少年と山の中の古城

あおくらげ

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「あのね」

しばらくして、ショウは口を開いた。

その顔はこわばっていて、真剣な表情をしていた。

「僕と仲良くしてくれた人、君が初めてなんだ」

アキラはショウの顔を見た。

アキラの涙はおさまってきていた。

ショウは自分の膝を見つめ、アキラとは目を合わせなかった。

「仲良く、と言うか、そもそも、僕は人と関わったことがほとんどない」

「え…?」

ショウは膝をぎゅっとつかんだ。

「ずっと1人なんだ」

家族は?

仕事は?学校は?どうしていたの?

アキラの頭の中は疑問でいっぱいだ。

「詳しくは、まだ話せないけど…」

ショウは暗い顔をして俯いた。

「いじめられたこともない。だから、君の辛さを完全に分かってあげることは出来ないけど…」

ようやくショウはアキラの方を向いた。

「君の力になれるならそばに居たいって、思った」

ショウは涙目になりながらにっこり笑った。

アキラもにっこり笑った。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

ショウは、お城の中を詳しく案内してくれた。

大きな図書室があって、普段はここで本を読んで暇をつぶしているという。

「でももう、ほとんど読み切っちゃったんだ」

蔵書はほとんどが古いもので、最近の新しい本は机の上に数冊だけ積まれているだけだった。

「これは…?」

アキラはその新しい本を指さす。

「ああ、これは…あはは」

ショウははぐらかすように目を逸らした。

おそらくどこかから盗んできたものなのだろう。

あまり触れない方が良さそうだ。

ショウは本棚から何冊か本を取り出した。

「僕はこういう本が特に好きなんだ」

エドガーアランポー、コナンドイルなどの特に古い推理小説作家の名前が背表紙に載っている。

アキラも好んで読むジャンルだ。

「推理小説が好きなんだね。良かったら、僕もオススメしたいのがあるよ」

アキラはショウの腕を引っ張り、城を出ようとした。

「えっ…」

ショウは驚いた様子だ。

顔から血の気が引いていて、元々白い肌がさらに白く見えた。

ショウはアキラの腕を振り払った。

「ごめん、街の方へは行けない」

「…どうして?」

ショウは床にうずくまった。

「ごめん、今日は…」

耳を塞ぎ、急に息が荒くなる。

「帰って」

「えっ」

急な拒絶の言葉に、アキラは思わず反応してしまう。

「お願い」

「そんな…」

アキラは少なからずショックを受けた。

「うっ…」

ショウは悶え始めた。

「大丈夫…?」

アキラはショウの背中をさすろうと近づく。

「1人にして!」

「…っ」

金切り声で必死に叫ぶショウを見て、アキラは思わず後ずさった。

そして、ショウは小さな声で呟いた。

「また、待ってるから」

「…」

「今日はごめん。またね。ごめんなさい」

ショウは胸を抑えながらアキラの元から逃げた。

遠くから階段を駆け上がる音が聞こえた。





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