21 / 23
心の傷跡
shortstory
しおりを挟む
「父さんも母さんも何で────」
幼いころの自分はいつも誰も認めてくれなかった。
言いかけた“認めてくれないんだ”その言葉は空を切り、紡がれることはなく次に紡がれた言葉は自虐じみた謝罪の言葉、だった。
「あぁ、ごめんって。俺が悪かったよ。聞いた俺が馬鹿みたいだ。底脳でごめんなさい。生きててごめんなさい。出来損ないでごめんなさい。女に生まれてごめんなさい。……これで居んだろ、俺は低能でできそこないで女なんだから」
“失敗作、女はいらない、お前は出来損ないだ”そう言われながら男として、失敗作として、────要らない子として育てられた少女は女として生きていくことはおろか、愛し方、愛され方を学ぶことをあきらめ、愛すること、愛されることを辞めて生きていくことを決めました。
「マ……マ……?パパ……?……いや、だ!いやだ……やめて、やめて……ごめんなさい……っ、」
あぁ、赤い赤い真っ赤な血は人を殺す。たくさんたくさん血が出るとその人は助からない。お金がなければどうせお医者さんは助けてくれない。お金がなくて助けられなかった私は出来損ないで、要らない子。私はママとパパを救え奈で見殺しにした。ママとパパを殺したのは赤い赤い、真っ赤な血。だから────赤い赤い真っ赤な血は怖い。たやすく人の命を残酷に奪い去っていくんだから。
「あー……。うん、俺ねそれ無理。怖い、できない……。俺には……できない……から……。ごめん、ごめんなさい。ほんとうに……ごめんなさい……ゆるして……お願いだから、それだけは無理なの……」
幼い頃に医者に見捨てられて事故で両親を亡くし、助けられなかったことで、心に深い傷を負た挙句に親せきの家での虐待を受けてしまった少女は、全ての感情を殺し、医者を軽蔑し、どうせ無駄だと全てをあきらめて生きていこうと決めるようになりました。そんな風に育ってしまった少女は自分の怖いこと、嫌いなこと、無理だと判断したことからは逃げる術だけを覚えただけで立ち向かう勇気を学ぶことは諦めました。
「俺が、狂ってるとか言うけど……!じゃあ何が正しいんだよ!俺には、伊織ちゃんしか居なかった!伊織ちゃんしかくれなかった!伊織ちゃんがくれたものが俺の全てだった……っ!伊織ちゃんさえいればそれで良かったんだよ!俺はただ……!俺はただ、伊織ちゃんがくれたもの、全部全部返したいだけ……。それだけなんだよ!」
伊織ちゃんがくれたもの、それだけが全てで、ただ────伊織ちゃんが大好きなだけなのに。
「伊織ちゃん。好き好き好き好き好き好き……!大好き大好き大好き大好き大好き!ねぇ伊織ちゃん。愛してるよ……?」
両親にも兄にもちゃんと愛を与えてもらえなかった少年はとある少女と出会い、その少女が与えてくれた愛に触れてしまったことで、愛を少女に返そうと思いつきました。しかし正しい愛の与え方を知らない少年は過剰なまでに愛を少女に与えようとしました。少年は、正しい愛の受け取り方、正しい愛の与え方を知ること、学ぶことそれら全てを破棄しました。
「────なぁ、雅。どうしてお前は僕を……」
一人置いて、先にいなくなってしまったんだ。その言葉は口の中で小さく紡がれるが、声には出なかった。口にすることを体が拒んでいたのだった。
「お前がいなければ、こんなつまらない世界に生きている価値を見いだせると思うかい……?」
共にこれからも生きていたかった最愛の人を失ってしまった少女は幼くして、生きる意味を求めながら、のびのびと生きていくことを放棄すると共に目の前に立ちふさがった大きな壁を乗り越えようとする力を出すことを諦めました。
幼いころの自分はいつも誰も認めてくれなかった。
言いかけた“認めてくれないんだ”その言葉は空を切り、紡がれることはなく次に紡がれた言葉は自虐じみた謝罪の言葉、だった。
「あぁ、ごめんって。俺が悪かったよ。聞いた俺が馬鹿みたいだ。底脳でごめんなさい。生きててごめんなさい。出来損ないでごめんなさい。女に生まれてごめんなさい。……これで居んだろ、俺は低能でできそこないで女なんだから」
“失敗作、女はいらない、お前は出来損ないだ”そう言われながら男として、失敗作として、────要らない子として育てられた少女は女として生きていくことはおろか、愛し方、愛され方を学ぶことをあきらめ、愛すること、愛されることを辞めて生きていくことを決めました。
「マ……マ……?パパ……?……いや、だ!いやだ……やめて、やめて……ごめんなさい……っ、」
あぁ、赤い赤い真っ赤な血は人を殺す。たくさんたくさん血が出るとその人は助からない。お金がなければどうせお医者さんは助けてくれない。お金がなくて助けられなかった私は出来損ないで、要らない子。私はママとパパを救え奈で見殺しにした。ママとパパを殺したのは赤い赤い、真っ赤な血。だから────赤い赤い真っ赤な血は怖い。たやすく人の命を残酷に奪い去っていくんだから。
「あー……。うん、俺ねそれ無理。怖い、できない……。俺には……できない……から……。ごめん、ごめんなさい。ほんとうに……ごめんなさい……ゆるして……お願いだから、それだけは無理なの……」
幼い頃に医者に見捨てられて事故で両親を亡くし、助けられなかったことで、心に深い傷を負た挙句に親せきの家での虐待を受けてしまった少女は、全ての感情を殺し、医者を軽蔑し、どうせ無駄だと全てをあきらめて生きていこうと決めるようになりました。そんな風に育ってしまった少女は自分の怖いこと、嫌いなこと、無理だと判断したことからは逃げる術だけを覚えただけで立ち向かう勇気を学ぶことは諦めました。
「俺が、狂ってるとか言うけど……!じゃあ何が正しいんだよ!俺には、伊織ちゃんしか居なかった!伊織ちゃんしかくれなかった!伊織ちゃんがくれたものが俺の全てだった……っ!伊織ちゃんさえいればそれで良かったんだよ!俺はただ……!俺はただ、伊織ちゃんがくれたもの、全部全部返したいだけ……。それだけなんだよ!」
伊織ちゃんがくれたもの、それだけが全てで、ただ────伊織ちゃんが大好きなだけなのに。
「伊織ちゃん。好き好き好き好き好き好き……!大好き大好き大好き大好き大好き!ねぇ伊織ちゃん。愛してるよ……?」
両親にも兄にもちゃんと愛を与えてもらえなかった少年はとある少女と出会い、その少女が与えてくれた愛に触れてしまったことで、愛を少女に返そうと思いつきました。しかし正しい愛の与え方を知らない少年は過剰なまでに愛を少女に与えようとしました。少年は、正しい愛の受け取り方、正しい愛の与え方を知ること、学ぶことそれら全てを破棄しました。
「────なぁ、雅。どうしてお前は僕を……」
一人置いて、先にいなくなってしまったんだ。その言葉は口の中で小さく紡がれるが、声には出なかった。口にすることを体が拒んでいたのだった。
「お前がいなければ、こんなつまらない世界に生きている価値を見いだせると思うかい……?」
共にこれからも生きていたかった最愛の人を失ってしまった少女は幼くして、生きる意味を求めながら、のびのびと生きていくことを放棄すると共に目の前に立ちふさがった大きな壁を乗り越えようとする力を出すことを諦めました。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
愛しの婚約者は王女様に付きっきりですので、私は私で好きにさせてもらいます。
梅雨の人
恋愛
私にはイザックという愛しの婚約者様がいる。
ある日イザックは、隣国の王女が私たちの学園へ通う間のお世話係を任されることになった。
え?イザックの婚約者って私でした。よね…?
二人の仲睦まじい様子を見聞きするたびに、私の心は折れてしまいました。
ええ、バッキバキに。
もういいですよね。あとは好きにさせていただきます。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
【完結】忘れてください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。
貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。
夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。
貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。
もういいの。
私は貴方を解放する覚悟を決めた。
貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。
私の事は忘れてください。
※6月26日初回完結
7月12日2回目完結しました。
お読みいただきありがとうございます。
さよなら私の愛しい人
ペン子
恋愛
由緒正しき大店の一人娘ミラは、結婚して3年となる夫エドモンに毛嫌いされている。二人は親によって決められた政略結婚だったが、ミラは彼を愛してしまったのだ。邪険に扱われる事に慣れてしまったある日、エドモンの口にした一言によって、崩壊寸前の心はいとも簡単に砕け散った。「お前のような役立たずは、死んでしまえ」そしてミラは、自らの最期に向けて動き出していく。
※5月30日無事完結しました。応援ありがとうございます!
※小説家になろう様にも別名義で掲載してます。
『別れても好きな人』
設樂理沙
ライト文芸
大好きな夫から好きな女性ができたから別れて欲しいと言われ、離婚した。
夫の想い人はとても美しく、自分など到底敵わないと思ったから。
ほんとうは別れたくなどなかった。
この先もずっと夫と一緒にいたかった……だけど世の中には
どうしようもないことがあるのだ。
自分で選択できないことがある。
悲しいけれど……。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
登場人物紹介
戸田貴理子 40才
戸田正義 44才
青木誠二 28才
嘉島優子 33才
小田聖也 35才
2024.4.11 ―― プロット作成日
💛イラストはAI生成自作画像
【完結】え、別れましょう?
須木 水夏
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」
「は?え?別れましょう?」
何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。
ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?
だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。
※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。
ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる