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第一部
婚約破棄そして勘当
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「私は、ユミエラとの婚約を破棄する!」
今宵は学院卒業記念のパーティーです。
普通は婚約者と入場するのですが、私の婚約者は他のご令嬢にお熱なようで、一人で会場に足を運びました。
そうして会場に着いた私に対しての最初の言葉があれ。
「……とりあえず理由をお聞かせ願えますか? アルフリード様」
私と対面している顔は美形の王太子アルフリード・エル・クィンサス様。
隣には見覚えのない令嬢がしなだれかかっていました。
「理由だと? 白々しいやつめ。わかっているのだろう。我が愛しのタニアに対しての数々の嫌がらせ。多くの者が目撃したと言っている。言い逃れはできまい。
……それに、王家の血に妾の娘などふさわしくないからな」
はて。タニアとはどなたでしょうか。
もしや、今お隣にいる方がそうなのでしょうか。なるほど。初めましてですね。
つまり言いがかりで私との婚約を破棄するということですか。
まあ妾の娘というのは否定しませんが。
しかし、こんなにも多くの方がいらっしゃる場所で、そのような事おっしゃってよろしいのかしら。
婚約者がいる身で堂々と浮気しましたと言っているようなものです。
政略結婚ですから、私は特に恋愛感情というものを持ち合わせてはいないので構いませんが。
貴族の方々はうるさいですよ。あることないこと言いふらしたりするのですから。
「おい。何か言ったらどうなんだ?」
いけない。考え事をしてたら、何か言うのを忘れてしまっていたわ。
とはいっても言うことなんてないのですけど。
「いえ。特に何も。そうしたいのであればご随意に。それでは私はこれで失礼いたします。
――ああ、そうでした。ご挨拶がまだでしたね。初めまして。ユミエラ・フォン・アマリリスと申します。以後お見知りおきを。タニア・コーンラット様。
それではごきげんよう」
そう言って私は踵を返し退場する。
最後に見た王太子とタニアのポカーンとした顔は面白かったわ。
さて、次はとても面倒な家のことね。まあどうなるかは想像つくけど。
想像通りなら……。そう考えて顔がにやける。
逸る気持ちを抑えて、私は公爵家の馬車に乗り家に向かった。
◇◇◇
「話はもう聞いている。王太子との婚約を破棄されたようだな」
私は家に戻った後、準備する間もなく書斎に通された。
書斎には公爵家の人たちが揃っていて、全員が私を冷たい眼で見る。
父に、兄が二人、姉が一人、妹が一人、義母が二人。これが私の家族構成。というか家族と言っていいのかしら。
私だけが妾の子。つまり父のちょっとしたお遊びでできてしまったのだ。
だからこんなにも嫌われている。なのに外聞を気にしてか、ちゃんと十八年間公爵家の娘として育てられた。王太子の婚約者だったから王妃教育まで受けさせられた。
貴族って本当に面倒くさいわね。外面ばかり気にして。
「聞いているのか」
「もちろんです」
「では、本当なんだな」
「ええ、そうですわ。私はアルフリード様に婚約破棄されました」
「そうか。王太子の婚約者だったからここまで面倒を見てきたが、それももう終わりだ」
何を言っているのだろうか。この人たちに面倒を見てもらった覚えなんてない。
教育係は与えられたが、それだけだ。
特に会話をしてもいないし、食事だって一度も一緒に食べたことはない。
家で開催するパーティーに出席したこともお茶会に参加したこともない。
それで面倒を見てきたとか言うのか、この人は。
「もう、お前に利用価値などない。即刻この家から出ていけ。なお公爵家の物を持ち出すことも禁ずる。明日の朝顔を見るようなことがあれば、わかっているな?」
「わかりました。そのように」
私は書斎を出て自室に向かう。
すると後ろから笑い声が聞こえてきた。大方私がいなくなることを喜んでいるのだろう。
気にすることはない。私も清々するから。貴族の面倒な生活をすることもなくなると思うと顔が緩む。
自室の扉を開け、中に入ると、私の専属の侍女がいた。しかもソファに寝転がってお菓子を食べていた。
「あ。お嬢様、お帰りなさーい。随分とお早いお帰りで。何かありました?」
侍女のミシェル。
幼いころ、街を歩いているときに出会った元孤児の女の子。
一目見て面白そうだと思った私は、そのまま家に持ち帰り侍女として私の側に置いた。
私の直感は正しかったみたいで、確かに面白い子だった。
なんと、前世の記憶があるとか。元の世界の知識でいろいろな事を教えてもらった。
その知識で商売を始めたりもした。
私に転生者だと話してから二人きりだとこのように、砕けた感じで接してくる。
私にはとても居心地がよかった。
「王太子に婚約破棄されたわ。それと公爵家も勘当。準備したらすぐに家を出るわ」
「マジですか。やりましたね、お嬢様。念願の勘当ですよ。どんなお気持ちですか?」
「当然――うれしいわ。ようやくこの嫌いな生活とお別れできる何て最高じゃない。それに、私がいなくなることでこの家もつぶれるわ。それもわからないで喜んでいるバカな家族にむしろ敬意すら感じるわ」
「確かに。公爵家のお仕事とか全部お嬢様がやってましたもんね。それじゃ、私も準備しますか」
「あら。ミシェルはどうするの?」
「もちろん。お嬢様と一緒に行きますよ。どうせあのバカどもは公爵家の物の持ち出しを禁止したんだろうけど、私は公爵家じゃなくてお嬢様にお仕えしてるんですから。それに拾っていただいた恩もありますしね」
「無理しなくていいのよ。あなたの好きなように生きていいんだから」
「それなら断然お嬢様とご一緒しますよ。そのほうが面白いですからね。どこまでもお供します」
「ふふっ。ありがとう。あなたが一緒ならうれしいわ」
私たちは準備を始めた。と言っても特に持っていくようなものはない。
重苦しいドレスを脱いで、動きやすいワンピースに着替えるだけだ。
それに大半の持ち物はミシェルのストレージに入ってる。
転生特典とか言っていたわ。便利な能力ね。
ミシェルはメイド服のままで行くらしい。何でも改造してそこらの戦闘服より性能がいいとか。本当に万能メイドになったわね。
ちなみにお金もある。ミシェルと二人で秘密裏に始めた商売のおかげで一生生活できるくらいに。なのでかねてから決めていた計画を実行するわ。
「準備はいいかしら? 後悔はない?」
「もちろん。いつでも大丈夫ですよ」
「それじゃ――」
「「念願のスローライフへ!!」」
こうして私、ユミエラ・フォン・アマリリスはミシェルと二人で公爵家という重苦しい肩書を捨て、新しい生活へと一歩踏み出した。
今宵は学院卒業記念のパーティーです。
普通は婚約者と入場するのですが、私の婚約者は他のご令嬢にお熱なようで、一人で会場に足を運びました。
そうして会場に着いた私に対しての最初の言葉があれ。
「……とりあえず理由をお聞かせ願えますか? アルフリード様」
私と対面している顔は美形の王太子アルフリード・エル・クィンサス様。
隣には見覚えのない令嬢がしなだれかかっていました。
「理由だと? 白々しいやつめ。わかっているのだろう。我が愛しのタニアに対しての数々の嫌がらせ。多くの者が目撃したと言っている。言い逃れはできまい。
……それに、王家の血に妾の娘などふさわしくないからな」
はて。タニアとはどなたでしょうか。
もしや、今お隣にいる方がそうなのでしょうか。なるほど。初めましてですね。
つまり言いがかりで私との婚約を破棄するということですか。
まあ妾の娘というのは否定しませんが。
しかし、こんなにも多くの方がいらっしゃる場所で、そのような事おっしゃってよろしいのかしら。
婚約者がいる身で堂々と浮気しましたと言っているようなものです。
政略結婚ですから、私は特に恋愛感情というものを持ち合わせてはいないので構いませんが。
貴族の方々はうるさいですよ。あることないこと言いふらしたりするのですから。
「おい。何か言ったらどうなんだ?」
いけない。考え事をしてたら、何か言うのを忘れてしまっていたわ。
とはいっても言うことなんてないのですけど。
「いえ。特に何も。そうしたいのであればご随意に。それでは私はこれで失礼いたします。
――ああ、そうでした。ご挨拶がまだでしたね。初めまして。ユミエラ・フォン・アマリリスと申します。以後お見知りおきを。タニア・コーンラット様。
それではごきげんよう」
そう言って私は踵を返し退場する。
最後に見た王太子とタニアのポカーンとした顔は面白かったわ。
さて、次はとても面倒な家のことね。まあどうなるかは想像つくけど。
想像通りなら……。そう考えて顔がにやける。
逸る気持ちを抑えて、私は公爵家の馬車に乗り家に向かった。
◇◇◇
「話はもう聞いている。王太子との婚約を破棄されたようだな」
私は家に戻った後、準備する間もなく書斎に通された。
書斎には公爵家の人たちが揃っていて、全員が私を冷たい眼で見る。
父に、兄が二人、姉が一人、妹が一人、義母が二人。これが私の家族構成。というか家族と言っていいのかしら。
私だけが妾の子。つまり父のちょっとしたお遊びでできてしまったのだ。
だからこんなにも嫌われている。なのに外聞を気にしてか、ちゃんと十八年間公爵家の娘として育てられた。王太子の婚約者だったから王妃教育まで受けさせられた。
貴族って本当に面倒くさいわね。外面ばかり気にして。
「聞いているのか」
「もちろんです」
「では、本当なんだな」
「ええ、そうですわ。私はアルフリード様に婚約破棄されました」
「そうか。王太子の婚約者だったからここまで面倒を見てきたが、それももう終わりだ」
何を言っているのだろうか。この人たちに面倒を見てもらった覚えなんてない。
教育係は与えられたが、それだけだ。
特に会話をしてもいないし、食事だって一度も一緒に食べたことはない。
家で開催するパーティーに出席したこともお茶会に参加したこともない。
それで面倒を見てきたとか言うのか、この人は。
「もう、お前に利用価値などない。即刻この家から出ていけ。なお公爵家の物を持ち出すことも禁ずる。明日の朝顔を見るようなことがあれば、わかっているな?」
「わかりました。そのように」
私は書斎を出て自室に向かう。
すると後ろから笑い声が聞こえてきた。大方私がいなくなることを喜んでいるのだろう。
気にすることはない。私も清々するから。貴族の面倒な生活をすることもなくなると思うと顔が緩む。
自室の扉を開け、中に入ると、私の専属の侍女がいた。しかもソファに寝転がってお菓子を食べていた。
「あ。お嬢様、お帰りなさーい。随分とお早いお帰りで。何かありました?」
侍女のミシェル。
幼いころ、街を歩いているときに出会った元孤児の女の子。
一目見て面白そうだと思った私は、そのまま家に持ち帰り侍女として私の側に置いた。
私の直感は正しかったみたいで、確かに面白い子だった。
なんと、前世の記憶があるとか。元の世界の知識でいろいろな事を教えてもらった。
その知識で商売を始めたりもした。
私に転生者だと話してから二人きりだとこのように、砕けた感じで接してくる。
私にはとても居心地がよかった。
「王太子に婚約破棄されたわ。それと公爵家も勘当。準備したらすぐに家を出るわ」
「マジですか。やりましたね、お嬢様。念願の勘当ですよ。どんなお気持ちですか?」
「当然――うれしいわ。ようやくこの嫌いな生活とお別れできる何て最高じゃない。それに、私がいなくなることでこの家もつぶれるわ。それもわからないで喜んでいるバカな家族にむしろ敬意すら感じるわ」
「確かに。公爵家のお仕事とか全部お嬢様がやってましたもんね。それじゃ、私も準備しますか」
「あら。ミシェルはどうするの?」
「もちろん。お嬢様と一緒に行きますよ。どうせあのバカどもは公爵家の物の持ち出しを禁止したんだろうけど、私は公爵家じゃなくてお嬢様にお仕えしてるんですから。それに拾っていただいた恩もありますしね」
「無理しなくていいのよ。あなたの好きなように生きていいんだから」
「それなら断然お嬢様とご一緒しますよ。そのほうが面白いですからね。どこまでもお供します」
「ふふっ。ありがとう。あなたが一緒ならうれしいわ」
私たちは準備を始めた。と言っても特に持っていくようなものはない。
重苦しいドレスを脱いで、動きやすいワンピースに着替えるだけだ。
それに大半の持ち物はミシェルのストレージに入ってる。
転生特典とか言っていたわ。便利な能力ね。
ミシェルはメイド服のままで行くらしい。何でも改造してそこらの戦闘服より性能がいいとか。本当に万能メイドになったわね。
ちなみにお金もある。ミシェルと二人で秘密裏に始めた商売のおかげで一生生活できるくらいに。なのでかねてから決めていた計画を実行するわ。
「準備はいいかしら? 後悔はない?」
「もちろん。いつでも大丈夫ですよ」
「それじゃ――」
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