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第二部

シュウ

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「シュウ!」

 アリアさんが壁にもたれかかっている騎士に駆け寄っていきました。
 心配している声には少し嬉しさがにじみ出ていますね。
 余程彼らのことを気にかけていたのでしょう。

「動いて大丈夫なの? あまり無茶しちゃダメよ。死にかけているのだから」

「大丈夫だから、そんなに気負わなくていい。他の奴らも目を覚ました。しばらく動けそうにないけどな。だが無理を通してでも話さなくてはならないことがある」

 そう言う騎士の目は真剣さと少しの焦りが感じられました。
 それほどまでに大事な話があるようですね。
 しかし彼が一番酷い傷だったのですが、本当に動いて大丈夫なのでしょうか。
 ミシェルが言うには数分心臓が止まっていたと言っていましたが。

「突然話に割り込んだ無礼は許してほしい。しかし、大事なことなんだ。できれば今すぐにでも話を聞いてほしい」

「私は構いませんよ。それより体の方は大丈夫なのでしょうか? ミシェルの診察では死んでいてもおかしくない怪我だったと」

「問題ない。少し休んでいればじきに治る。俺は少々特殊でな」

「そうですか。では、こちらへ。ミシェル、彼にもお茶――コーヒーの方がいいのかしら? 男性の好みは分からないのだけれど」

「大丈夫ですよ。彼の好みそうものをご用意します。少々お待ちを」

「ああ、すまない」

 騎士はおぼつかない足取りで私の前まで歩いてきます。
 アリアさんが肩を貸そうとしていますがが、なんだか顔を真っ赤にしてもじもじしています。辛そうだから早く肩を貸してあげてほしいのだけど。
 あ、ようやく決心したみたいですね。

「ね、ねぇ。さっきユミエラさんが死んでもおかしくないって言ってたけど。本当に大丈夫なの?」

「だから大丈夫だって。俺の能力のことは知っているだろ」

「でも……」

「心配すんなって。こうして生きているんだ。もうアリアを残していったりしないから。今度はちゃんと守ってみせる」

「……ん」

 な、何でしょうか、これ。
 なんだかドキドキしてきました。
 お二人の周囲の空気がなんだかピンク色に見えてきました。
 錯覚? 錯覚ですよね?

『あらあら~? ユミってば初心ねぇ。こういうの見たことないの~?』

「う、初心って、どどどどういうことですかっ。わ、私だって、それなりに知識はありますともっ」

『でもでも~、この子たちの空気に当てられただけで顔真っ赤にしてるじゃな~い。うふふっ。そういうところはまだまだ子供ねぇ』

 ティアがにやにやしながら私の周囲をグルグルと。
 わ、私だって、そういう経験の一つや二つ…………ないですけど。

「ティア様っ! お嬢様にそういうのはまだ早いのです! お嬢様が変な知識を持って変な男に近づいてしまったらいけません。お嬢様にはっ、そんなものは、必要ありませんっ。
 ですよね、お嬢様――――もしやそういう経験が!? いいいけません!! 私に隠れてそんな。ダメです、ダメダメですからねっ。私の目の黒いうちは許しませんよ!」

「そんな経験ないからっ! 変な事言ってないで戻りなさい!!」

 まったく。ミシェルったらもうっ! 
 べ、別に私だって、そういう機会があれば……。
 いえ、今はやめときましょう。
 アリアさんたちもハッとして着席。
 お互いをチラチラ。視線が合って騎士がニコッ。アリアさんお顔を真っ赤にしてもじもじ。
 何なんですか。変な空気になってしまったじゃないですか。
 一旦仕切り直しましょう。

「こほんっ。それであなたは何かご存じなのでしょう? お話ししていただけるのよね?」

「もちろん。俺が知っていること全てを話そう。
 ――申し遅れた。俺は『光の巫女』アリアの護衛騎士、シュウ・サザナミだ。
 奴らの目的、手段、調べられることは可能な限り調べてきた。おそらくあなたたちにも関係するかもしれない。ぜひ、力を貸してほしい」




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