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第一部
素敵な日
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結局、お肉については街に行くことにしました。
もちろんカイとティアも一緒にです。
神獣の力はティアが抑えてくれるそうです。
ティアのほうは……諦めました。仕方ないのです。ティアのような可愛い女性が目に涙を溜め上目遣いで懇願してきたら、否とは言えません。
ええ。これは自然の摂理というものなのです。
大丈夫です。もし変な男性が言い寄ってきたらミシェルが撃退してくれます。
ティアとも約束しました。勝手に私とミシェルから離れないことを。
あとは、街に行ってみてからですね。何が起こるかはわかりませんし。
そうして会議を終えた私は、今は一人お散歩をしています。
一人でも平気です。聖樹の周辺の動物たちや魔物とは仲良くなりましたから、危険な事なんてありません。
私だって、たまには一人になりたいときもあるのですよ。
しかし、何度同じ道を歩いてもこの森はきれいです。
森の中で樹々も一本一本がとても大きいというのに、どこか神々しく光に満ち溢れています。
それに家を建てた聖樹の周囲には太陽の光も差し込んできます。
そう考えると、どうしてこの森は「聖魔の森」と呼ばれるのでしょうか。
聖と魔。これらが共存する森? 確かに精霊と魔物がいますがなんとなく違う気がします。
まあ今はまだいいでしょう。この森を全部見たわけではないのですか
ら。
まだ私の知らない森の一面があるのだと思います。そう思ったほうが断然面白いですね。
考え事をしながらお散歩をしていると、いつの間にか仲良くなった動物たちがついてきていました。
というか、周囲の茂みや木の上から顔を出しています。
ざっと数えて……数えるのも億劫ですね。いっぱいです。
それにみんな何かを抱えているようです。
木の実や薬草、果物ですね。
私が立ち止まると動物たちが一斉に飛び出してきました。
リスの親子、猫の姉妹、白い狼の群れ、猿の集団、小鳥、兎、鹿、猪一家、などなど。
別に襲われているわけではありません。
いつもこのように自分たちの見つけたものをお裾分けしてくれるのです。
みんなとてもいい子たちなのですよ。
「みんなありがとう。お礼がしたいのですけど、何がいいかしら?」
そう言うと一斉に話し始めました。
そんな一度に言われても聞き取れませんよ。私の耳は二つしかありませんからね。
『歌がいいわ。ユミエラの歌、私好きよ』
「あら、ティア。いつの間に?」
『今よ。みんなもそれでいいわね』
ティアがそう言うと動物たちはきれいに並んで座りました。
躾てもいないのに、本当にいい子たちですね。
「それなら、場所を移しましょう。みんな、ついておいで」
私は聖樹のところへ引き返します。
聖樹の下で動物たちに囲まれながら音を奏でる。
うん。とっても素敵ですね。
何よりも平和で穏やかな情景が目に浮かぶようです。
動物たちを聖樹の前に集め私は家から楽器を持ってきました。
「ギター」というミシェルが創造したものです。
ミシェルの前の世界にあった楽器だそうですよ。素敵な音が鳴るんです。
私は聖樹に寄りかかって座りギターを構えます。
動物たちは静かに私を囲むように座ります。
両肩にはリスの親子が。狼の群れが聖樹を半円状に囲み伏せ、その外側をさらに鹿と猪が。猫の姉妹と兎が私の横に。
猿と小鳥は木の上できれいに整列していました。
他にもいろいろといて、かなりのオーディエンスが集まりました。
それに精霊さんたちまで。なんだか緊張しますね。
『そろったわね。準備できたわよ、ユミエラ』
「わかりました。それでは――」
こうして穏やかな演奏会が始まりました。
そうです、演奏会です。
動物たちの鳴き声や何かを叩く音が絶妙に私のギターと合わせて、きれいなセッションとなりました。
私たちの音楽に合わせて飛び回る精霊さんたちの光の軌跡は、とても幻想的でした。
屋敷にいたころではまったく現実になるとは思わなかった時間が叶いました。
あまりこういうのは良くないと思うのですが、王太子と公爵に感謝ですね。
今日はとても素敵な一日でした。
ちなみに家の方から見ていたミシェルはと言うと……。
「な、なんてお美しい。この伝説のような景色を、この尊い時間を動画に! くそ! どうして私はカメラを作っておかなかったのかっ! せめて写真だけでも!しかし、今から作るには時間が! それにこの光景から目を逸らすことは万死に値するのでは!? わ、私は一体どうしたら!!」
何を言っているかわからなかったそうです。カイが聞いていました。
ミシェルは何処にいてもミシェルなようです。
もちろんカイとティアも一緒にです。
神獣の力はティアが抑えてくれるそうです。
ティアのほうは……諦めました。仕方ないのです。ティアのような可愛い女性が目に涙を溜め上目遣いで懇願してきたら、否とは言えません。
ええ。これは自然の摂理というものなのです。
大丈夫です。もし変な男性が言い寄ってきたらミシェルが撃退してくれます。
ティアとも約束しました。勝手に私とミシェルから離れないことを。
あとは、街に行ってみてからですね。何が起こるかはわかりませんし。
そうして会議を終えた私は、今は一人お散歩をしています。
一人でも平気です。聖樹の周辺の動物たちや魔物とは仲良くなりましたから、危険な事なんてありません。
私だって、たまには一人になりたいときもあるのですよ。
しかし、何度同じ道を歩いてもこの森はきれいです。
森の中で樹々も一本一本がとても大きいというのに、どこか神々しく光に満ち溢れています。
それに家を建てた聖樹の周囲には太陽の光も差し込んできます。
そう考えると、どうしてこの森は「聖魔の森」と呼ばれるのでしょうか。
聖と魔。これらが共存する森? 確かに精霊と魔物がいますがなんとなく違う気がします。
まあ今はまだいいでしょう。この森を全部見たわけではないのですか
ら。
まだ私の知らない森の一面があるのだと思います。そう思ったほうが断然面白いですね。
考え事をしながらお散歩をしていると、いつの間にか仲良くなった動物たちがついてきていました。
というか、周囲の茂みや木の上から顔を出しています。
ざっと数えて……数えるのも億劫ですね。いっぱいです。
それにみんな何かを抱えているようです。
木の実や薬草、果物ですね。
私が立ち止まると動物たちが一斉に飛び出してきました。
リスの親子、猫の姉妹、白い狼の群れ、猿の集団、小鳥、兎、鹿、猪一家、などなど。
別に襲われているわけではありません。
いつもこのように自分たちの見つけたものをお裾分けしてくれるのです。
みんなとてもいい子たちなのですよ。
「みんなありがとう。お礼がしたいのですけど、何がいいかしら?」
そう言うと一斉に話し始めました。
そんな一度に言われても聞き取れませんよ。私の耳は二つしかありませんからね。
『歌がいいわ。ユミエラの歌、私好きよ』
「あら、ティア。いつの間に?」
『今よ。みんなもそれでいいわね』
ティアがそう言うと動物たちはきれいに並んで座りました。
躾てもいないのに、本当にいい子たちですね。
「それなら、場所を移しましょう。みんな、ついておいで」
私は聖樹のところへ引き返します。
聖樹の下で動物たちに囲まれながら音を奏でる。
うん。とっても素敵ですね。
何よりも平和で穏やかな情景が目に浮かぶようです。
動物たちを聖樹の前に集め私は家から楽器を持ってきました。
「ギター」というミシェルが創造したものです。
ミシェルの前の世界にあった楽器だそうですよ。素敵な音が鳴るんです。
私は聖樹に寄りかかって座りギターを構えます。
動物たちは静かに私を囲むように座ります。
両肩にはリスの親子が。狼の群れが聖樹を半円状に囲み伏せ、その外側をさらに鹿と猪が。猫の姉妹と兎が私の横に。
猿と小鳥は木の上できれいに整列していました。
他にもいろいろといて、かなりのオーディエンスが集まりました。
それに精霊さんたちまで。なんだか緊張しますね。
『そろったわね。準備できたわよ、ユミエラ』
「わかりました。それでは――」
こうして穏やかな演奏会が始まりました。
そうです、演奏会です。
動物たちの鳴き声や何かを叩く音が絶妙に私のギターと合わせて、きれいなセッションとなりました。
私たちの音楽に合わせて飛び回る精霊さんたちの光の軌跡は、とても幻想的でした。
屋敷にいたころではまったく現実になるとは思わなかった時間が叶いました。
あまりこういうのは良くないと思うのですが、王太子と公爵に感謝ですね。
今日はとても素敵な一日でした。
ちなみに家の方から見ていたミシェルはと言うと……。
「な、なんてお美しい。この伝説のような景色を、この尊い時間を動画に! くそ! どうして私はカメラを作っておかなかったのかっ! せめて写真だけでも!しかし、今から作るには時間が! それにこの光景から目を逸らすことは万死に値するのでは!? わ、私は一体どうしたら!!」
何を言っているかわからなかったそうです。カイが聞いていました。
ミシェルは何処にいてもミシェルなようです。
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