39 / 123
第二部
協力
しおりを挟む「まず何から話そうか……。そうだな。最初はアリアの妹――カナリアの目的から話そう」
そう前置きしてから話し出すイケメン騎士――シュウさん。
どことなく顔が赤いような……。気のせいですね。
「カナリアの目的だが、これは先ほどの話を聞いてもわかるようにアリアから聖女の座を奪うことだ。奴はアリアのことを嫌っているからな。いや、むしろ憎んでいると言っても過言ではない」
「どうして? 双子なのでしょう。仲良くできなかったのですか?」
純粋に疑問に思いました。
私には血の繋がった兄弟姉妹がいないからわからないのです。
まあ、義理の兄と妹はいたけど。両親も含めあれは家族とは言えないでしょう。
「簡単な話、二人は幼い頃から比べられて生きてきたそうだ。同じ年の姉妹。当然同じ教育を受けることになる。すると必然的に親や教師は比べようとするものだ。しかもアリアは幼い頃から優秀な子だ。カナリアにとっては邪魔な存在だっただろう。極めつけは」
「聖女として認定されたことですね」
ミシェルがお茶を持って言葉を引き継いだ。
あれ? そのお菓子は確か東洋国家の……なんでしたっけ?
お茶もそれはミシェルが大事にしているものですね。
それをシュウさんの前に置きました。
「どうぞ」
「ああ、すまな……い……――こ、これはっ!?」
ガタッと音を立ててシュウさんが立ち上がりました。
その表情は驚愕に満ちています。
一体どうしたのでしょう。アリアさんもびっくりしていますよ。
「お察しの通り、煎茶です。お茶請けにお饅頭もどうぞ。東洋国家で親しまれているものです」
「ど、どうして俺がこれを好きだと……?」
「少し視させていただきました。ご容赦を。素性の知れない人をお嬢様に近づけさせるわけにはいかないので」
「いや、だからと言って――もしかしてあんたもなのか!?」
「そのお話はまた後にしましょう。今はアリア様のお話しを」
「あ、ああ。そう、だな」
シュウさんが座られました。
よくわからないですけど、何やらミシェルとシュウさんで話が合ったみたいですね。
「すまない、取り乱した。それでどこまで話したかな……そうだ、アリアが聖女に認定されたことでさらにひどくなった。しばらくは部屋の中で一人暴れていたそうだ。アリアの家の使用人に聞いた。限界までアリアを憎んだカナリアはアリアを貶めようとした。それが聖女の座を奪うことだった」
「なるほど。それで今回の話に繋がるのですか?」
「ああ。そのための手段として使ったのがアリアにかけられた呪いだ」
『どうしてこんな呪いがあるの? あんたら一体何をしたわけ?』
呪いの話になってティアが会話に参加しました。
若干というかかなり怒っているようです。
「俺もどうしてこんな呪いが存在するのかまでは知らない。しかし、一人だけカナリアについていた怪しげな魔法士がいた。カナリアの側付きの話ではその魔導士がカナリアに呪いを教えたそうだ」
「じゃあ犯人はその魔導士ということですか?」
「元凶はそうだろう。だが、実際に実行したのはカナリアだ。その魔法士から呪いだけでなく『光の巫女』や光精霊についても教えられていたそうだ」
何者なのでしょうか、その魔法士は。
アリアさんもその魔法士の存在については知らなかったのか、驚愕の表情を浮かべています。
「そしてここからがあんたらにも関係するんだが。その魔法士はこの森のことも国のお偉いさんたちに話していた。かの森には精霊の王が存在する、と。そして多くの精霊たちがいるということも」
「……どうしてそのようなことを?」
「魔法士の目的は知らない。大方精霊の力を使って何かするつもりなのだろう。その目的を果たすために国を巻き込んだ、と考えることはできる。
――それに、この森の噂なんかも広がっていたからな」
噂?
噂なんかあったんですか、この森。
「知らないか? たしか『かの大森林にて神獣の影あり。またかの地にて少女たちの存在』だったかな? まあ、こうしてあんたたちがいるってことは本当のことだったんだな。なんかどっかの冒険者がそんな話をしていたそうだぞ」
冒険者……?
確かにお一人迷い込んだ方がいらっしゃいましたね。
たくさん冒険譚を聞かせていただきました。
「そんなわけで、今各国のお偉いさんたちは噂の解明に躍起になっているころだ。なんせ神獣を国に引き込められたらそれだけで繁栄は約束される。それにこんなところで生活するなんて普通の人間じゃないからな。どうにかして捕まえたいんだろうよ」
「え? 私たちって普通じゃないんですか?」
なんか皆さん私の質問を聞いてキョトンとしていますけど。
なんだかその反応は傷つきます。
「お嬢様、今さらですよ。私は普通じゃないのは分かっていますけど、自覚なかったのですか?」
「あ、当たり前じゃない! どこからどう見ても私は普通の女の子でしょ」
「「「『いや、全然』」」」
ガーン。
ショックです。泣いてしまいそうです。
私、普通の女の子だと思っていたのに。悲しいです。
「ま、まあそこんとこは一旦置いといて。さっきの続きだが、おそらくカナリアたちは何らかのアクションを起こすだろう。だからその前に何とかしたい。力を貸してくれないだろうか?」
そう言って、シュウさんが頭を下げられました。
あ、その体勢知ってます。以前お屋敷でたまにミシェルがやっていたのを見たことがあります。
たしか、「ドゲザ」というのでしたよね。
アリアさんも頭を下げようとしているけれど、さすがにシュウさんと同じようにするのは憚られるのか、わたわたしています。
可愛い人ですね。ほっこりしてきました。
「ミシェル、どうですか?」
「お嬢様の望むままに。私はお嬢様の支えとなる所存です」
「ティア、あなたは?」
『こんな気持ち悪いことする奴らなんて早めに処理しておくに限るわ。私たちがいれば余裕ね』
「わかりました。アリアさん、シュウさん、私たちもお手伝いをさせてください。一緒に頑張りましょうね」
「「あ、ありがとうございます!」」
「ただし!」
「「?」」
「それは皆さんの怪我が治ってからです。それくらいの時間はあるでしょう。あと、無茶はしないこと。約束です」
アリアさんの話を聞く限り、アリアさんを生かすために無茶をされたとか。
そんなのはいけません。みんな無事が一番ですからね。
「は、はいぃ」
あ、アリアさん……?
そんなポーっとしてどうなさったのですか?
シュウさんも何か祈り初めてしまいましたし。
「ああ、女神はここに…………」
いやいや、女神じゃないですから。
そんな目で見ないでくださいっ。
ミシェルも、後ろでうんうん頷いていないでどうにかしてくださいっ。
ああ、もうっ。誰でもいいからこの空気どうにかしてくださーい!!
14
お気に入りに追加
523
あなたにおすすめの小説
「無加護」で孤児な私は追い出されたのでのんびりスローライフ生活!…のはずが精霊王に甘く溺愛されてます!?
白井
恋愛
誰もが精霊の加護を受ける国で、リリアは何の精霊の加護も持たない『無加護』として生まれる。
「魂の罪人め、呪われた悪魔め!」
精霊に嫌われ、人に石を投げられ泥まみれ孤児院ではこき使われてきた。
それでも生きるしかないリリアは決心する。
誰にも迷惑をかけないように、森でスローライフをしよう!
それなのに―……
「麗しき私の乙女よ」
すっごい美形…。えっ精霊王!?
どうして無加護の私が精霊王に溺愛されてるの!?
森で出会った精霊王に愛され、リリアの運命は変わっていく。

土属性を極めて辺境を開拓します~愛する嫁と超速スローライフ~
にゃーにゃ
ファンタジー
「土属性だから追放だ!」理不尽な理由で追放されるも「はいはい。おっけー」主人公は特にパーティーに恨みも、未練もなく、世界が危機的な状況、というわけでもなかったので、ササッと王都を去り、辺境の地にたどり着く。
「助けなきゃ!」そんな感じで、世界樹の少女を襲っていた四天王の一人を瞬殺。 少女にほれられて、即座に結婚する。「ここを開拓してスローライフでもしてみようか」 主人公は土属性パワーで一瞬で辺境を開拓。ついでに魔王を超える存在を土属性で作ったゴーレムの物量で圧殺。
主人公は、世界樹の少女が生成したタネを、育てたり、のんびりしながら辺境で平和にすごす。そんな主人公のもとに、ドワーフ、魚人、雪女、魔王四天王、魔王、といった亜人のなかでも一際キワモノの種族が次から次へと集まり、彼らがもたらす特産品によってドンドン村は発展し豊かに、にぎやかになっていく。

悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!
えながゆうき
ファンタジー
妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!
剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!
【完結】追放された生活錬金術師は好きなようにブランド運営します!
加藤伊織
ファンタジー
(全151話予定)世界からは魔法が消えていっており、錬金術師も賢者の石や金を作ることは不可能になっている。そんな中で、生活に必要な細々とした物を作る生活錬金術は「小さな錬金術」と呼ばれていた。
カモミールは師であるロクサーヌから勧められて「小さな錬金術」の道を歩み、ロクサーヌと共に化粧品のブランドを立ち上げて成功していた。しかし、ロクサーヌの突然の死により、その息子で兄弟子であるガストンから住み込んで働いていた家を追い出される。
落ち込みはしたが幼馴染みのヴァージルや友人のタマラに励まされ、独立して工房を持つことにしたカモミールだったが、師と共に運営してきたブランドは名義がガストンに引き継がれており、全て一から出直しという状況に。
そんな中、格安で見つけた恐ろしく古い工房を買い取ることができ、カモミールはその工房で新たなスタートを切ることにした。
器具付き・格安・ただし狭くてボロい……そんな訳あり物件だったが、更におまけが付いていた。据えられた錬金釜が1000年の時を経て精霊となり、人の姿を取ってカモミールの前に現れたのだ。
失われた栄光の過去を懐かしみ、賢者の石やホムンクルスの作成に挑ませようとする錬金釜の精霊・テオ。それに対して全く興味が無い日常指向のカモミール。
過保護な幼馴染みも隣に引っ越してきて、予想外に騒がしい日常が彼女を待っていた。
これは、ポーションも作れないし冒険もしない、ささやかな錬金術師の物語である。
彼女は化粧品や石けんを作り、「ささやかな小市民」でいたつもりなのだが、品質の良い化粧品を作る彼女を周囲が放っておく訳はなく――。
毎日15:10に1話ずつ更新です。
この作品は小説家になろう様・カクヨム様・ノベルアッププラス様にも掲載しています。

家庭菜園物語
コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。
その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。
異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。
138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」
お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。
賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。
誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。
そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。
諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる