婚約破棄されたので森の奥でカフェを開いてスローライフ

あげは

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第一部

帰宅

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　続いてやってきたのは、冒険者ギルドです。
　とても大きな建物です。ここに毎日たくさんの冒険者が通っているのですね。なかなか貫禄のある建物だと思います。
　あっ。あの両開きの小さい扉知ってます！　ミシェルが描いた「漫画」というもので見ました。本当にあのような扉があるのですね。

「お嬢様方。ここには野蛮で礼儀のなってない猿がたくさんいます。くれぐれも離れないようにお願いします」

「ミシェルったら、そんなに警戒しなくても大丈夫よ。そうそう絡まれるなんてことないのだから」

「いえ！　なに能天気なことをおっしゃってるんですか。実際にあるんですから、注意してください」

　確かにあなたの漫画ではよく見ましたが、それはあくまでもお話。
　現実はそううまくできていませんよ。

　――そう思っていた時期が私にもありました。

「おいおいおい。こんなところにメイドさんが何の用だぁ？　ご奉仕してくれんのかよ」

「ギャハハハ。こんな昼間っからなんて、仕事熱心でいいじゃねぇか。せっかくだからここにいる奴全員相手にしてくれよぉ」

　先ほどはミシェルの言いすぎだと思いましたが、その通りだったようです。
　憧れていた冒険者がこのようなものだったとは。がっかりです。

「……」

　ミシェルは無言でスカートからあるものを取り出しました。
　ミシェルの能力で造った「マスケット銃」というものです。これもミシェルの記憶にあったそうです。
　いえ、それ以前にどこから出しているのですかっ。
　後でミシェルに言っておかなければいけませんね。

　私がミシェルにお説教することを考えていると、炸裂音が響きました。
　見てみるとミシェルが絡んできた男たちを撃ったようです。
　もちろん怪我などさせていません。中身はゴム弾と言っていました。
　かなり音が大きかったのか、ギルド内には静寂が訪れました。

「あなた方のせいでお嬢様の冒険者への純粋な憧憬が汚されてしまいました。万死に値します。しかし、お嬢様の前です。あなた方は運がよかったでしょう。早々に立ち去りなさい。さもなくば……」

「「「すすす、すいませんでしたぁぁぁ！！」」」

　彼らは這うようにしてギルドを飛び出していきました。
　周囲はざわついています。
「あのメイドは何者だ？」「あの殺気……只者ではないぞ」「冒険者なのか。しかし……そうならパーティーに入れたい」「メ、メイドっ。なな、なんて美しいんだ！　……萌えぇ」

　なんだかミシェルが注目されてしまったみたいです。……一人おかしな人がいましたが。

「――言っておきますが」

　ミシェルが周囲の冒険者たちに何か言うみたいです。

「私は女の子にしか興味ありませんから」

　……………………どうして今言ったのでしょうか。
　おそらく必要ないことだと私は思いますが。

　ミシェルの言い知れぬ迫力を感じたのか、冒険者たちは静かに立ち去って行きました。
　ギルドには女性の冒険者だけが残りました。

「それでは行きましょう。大丈夫です。時間はかからないのですぐですよ」

　先ほどとは雰囲気もガラッと変わり、いつものミシェルに戻りました。
　私の知らなかったミシェルの一面を今日は知ることができました。
　怒るとあんな感じなのですね。これからはミシェルを怒らせないように気を付けることにしました。

　ミシェルのため込んでいた魔物の解体とお肉の定期購入についての話で三十分くらい時間がかかりました。
　意外とかかったのでは。と思いましたが、本来であればもっとかかるそうです。
　ミシェルが何とかしたのでしょう。さすが万能メイドです。

　話もまとまったので私たちは冒険者ギルドを後にしました。
　ギルドにいる間、ティアが静かでしたがどうしたのでしょうか。

「ティア、ギルドはどうでした？」

『できるだけ目立たないように集中してて、よく見てなかったわ。何かあったっていうのは分かるけど、あとで話を聞かせてね』

　なるほど。何か魔法を使っていたようです。それに集中していたからミシェルが怒っていたところも見ていなかったと。
　ではしっかり教えないといけませんね。ミシェルを怒らせないようにと。

　街に来た用事も済ませましたので、森に帰ることになりました。
　久々……と言っても二週間ぶりの街でしたが、結構楽しめたのではないでしょうか。
　極力人との関りを避けようと思っていましたが、時々こうして街に繰り出すのもいいかもしれません。
　それはまたミシェルとティアに相談することにしましょう。

　それではガッフの街散策は終了です。ありがとうございました。
　私たちはカイに乗って聖魔の森へ帰りました。

　……そう言えば、お肉はどうするのでしょうか。
　取りに来るのか運んでもらうのか。
　まあ後でミシェルに聞きますか。

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