37 / 123
第二部
光の巫女 *アリア視点
しおりを挟む突然やってきた美女が思いもよらないことを口にした。
ていうかとんでもない美女なんだけど。
確実に人間ではないわ。だって羽生えてるもの。
それになんかふわふわしてるし。
もしかして精霊……?
「ティア、アリアさんのこと知ってるの?」
ユミエラさんが美女に話しかけた。
そうよね。私も戸惑っている場合じゃないわ。
彼女に聞きたいことがあるのだもの。
『んー? 知らないわよ。ただこの子が『光の巫女』っていうことは分かるわ。あたし精霊王だし』
……。
待って。今なんて?
「その『光の巫女』って何? 『聖女』とは違うの?」
『『聖女』って人間が決めたあれなやつでしょ? それとは違うわ。『光の巫女』は光精霊に愛された娘のこと。精霊の中で光精霊だけはちょっと特殊なのよ。だから光精霊に愛された子は精霊そのものにも愛されるくらい清浄な魂を持つ。つまり人間にとっても特別な存在なの』
そう言って私を観察する精霊王様。
観察しながら何かつぶやいている。
『……確かに綺麗な子ね。精霊たちに好かれるのもわかるわぁ』と。
あ、あの、そんなに見つめられると恥ずかしいです……。
「『光の巫女』…………って、ああ。聞いたことあると思ったらこれですね」
ミシェルさんが一冊の本を掲げた。
あれは『魔王戦記』ね。
私は実際に読んだことはないのだけど、有名な歴史書らしいわ。
「それがどうしたの?」
「これに『光の巫女』って呼ばれる女の子がいるんです。その子はかつて勇者に力を貸し与えたとか。それにその女の子の住んでいたところは砂漠だとか」
「へぇ。それならアリアさんと何か関係しているのかしら。その方の子孫だったりとか」
「いや、まさか。そんな話聞いたことありませんよ。私の実家はサンドリオン建国から続く名家というだけです」
まず『光の巫女』というのも私は初めて聞いたわ。
あれ? でも騎士たちはいつも私のことを『巫女』って呼んでいたわね。
彼らは何か知っているのかしら。
「それより精霊王様、私も一つお聞きしてもよろしいですね?」
『そんなにかしこまらなくていいわよ。人間のマナーとか面倒くさいもの。ティアでいいわ』
「わかりました、ティア様。それで、先ほどおっしゃっていた私にかかっている呪いというのは?」
『ああ、それね。その気持ち悪いのは、簡単に言うとある国の王が私たち精霊の力を欲した欲望の塊。精霊の力を我が物にしようとして作り上げた魔道具と同じもの。その愚か者はそれを持ってこの聖域までやってきたわ。まあ、その当時に全部ぶっ壊したんだけどね』
精霊の力を我が物にって、なんて恐れ多いことを。
『それはあなたを起点にして精霊の力を奪う。そしてその力は呪いをかけた本人に送られる。あなたの話を聞く限りじゃたぶんその妹ね』
「なるほど。これで辻褄が合いましたね」
「? ミシェルどういうこと?」
「……お嬢様、お話しはちゃんと聞いていましたか?」
そうね。
私もティア様の話を聞いてようやく理解することができました。
ユミエラさんは頭を悩ませているようです。そんな姿も可愛らしい。
そんなユミエラさんの頭をミシェルさんが聖母のような表情で撫でています。
しかし、鼻血が出ています。……ミシェルさんてヤバイ人なのかしら?
「簡単に説明しますよ。
まずアリア様が魔法を使えなくなった理由が分かりました。呪いによる影響です。おそらく光の精霊魔法を使っていたからです。呪いによって精霊の力が奪われて魔法が使えなくなった。
じゃあその呪いをかけたのは? これはおそらくというか十中八九妹さんです。アリア様しか使えなかった魔法を使うことができたことが証拠ですね。アリア様から奪った力を行使していたのでしょう。
そうした理由は……まあ簡単な話、アリア様を陥れるためですかね」
「……そうですね。幼い頃から何だかんだと対抗してくるような子でしたから。私が聖女として持て囃されていたのが気に食わなかったのでしょう。しかし、一体どうやってそんな呪いを……? それに私はその、光の精霊様を見たことがないのですが」
妹は私が『光の巫女』であるということを知っていた?
いや、わからないわ。あの子が何を考えていたのか全然わからない。
考えこんでいると、後ろから聞きなれた声が聞こえてきました。
「――それについては俺が説明しよう」
「シュウ!?」
視線を向けると壁にもたれかかっている私の騎士がいました。
11
お気に入りに追加
523
あなたにおすすめの小説
「無加護」で孤児な私は追い出されたのでのんびりスローライフ生活!…のはずが精霊王に甘く溺愛されてます!?
白井
恋愛
誰もが精霊の加護を受ける国で、リリアは何の精霊の加護も持たない『無加護』として生まれる。
「魂の罪人め、呪われた悪魔め!」
精霊に嫌われ、人に石を投げられ泥まみれ孤児院ではこき使われてきた。
それでも生きるしかないリリアは決心する。
誰にも迷惑をかけないように、森でスローライフをしよう!
それなのに―……
「麗しき私の乙女よ」
すっごい美形…。えっ精霊王!?
どうして無加護の私が精霊王に溺愛されてるの!?
森で出会った精霊王に愛され、リリアの運命は変わっていく。

土属性を極めて辺境を開拓します~愛する嫁と超速スローライフ~
にゃーにゃ
ファンタジー
「土属性だから追放だ!」理不尽な理由で追放されるも「はいはい。おっけー」主人公は特にパーティーに恨みも、未練もなく、世界が危機的な状況、というわけでもなかったので、ササッと王都を去り、辺境の地にたどり着く。
「助けなきゃ!」そんな感じで、世界樹の少女を襲っていた四天王の一人を瞬殺。 少女にほれられて、即座に結婚する。「ここを開拓してスローライフでもしてみようか」 主人公は土属性パワーで一瞬で辺境を開拓。ついでに魔王を超える存在を土属性で作ったゴーレムの物量で圧殺。
主人公は、世界樹の少女が生成したタネを、育てたり、のんびりしながら辺境で平和にすごす。そんな主人公のもとに、ドワーフ、魚人、雪女、魔王四天王、魔王、といった亜人のなかでも一際キワモノの種族が次から次へと集まり、彼らがもたらす特産品によってドンドン村は発展し豊かに、にぎやかになっていく。
聖女の紋章 転生?少女は女神の加護と前世の知識で無双する わたしは聖女ではありません。公爵令嬢です!
幸之丞
ファンタジー
2023/11/22~11/23 女性向けホットランキング1位
2023/11/24 10:00 ファンタジーランキング1位 ありがとうございます。
「うわ~ 私を捨てないでー!」
声を出して私を捨てようとする父さんに叫ぼうとしました・・・
でも私は意識がはっきりしているけれど、体はまだ、生れて1週間くらいしか経っていないので
「ばぶ ばぶうう ばぶ だああ」
くらいにしか聞こえていないのね?
と思っていたけど ササッと 捨てられてしまいました~
誰か拾って~
私は、陽菜。数ヶ月前まで、日本で女子高生をしていました。
将来の為に良い大学に入学しようと塾にいっています。
塾の帰り道、車の事故に巻き込まれて、気づいてみたら何故か新しいお母さんのお腹の中。隣には姉妹もいる。そう双子なの。
私達が生まれたその後、私は魔力が少ないから、伯爵の娘として恥ずかしいとかで、捨てられた・・・
↑ここ冒頭
けれども、公爵家に拾われた。ああ 良かった・・・
そしてこれから私は捨てられないように、前世の記憶を使って知識チートで家族のため、公爵領にする人のために領地を豊かにします。
「この子ちょっとおかしいこと言ってるぞ」 と言われても、必殺 「女神様のお告げです。昨夜夢にでてきました」で大丈夫。
だって私には、愛と豊穣の女神様に愛されている証、聖女の紋章があるのです。
この物語は、魔法と剣の世界で主人公のエルーシアは魔法チートと知識チートで領地を豊かにするためにスライムや古竜と仲良くなって、お力をちょっと借りたりもします。
果たして、エルーシアは捨てられた本当の理由を知ることが出来るのか?
さあ! 物語が始まります。

悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!
えながゆうき
ファンタジー
妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!
剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!
【完結】追放された生活錬金術師は好きなようにブランド運営します!
加藤伊織
ファンタジー
(全151話予定)世界からは魔法が消えていっており、錬金術師も賢者の石や金を作ることは不可能になっている。そんな中で、生活に必要な細々とした物を作る生活錬金術は「小さな錬金術」と呼ばれていた。
カモミールは師であるロクサーヌから勧められて「小さな錬金術」の道を歩み、ロクサーヌと共に化粧品のブランドを立ち上げて成功していた。しかし、ロクサーヌの突然の死により、その息子で兄弟子であるガストンから住み込んで働いていた家を追い出される。
落ち込みはしたが幼馴染みのヴァージルや友人のタマラに励まされ、独立して工房を持つことにしたカモミールだったが、師と共に運営してきたブランドは名義がガストンに引き継がれており、全て一から出直しという状況に。
そんな中、格安で見つけた恐ろしく古い工房を買い取ることができ、カモミールはその工房で新たなスタートを切ることにした。
器具付き・格安・ただし狭くてボロい……そんな訳あり物件だったが、更におまけが付いていた。据えられた錬金釜が1000年の時を経て精霊となり、人の姿を取ってカモミールの前に現れたのだ。
失われた栄光の過去を懐かしみ、賢者の石やホムンクルスの作成に挑ませようとする錬金釜の精霊・テオ。それに対して全く興味が無い日常指向のカモミール。
過保護な幼馴染みも隣に引っ越してきて、予想外に騒がしい日常が彼女を待っていた。
これは、ポーションも作れないし冒険もしない、ささやかな錬金術師の物語である。
彼女は化粧品や石けんを作り、「ささやかな小市民」でいたつもりなのだが、品質の良い化粧品を作る彼女を周囲が放っておく訳はなく――。
毎日15:10に1話ずつ更新です。
この作品は小説家になろう様・カクヨム様・ノベルアッププラス様にも掲載しています。

家庭菜園物語
コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。
その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。
異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。
138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」
お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。
賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。
誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。
そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。
諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる