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第一部

聖魔の森

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 国を出てから一週間。
 眼下には森が広がっています。とても広いです。
 ミシェルが言っていたのはよくわからなかったのですが、とうきょうどーむが十個以上は入る、とか言っていました。
 そのとうきょうどーむというものが何かは知りませんが、この広さで十個以上ということは、一つがかなり大きいみたいですね。
 それにしても、上から見ているのに森の全容が待ってくわかりません。
 一体どこまでがなのでしょうか。

 なぜ私たちが一週間で目的地にたどり着いたかといいますと、空を飛んだんです。
 ええ、そうですとも。文字通り空を飛びました。いえ、空を駆けたと言った方が正しいかもしれませんね。
 神獣は空を走ることができるみたいで、カイに乗って空の旅を堪能しました。
 おかげでこんなに早く着くことができました。それになかなかスリリングな体験でしたわ。
 空から少し見ただけでしたが、おそらく普通に馬車を使っていたら、もっとかかっていましたね。普通に国二つほど通過しましたし。
 ほんと、カイ様様ですね。ありがとうございます。今日のご褒美は期待してください。

『主よ。こんな森で一体何をするというのだ』

「もう、カイったら。そんな堅苦しい話し方しなくていいと言っているじゃないですか」

『我は神獣だ。威厳というものが必要なのだ』

「そんなこと言ってるけど、なんだかんだ言ってお嬢様に骨抜きになっているじゃないですか。まるで猫みたいですよ」

『うぐっ』

 そうです。
 いつも撫でてあげたり、毛繕いしたりしているときはふにゃふにゃになっているんです。とてもかわいいですよ。

『そ、そんなことより!』

「露骨に話を逸らしましたね~」

『うるさいわ! 主。そろそろ降りるぞ。これ以上は僕でも進めないんだ』

「どういうことです?」

『聖魔の森は中心に一本の聖樹がある。それが森全体を魔法で覆い、迷路のようになっているんだ。こうやって空から行くといつまでも中心にたどり着くことができず、永遠とさまようことになる。ここからは実際に森の中を歩き回るしかない』

「なるほど。そのようになっているんですね。わかりました。では、森の入り口から正式に入りましょう。何より迷路って初めてでワクワクします」

『……いや、遊びとは違うのだが』

 カイがなにか言っているようですが、私の耳には届きませんわ。
 地面に降り立つって分かったことですが、木々の一本一本がかなり大きいです。それが何千何万と並び立っている光景はなかなか壮観ですね。
 それでは。早速迷路に挑戦と行きましょう!

「お嬢様、ステイです」

「む~。何をするんですか、ミシェル。せっかく意気込んでいたのに」

「まだ確認することがたくさんあります。それに今日はずっと移動していたので、先に休憩を取りましょう。お腹も減っているでしょう?」

「……確かにそうですね。よくよく考えたら、朝食べてからまだ何も食べていませんでしたね。仕方ないので今回はミシェルの言う通りにしましょう」

 ということで、一旦小休止です。
 カイもお腹空いているみたいですし、ずっと空を駆けていたので少しお疲れでしょう。
 適度な休憩が効率の良い仕事につながるのです!

「それより、ミシェルの確認したいことって何?」

「この森の生態についてですね。どんな動物がいるのか、魔物はいるのか、植物は何が生えているのか、いろいろとありますよ。これを知っていないとここで生活するのは難しくなりますからね」

「なるほど。カイ、なにか知っていますか?」

『僕だって全部知っているわけじゃないぞ。しいて言うなら、魔物も動物もいる。それに精霊もいる。植物は知らない』

「精霊? この森には精霊がいるの?」

 精霊とはいつの日か人の前に姿を現さなくなった、人間の間では伝説の存在です。
 それがこの森には実際にいるなんて。まさに夢みたいですね。

『聖樹だってある意味精霊みたいなものだ。それに冒険者の中には精霊術師というのもいる。別に珍しいものでもない』

「何を言っているんです。私が見たことないのだから珍しいものですよ」

「お嬢様が見たことないものなら、いっぱいありそうですね。そう考えたら珍しいものの方が多いんじゃないですか?」

「ミシェル? 余計な事は言わないものよ?」

「……うっす」

 ミシェルが料理に戻っていきました。
 まったく。急に話に入ってきて何を言うかと思えば。

「とにかく! ここでの目的が増えました。精霊さんたちと仲良くしましょう!」

『そんなにうまくいけばいいけどね』

「大丈夫です! 何とかなります」

 ふふふ。ますます楽しみだわ。
 あ~。早く精霊さんたちに会いたいですわ~。
 ちなみに今日のシチューもおいしかったですよ、ミシェル。




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