少年と山の中の古城

あおくらげ

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「このお城はね、昔、100年前くらいの話だけど、お金持ちの家族が住んでたんだ」

応接室の古びた写真の家族のことだろう。

100年前と言われれば納得ができる。

「その時僕はこのお城からすぐ近くの森の小さい洞窟の中で、お父さんと2人で暮らしていたんだ。僕は人間の年齢で言うと6歳くらいだった」

近くに洞窟が…

アキラはショウを真面目な顔で見つめていた。

「僕とお父さんは、吸血鬼の末裔だったんだ。200年くらい前はもっといたんだけど、みんな人間に殺されてしまったらしい」

吸血鬼は人間を狩る側であったはずだけれど、道具が強くなって人間が狩る側になってしまったのか…

「だから、隠れて生きてきた」

ショウはまた俯いた。

「僕にはお父さんしかいなかったんだ」

「…」

アキラも、1人になるまでおばあちゃんしか頼れる人がいなかった。僕にとってのおばあちゃんのような存在が彼にとってのお父さんだったのだろう。

「…ぅっ」

ショウは苦しそうに耳を押さえた。

発作が始まったのだろうか。

アキラはショウの肩を抱いて、頭を撫でた。

しかし、ショウの発作はどんどん悪化していった。

どんどん過呼吸になっていく。

「深呼吸、深呼吸」

アキラは優しく言葉をかけるが、ショウの脳内はどんどんトラウマに支配されていく。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

「ショウ、こっちに来なさい」

「なあに?お父さん」

僕はお父さんに呼ばれて洞窟の出口の方へ進んだ。

そこには人間の若い女性が倒れていた。

洞窟の外は激しい雨が降っていた。

「前に話しただろう。人間の血も美味しいけれど、人間の肉はすごい美味しいんだ。持ってきたぞ」

「ほんとに!食べれるの!?」

僕はすごくわくわくしていた。

前にお父さんに、人間の肉の美味しさと、その効果について教えられた。

人間の肉を食べれば、100年は餓死することなく余裕で生きられるらしい。

お父さんが人間を最後に食べたのもちょうど100年前くらいで、その時はまだ吸血鬼がたくさんいた時だ。

「ああ、ようやく捕まえられたんだよ。お父さん頑張ったよ」

「お父さんすごい!ありが
2人で肉にかぶりついた。

頬が溶けるほど美味しかった。

僕はまだ吸血鬼としての訓練を受けていなくて、人間の血を吸ったこともなかった。

血も肉も、初めての味だった。

「お父さん、人間ってこんなに美味しいんだね」

「ああ、これでまた100年死なずに済むよ」

お父さんも満面の笑みだった。



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