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第一部
本心
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「お嬢様、大変です!」
「あら、ミシェル。おかえりなさい。そんなに慌ててどうしたの?」
今日もいつものようにガッフの街に言っていたミシェルが帰ってきました。
予定よりずいぶんと早いです。それに何やら様子が。
とりあえずお話を聞くとしましょう。
「ガッフの街にバカ王太子がいました。お嬢様を連れ戻しに来たようです」
「……まあ」
王国から遠く離れた街に来るなんて。あの王太子様にしてはなかなか行動力がありますね。
驚きです。しかし、私を連れ戻しにって……今さら何か御用なのでしょうか?
「まあって……お嬢様、あんまり興味ないですね。いや、当然と言えばそうなのですが」
「興味がないわけではないのよ。ただ、こんなところまでいらっしゃるなんてびっくりして。それだけよ。私に用があるのでしょうけど、私にはないわ。会う必要もないし、会う気もないの。だからあまり気にすることないのではなくて? それにここまではさすがに来れないと思うわ」
「……確かにそうですね。でも今の王太子は何するかわかりませんよ。帰る前に少しだけお話をしたのですが、私たちは罪人扱いですし、何より神獣がいないことが一番の問題だそうです。お嬢様と神獣が一緒にいるだろうってことは分かっているみたいなので、何かお嬢様をおびき出すような何かをするかもしれません」
罪人扱い、ですか……。私そこまでアルフレッド様に何かしたかしら。
おそらく私を連れ戻して王妃としてのお仕事だけさせて、自分はあの……なんていったかしら。男爵令嬢でしたっけ? その方とイチャイチャするつもりなのでしょう。
それにしたって、なんだか少し悲しくなってしましますね。
「……罪人だなんて。なんだかおかしくって笑ってしまうわ」
ミシェルを心配させないように笑います。
笑顔を作るのは得意なのですよ。これも王妃教育の賜物ですね。
「…………お嬢様。やっぱりあいつら始末してきますね」
「ちょ、ちょっと待ちなさい! どうしてそうなるのですか!」
「お嬢様に、そのような顔をさせるなんて。万死に値します。なので私の手で引導を渡してきます」
「お、落ち着きましょう。ね? 私なら平気よ。だから」
私が止めなかったら本気で行きましたねこの子。
私のために怒ってくれるのは分かってるけれど、少し物騒になってしまうのは良くないと思います。
「……平気だって言うなら、もっとちゃんと笑ってください! そんな作った笑顔じゃなく本当の、お嬢様の笑顔をお見せください!」
「……え?」
「ここに来てからのお嬢様は屋敷にいた頃とは比べ物にならないくらい楽しそうでした。毎日が楽しくって仕方がないような本当の笑顔でした。やっと……やっと私が求めていたお嬢様をこの数か月毎日見ることができました。それだけで私は幸せでした。もう、あんなお嬢様には戻らなくていいって。窮屈な籠の中で疲れ切っていたお嬢様を見ることはないんだって。なのに、また! 前と同じ、私を心配させないようにっていつも作り笑いを浮かべて……そんなつらそうなお嬢様は見たくないんです!そんな顔をさせる原因は私が排除します。だから、お嬢様はいつもの能天気な顔で幸せそうに笑っていてください……」
珍しく泣きじゃくりながらミシェルが言った言葉は私の心を激しく揺らす。
ミシェルがそんなことを思っていたなんて知りませんでした。
いつもミシェルに心配かけないように、ミシェルが私を必要以上に気にかけないように、作り笑いを浮かべ平気そうにしていればこの子は踏み込んできませんでした。
私はこの子を巻き込みたくはなかった。あんな窮屈で退屈な世界にミシェルを置いておきたくはなかった。そう思ってミシェルを引き離していました。
私から離れないでと言ったのに、私が距離を取っていたなんておかしな話ですね。
しかし、ミシェルは。ずっと私の側にいたこの子だけは。
「……ミシェルは全部わかっていたのね」
「当然です。私はお嬢様の専属侍女ですから」
そう言うミシェルは本当に幸せそうな笑顔でした。
この子から見たら私もこんな顔をしていたのですね。最近の私は。
なんだか心の奥の方から温かい何かがこみ上げてきました。とりあえずミシェルを抱きしめ、優しく頭を撫でます。
ミシェルの方が高いので少し背伸びをしているのは内緒です。
「お、お嬢様?」
「……ありがとう、ミシェル。あなたが側にいてくれて、私は幸せよ」
「…………はい゛。私も、お嬢様のお側にいられて幸せです」
ミシェルの涙が止まるまで、私はそのまま撫で続けることにしました。
「あら、ミシェル。おかえりなさい。そんなに慌ててどうしたの?」
今日もいつものようにガッフの街に言っていたミシェルが帰ってきました。
予定よりずいぶんと早いです。それに何やら様子が。
とりあえずお話を聞くとしましょう。
「ガッフの街にバカ王太子がいました。お嬢様を連れ戻しに来たようです」
「……まあ」
王国から遠く離れた街に来るなんて。あの王太子様にしてはなかなか行動力がありますね。
驚きです。しかし、私を連れ戻しにって……今さら何か御用なのでしょうか?
「まあって……お嬢様、あんまり興味ないですね。いや、当然と言えばそうなのですが」
「興味がないわけではないのよ。ただ、こんなところまでいらっしゃるなんてびっくりして。それだけよ。私に用があるのでしょうけど、私にはないわ。会う必要もないし、会う気もないの。だからあまり気にすることないのではなくて? それにここまではさすがに来れないと思うわ」
「……確かにそうですね。でも今の王太子は何するかわかりませんよ。帰る前に少しだけお話をしたのですが、私たちは罪人扱いですし、何より神獣がいないことが一番の問題だそうです。お嬢様と神獣が一緒にいるだろうってことは分かっているみたいなので、何かお嬢様をおびき出すような何かをするかもしれません」
罪人扱い、ですか……。私そこまでアルフレッド様に何かしたかしら。
おそらく私を連れ戻して王妃としてのお仕事だけさせて、自分はあの……なんていったかしら。男爵令嬢でしたっけ? その方とイチャイチャするつもりなのでしょう。
それにしたって、なんだか少し悲しくなってしましますね。
「……罪人だなんて。なんだかおかしくって笑ってしまうわ」
ミシェルを心配させないように笑います。
笑顔を作るのは得意なのですよ。これも王妃教育の賜物ですね。
「…………お嬢様。やっぱりあいつら始末してきますね」
「ちょ、ちょっと待ちなさい! どうしてそうなるのですか!」
「お嬢様に、そのような顔をさせるなんて。万死に値します。なので私の手で引導を渡してきます」
「お、落ち着きましょう。ね? 私なら平気よ。だから」
私が止めなかったら本気で行きましたねこの子。
私のために怒ってくれるのは分かってるけれど、少し物騒になってしまうのは良くないと思います。
「……平気だって言うなら、もっとちゃんと笑ってください! そんな作った笑顔じゃなく本当の、お嬢様の笑顔をお見せください!」
「……え?」
「ここに来てからのお嬢様は屋敷にいた頃とは比べ物にならないくらい楽しそうでした。毎日が楽しくって仕方がないような本当の笑顔でした。やっと……やっと私が求めていたお嬢様をこの数か月毎日見ることができました。それだけで私は幸せでした。もう、あんなお嬢様には戻らなくていいって。窮屈な籠の中で疲れ切っていたお嬢様を見ることはないんだって。なのに、また! 前と同じ、私を心配させないようにっていつも作り笑いを浮かべて……そんなつらそうなお嬢様は見たくないんです!そんな顔をさせる原因は私が排除します。だから、お嬢様はいつもの能天気な顔で幸せそうに笑っていてください……」
珍しく泣きじゃくりながらミシェルが言った言葉は私の心を激しく揺らす。
ミシェルがそんなことを思っていたなんて知りませんでした。
いつもミシェルに心配かけないように、ミシェルが私を必要以上に気にかけないように、作り笑いを浮かべ平気そうにしていればこの子は踏み込んできませんでした。
私はこの子を巻き込みたくはなかった。あんな窮屈で退屈な世界にミシェルを置いておきたくはなかった。そう思ってミシェルを引き離していました。
私から離れないでと言ったのに、私が距離を取っていたなんておかしな話ですね。
しかし、ミシェルは。ずっと私の側にいたこの子だけは。
「……ミシェルは全部わかっていたのね」
「当然です。私はお嬢様の専属侍女ですから」
そう言うミシェルは本当に幸せそうな笑顔でした。
この子から見たら私もこんな顔をしていたのですね。最近の私は。
なんだか心の奥の方から温かい何かがこみ上げてきました。とりあえずミシェルを抱きしめ、優しく頭を撫でます。
ミシェルの方が高いので少し背伸びをしているのは内緒です。
「お、お嬢様?」
「……ありがとう、ミシェル。あなたが側にいてくれて、私は幸せよ」
「…………はい゛。私も、お嬢様のお側にいられて幸せです」
ミシェルの涙が止まるまで、私はそのまま撫で続けることにしました。
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