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第二部

協力

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「まず何から話そうか……。そうだな。最初はアリアの妹――カナリアの目的から話そう」

 そう前置きしてから話し出すイケメン騎士――シュウさん。
 どことなく顔が赤いような……。気のせいですね。

「カナリアの目的だが、これは先ほどの話を聞いてもわかるようにアリアから聖女の座を奪うことだ。奴はアリアのことを嫌っているからな。いや、むしろ憎んでいると言っても過言ではない」

「どうして? 双子なのでしょう。仲良くできなかったのですか?」

 純粋に疑問に思いました。
 私には血の繋がった兄弟姉妹がいないからわからないのです。
 まあ、義理の兄と妹はいたけど。両親も含めあれは家族とは言えないでしょう。

「簡単な話、二人は幼い頃から比べられて生きてきたそうだ。同じ年の姉妹。当然同じ教育を受けることになる。すると必然的に親や教師は比べようとするものだ。しかもアリアは幼い頃から優秀な子だ。カナリアにとっては邪魔な存在だっただろう。極めつけは」

「聖女として認定されたことですね」

 ミシェルがお茶を持って言葉を引き継いだ。
 あれ? そのお菓子は確か東洋国家の……なんでしたっけ?
 お茶もそれはミシェルが大事にしているものですね。
 それをシュウさんの前に置きました。

「どうぞ」

「ああ、すまな……い……――こ、これはっ!?」

 ガタッと音を立ててシュウさんが立ち上がりました。
 その表情は驚愕に満ちています。
 一体どうしたのでしょう。アリアさんもびっくりしていますよ。

「お察しの通り、煎茶です。お茶請けにお饅頭もどうぞ。東洋国家で親しまれているものです」

「ど、どうして俺がこれを好きだと……?」

「少し視させていただきました。ご容赦を。素性の知れない人をお嬢様に近づけさせるわけにはいかないので」

「いや、だからと言って――もしかしてあんたもなのか!?」

「そのお話はまた後にしましょう。今はアリア様のお話しを」

「あ、ああ。そう、だな」

 シュウさんが座られました。
 よくわからないですけど、何やらミシェルとシュウさんで話が合ったみたいですね。

「すまない、取り乱した。それでどこまで話したかな……そうだ、アリアが聖女に認定されたことでさらにひどくなった。しばらくは部屋の中で一人暴れていたそうだ。アリアの家の使用人に聞いた。限界までアリアを憎んだカナリアはアリアを貶めようとした。それが聖女の座を奪うことだった」

「なるほど。それで今回の話に繋がるのですか?」

「ああ。そのための手段として使ったのがアリアにかけられた呪いだ」

『どうしてこんな呪いがあるの? あんたら一体何をしたわけ?』

 呪いの話になってティアが会話に参加しました。
 若干というかかなり怒っているようです。

「俺もどうしてこんな呪いが存在するのかまでは知らない。しかし、一人だけカナリアについていた怪しげな魔法士がいた。カナリアの側付きの話ではその魔導士がカナリアに呪いを教えたそうだ」

「じゃあ犯人はその魔導士ということですか?」

「元凶はそうだろう。だが、実際に実行したのはカナリアだ。その魔法士から呪いだけでなく『光の巫女』や光精霊についても教えられていたそうだ」

 何者なのでしょうか、その魔法士は。
 アリアさんもその魔法士の存在については知らなかったのか、驚愕の表情を浮かべています。

「そしてここからがあんたらにも関係するんだが。その魔法士はこの森のことも国のお偉いさんたちに話していた。かの森には精霊の王が存在する、と。そして多くの精霊たちがいるということも」

「……どうしてそのようなことを?」

「魔法士の目的は知らない。大方精霊の力を使って何かするつもりなのだろう。その目的を果たすために国を巻き込んだ、と考えることはできる。
 ――それに、この森の噂なんかも広がっていたからな」

 噂? 
 噂なんかあったんですか、この森。

「知らないか? たしか『かの大森林にて神獣の影あり。またかの地にて少女たちの存在』だったかな? まあ、こうしてあんたたちがいるってことは本当のことだったんだな。なんかどっかの冒険者がそんな話をしていたそうだぞ」

 冒険者……?
 確かにお一人迷い込んだ方がいらっしゃいましたね。
 たくさん冒険譚を聞かせていただきました。

「そんなわけで、今各国のお偉いさんたちは噂の解明に躍起になっているころだ。なんせ神獣を国に引き込められたらそれだけで繁栄は約束される。それにこんなところで生活するなんて普通の人間じゃないからな。どうにかして捕まえたいんだろうよ」

「え? 私たちって普通じゃないんですか?」

 なんか皆さん私の質問を聞いてキョトンとしていますけど。
 なんだかその反応は傷つきます。

「お嬢様、今さらですよ。私は普通じゃないのは分かっていますけど、自覚なかったのですか?」

「あ、当たり前じゃない! どこからどう見ても私は普通の女の子でしょ」

「「「『いや、全然』」」」

 ガーン。
 ショックです。泣いてしまいそうです。
 私、普通の女の子だと思っていたのに。悲しいです。

「ま、まあそこんとこは一旦置いといて。さっきの続きだが、おそらくカナリアたちは何らかのアクションを起こすだろう。だからその前に何とかしたい。力を貸してくれないだろうか?」

 そう言って、シュウさんが頭を下げられました。
 あ、その体勢知ってます。以前お屋敷でたまにミシェルがやっていたのを見たことがあります。
 たしか、「ドゲザ」というのでしたよね。
 アリアさんも頭を下げようとしているけれど、さすがにシュウさんと同じようにするのは憚られるのか、わたわたしています。
 可愛い人ですね。ほっこりしてきました。

「ミシェル、どうですか?」

「お嬢様の望むままに。私はお嬢様の支えとなる所存です」

「ティア、あなたは?」

『こんな気持ち悪いことする奴らなんて早めに処理しておくに限るわ。私たちがいれば余裕ね』

「わかりました。アリアさん、シュウさん、私たちもお手伝いをさせてください。一緒に頑張りましょうね」

「「あ、ありがとうございます!」」

「ただし!」

「「?」」

「それは皆さんの怪我が治ってからです。それくらいの時間はあるでしょう。あと、無茶はしないこと。約束です」

 アリアさんの話を聞く限り、アリアさんを生かすために無茶をされたとか。
 そんなのはいけません。みんな無事が一番ですからね。

「は、はいぃ」

 あ、アリアさん……?
 そんなポーっとしてどうなさったのですか?
 シュウさんも何か祈り初めてしまいましたし。

「ああ、女神はここに…………」

 いやいや、女神じゃないですから。
 そんな目で見ないでくださいっ。
 ミシェルも、後ろでうんうん頷いていないでどうにかしてくださいっ。
 ああ、もうっ。誰でもいいからこの空気どうにかしてくださーい!!








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