ったのに驚いてアリアの体が跳ねました。
 そして同じように後ろを振り返ります。
 私たちの後ろには美しい白金色の毛を纏った子犬サイズの狼がいました。
 ……とても愛らしいですね。なでなでしましょう。

「一体どこから来たのでしょうか。こんな子いましたっけ?」

『この周辺からあまり出たことはないのだろう。親なら……』

『――――うちの子に何か用かい?』

 私たちとは別の声。
 聞き覚えのない声ですけど、私たち以外に人がいたのでしょうか。
 それよりうちの子? この子のことでしょうか?
 声の方を見ると……硬直。
 アリアも口をパクパクとしています。

 そこに居たのは子狼と同じ白金色の毛に覆われた巨狼。
 見上げるほどに大きい狼です。
 それにカイと同じ、いやそれ以上の神聖な何かが。もしかして……。

「ヴィトニル?」
「フェンリル?」

「「……?」」

 アリアと言葉が重なりました。
 ヴィトニルとは一体? アリアも不思議そうにしています。

『別にどちらでも同じさね。あたしのことを指すには違いない』

 さっきの子狼が駆け寄りました。
 サイズ感の違いに戸惑います。

『それにしても本当に白虎の倅がこんなところにいるとはね。わざわざここまで来たかいがあったってものさ。それに契約者までできているなんてね』

『……別に面白いことでもないだろうに。暇な奴め』

『そうさ。あたしらのような存在は基本的に暇なのさ。あんたもそれは知っているだろう。まあいいさね。そっちの娘っ子たちにも一応名乗っておこうか。あたしは大狼。人間たちの間じゃいろんな名前が付けられているがそれは全部あたしを指すもんさ。そこのお嬢さんのご想像通り、あたしは神獣だよ』







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