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トレント×魔王様
3.壮年の紳士
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この地に住むトレントの数は少なく、個体数は僅か30と聞いている。年齢は200歳より下の者はいなく、フィリベルトの魔王歴より長い長寿な者達ばかりだ。
トレントは一個体が巨大なため、同じ種で交尾するのも一苦労。なので大抵は魔王が相手をすることが殆どなのだが、フィリベルトはトレントのモンスタークリエイトは今回が初めてだ。
フィリベルトが魔王になって100年間、トレントのモンスタークリエイトをしなくても問題がなかったのは、トレントの平均寿命が長いことにあった。
トレントの年齢は魔物の中でも長寿で、平均寿命は500年。弱い種でもないので、易々と亡くなったりすることもない。のんびりと森の中で生き、飢餓にも強い生命力がある。
けれどそんな魔物でも、この地のトレントは数が少なく年齢も長寿なものたちばかり。
そろそろ新しい子供を作らねばならなくなったという訳だ。
「今回俺が相手をするのは君でいいのかな?」
言葉を発しない魔物は個別に名前が無いので、フィリベルトは「君」と呼ぶことにした。
どの辺が目なのか分からないので、フィリベルトの背よりも少し上の幹を見つめて首を傾げる。
すると、ゴゴゴ…と巨大な何かが動く気配を感じて視線を更に上へと向ければ、葉を付けた木の上部が前へと傾いていた。枝に止まっていた鳥が数羽、驚いて飛んでいった。
「あ、もしかして…、挨拶してくれてるのかな?結構な体格差だけど、こう見えて俺って頑丈だからさ、しっかりと相手を努めさせて貰うよ」
ニコッと笑ってそう言えば、葉がザワザワと揺れた。どうやら喜んで貰えてるみたいだ。
早速裸に…と、フィリベルトが指をパチンと鳴らそうとしたところで、伸びてきた細い枝がフィリベルトの指に絡んで脱衣を阻止された。
それからもう一本伸びてきた枝に紫と白の花が数本握られていて、フィリベルトに差し出された。
「この花、さっきの…」
先ほど野に咲いていた花で、フィリベルトが綺麗だと思って見ていた花だ。トレントを探して森の中を歩いていた場面をバッチリ見られていたらしい。
手渡された花を受け取ってから、フィリベルトは頬を膨らませてみせた。草を掻き分けて捜し歩いていた姿を一方的に見られていた事が少し恥ずかしい。
「もう。俺の事見てたんなら、さっさと姿を見せてくれたら良かったのに…」
羞恥を拭うように顔を背けてみせれば、伸びてきた枝に頬から首筋をするりと撫でられた。すまない、と言われているような触れ方に、なんだか歳の差を感じてしまった。
頬を撫でた枝が今度はフィリベルトの頭を優しく撫でる。
「ん…、」
撫で方が幼子をよしよしするような感じではなく、拗ねた恋人の機嫌を取るような大人な触れ方だ。後頭部を何本にも分かれた枝が撫で、そのうちの数本がフィリベルトの長い髪を掻き分けて、耳や項を撫でる。愛撫とも取れる触れ方に、フィリベルトの下っ腹がジン…と甘く疼いた。
(あう…♡ やばい…っ、俺もしかして年下の恋人扱いされてる…?花のプレセントといい、触れ方といい…、紳士すぎる…っ。このトレントいったい何歳なんだろ…。擬人化したらダンディな紳士って感じかな? そんなの、嫌いな人絶対いないでしょ…っ)
頭を撫でていた枝が気付けば何本も増え、フィリベルトを優しく抱きしめるように体に巻きついている。
両手の指に細い枝がいくつも巻きついて、勝手に服を脱ぐなと言わんばかりに指を鳴らすのを阻止されている。理由は分からないけれど、相手の希望に沿って、勝手に服は脱がないようにしている。
巨木でゴツゴツしたトレントと比べると、細く可憐と表現するしかないフィリベルトの身体が、体に纏わりつく枝によって持ち上げられた。
持ち上がったフィリベルトの身体は、巨木の幹に抱えられるように横抱きにされた。後頭部と背中と尻を支えられて抱かれる、所謂赤ちゃん抱っこというやつだ。
「…こうしてると、君の体温が高いの、よく分かるね」
いくつもの枝に抱かれたまま、体の側面が幹に触れると、じわりと触れ合った場所からトレントの体温が伝わってくる。頬を幹に寄せれば、意外にもささくれ立っていると思われた表面は滑らかで肌触りが良かった。
スリスリと頬を寄せると、耳を擽っていた枝がフィリベルトの顎の下を擽った。皮膚の薄い部分を撫でられて、ゾワゾワと背が粟立ち、下っ腹がじわりと疼く。モンスタークリエイトの相手と接触したことで、意思とは関係無しに体が交尾のための準備をし始めているようだ。
「…はぁ。 ……ねぇ、もう始めない?俺、我慢できなくなってきちゃった」
顎の下を擽っていた枝をぎゅっと握って、ぺろりと舌で枝を舐めて誘ってみる。
大抵の雄は、フィリベルトの誘惑に興奮して直ぐに襲ってくるのだが、このトレントの反応は少し違っていた。
「ん?え? ちょっと…、何、何?」
細い枝を何本も伸ばして襟や袖口や淫紋を露出させた腹部の隙間から、ズルズルと服の中へと枝を侵入させて、手際良くフィリベルトの服を脱がしにかかった。
ピッタリと肌にフィットした服は脱がしにくいのにも関わらず、トレントはスルスルと脱がせていく。脱がせたトップスとスラックスは丁寧に畳まれ、先ほどトレントに貰った花と一緒に近くの切り株の上に丁寧に置かれた。
服を脱がす時も、肌に触れる力はソフトで優しく、でも性感帯でもある背中や腰や乳首は、厭らしい手付きで枝を伸ばして触れてくる。スラックスを脱がす時も、内腿や下っ腹や臍には触るくせに性器には全く触れてこない焦らしっぷり。
性急な触れ方ではなく、全身の感覚を研ぎ澄まさせるような丁寧な愛撫に、フィリベルトの呼吸は荒く変化していた。
(触ってほしいところには全然触れないくせに、焦らすの上手過ぎ…っ♡ しかも俺の服、魔法使わなかったら脱ぎにくいのに、手際よすぎるし…っ)
トレントの腕に抱かれたフィリベルトは、年上の包容力にドキドキと胸を高鳴らせた。
トレントは一個体が巨大なため、同じ種で交尾するのも一苦労。なので大抵は魔王が相手をすることが殆どなのだが、フィリベルトはトレントのモンスタークリエイトは今回が初めてだ。
フィリベルトが魔王になって100年間、トレントのモンスタークリエイトをしなくても問題がなかったのは、トレントの平均寿命が長いことにあった。
トレントの年齢は魔物の中でも長寿で、平均寿命は500年。弱い種でもないので、易々と亡くなったりすることもない。のんびりと森の中で生き、飢餓にも強い生命力がある。
けれどそんな魔物でも、この地のトレントは数が少なく年齢も長寿なものたちばかり。
そろそろ新しい子供を作らねばならなくなったという訳だ。
「今回俺が相手をするのは君でいいのかな?」
言葉を発しない魔物は個別に名前が無いので、フィリベルトは「君」と呼ぶことにした。
どの辺が目なのか分からないので、フィリベルトの背よりも少し上の幹を見つめて首を傾げる。
すると、ゴゴゴ…と巨大な何かが動く気配を感じて視線を更に上へと向ければ、葉を付けた木の上部が前へと傾いていた。枝に止まっていた鳥が数羽、驚いて飛んでいった。
「あ、もしかして…、挨拶してくれてるのかな?結構な体格差だけど、こう見えて俺って頑丈だからさ、しっかりと相手を努めさせて貰うよ」
ニコッと笑ってそう言えば、葉がザワザワと揺れた。どうやら喜んで貰えてるみたいだ。
早速裸に…と、フィリベルトが指をパチンと鳴らそうとしたところで、伸びてきた細い枝がフィリベルトの指に絡んで脱衣を阻止された。
それからもう一本伸びてきた枝に紫と白の花が数本握られていて、フィリベルトに差し出された。
「この花、さっきの…」
先ほど野に咲いていた花で、フィリベルトが綺麗だと思って見ていた花だ。トレントを探して森の中を歩いていた場面をバッチリ見られていたらしい。
手渡された花を受け取ってから、フィリベルトは頬を膨らませてみせた。草を掻き分けて捜し歩いていた姿を一方的に見られていた事が少し恥ずかしい。
「もう。俺の事見てたんなら、さっさと姿を見せてくれたら良かったのに…」
羞恥を拭うように顔を背けてみせれば、伸びてきた枝に頬から首筋をするりと撫でられた。すまない、と言われているような触れ方に、なんだか歳の差を感じてしまった。
頬を撫でた枝が今度はフィリベルトの頭を優しく撫でる。
「ん…、」
撫で方が幼子をよしよしするような感じではなく、拗ねた恋人の機嫌を取るような大人な触れ方だ。後頭部を何本にも分かれた枝が撫で、そのうちの数本がフィリベルトの長い髪を掻き分けて、耳や項を撫でる。愛撫とも取れる触れ方に、フィリベルトの下っ腹がジン…と甘く疼いた。
(あう…♡ やばい…っ、俺もしかして年下の恋人扱いされてる…?花のプレセントといい、触れ方といい…、紳士すぎる…っ。このトレントいったい何歳なんだろ…。擬人化したらダンディな紳士って感じかな? そんなの、嫌いな人絶対いないでしょ…っ)
頭を撫でていた枝が気付けば何本も増え、フィリベルトを優しく抱きしめるように体に巻きついている。
両手の指に細い枝がいくつも巻きついて、勝手に服を脱ぐなと言わんばかりに指を鳴らすのを阻止されている。理由は分からないけれど、相手の希望に沿って、勝手に服は脱がないようにしている。
巨木でゴツゴツしたトレントと比べると、細く可憐と表現するしかないフィリベルトの身体が、体に纏わりつく枝によって持ち上げられた。
持ち上がったフィリベルトの身体は、巨木の幹に抱えられるように横抱きにされた。後頭部と背中と尻を支えられて抱かれる、所謂赤ちゃん抱っこというやつだ。
「…こうしてると、君の体温が高いの、よく分かるね」
いくつもの枝に抱かれたまま、体の側面が幹に触れると、じわりと触れ合った場所からトレントの体温が伝わってくる。頬を幹に寄せれば、意外にもささくれ立っていると思われた表面は滑らかで肌触りが良かった。
スリスリと頬を寄せると、耳を擽っていた枝がフィリベルトの顎の下を擽った。皮膚の薄い部分を撫でられて、ゾワゾワと背が粟立ち、下っ腹がじわりと疼く。モンスタークリエイトの相手と接触したことで、意思とは関係無しに体が交尾のための準備をし始めているようだ。
「…はぁ。 ……ねぇ、もう始めない?俺、我慢できなくなってきちゃった」
顎の下を擽っていた枝をぎゅっと握って、ぺろりと舌で枝を舐めて誘ってみる。
大抵の雄は、フィリベルトの誘惑に興奮して直ぐに襲ってくるのだが、このトレントの反応は少し違っていた。
「ん?え? ちょっと…、何、何?」
細い枝を何本も伸ばして襟や袖口や淫紋を露出させた腹部の隙間から、ズルズルと服の中へと枝を侵入させて、手際良くフィリベルトの服を脱がしにかかった。
ピッタリと肌にフィットした服は脱がしにくいのにも関わらず、トレントはスルスルと脱がせていく。脱がせたトップスとスラックスは丁寧に畳まれ、先ほどトレントに貰った花と一緒に近くの切り株の上に丁寧に置かれた。
服を脱がす時も、肌に触れる力はソフトで優しく、でも性感帯でもある背中や腰や乳首は、厭らしい手付きで枝を伸ばして触れてくる。スラックスを脱がす時も、内腿や下っ腹や臍には触るくせに性器には全く触れてこない焦らしっぷり。
性急な触れ方ではなく、全身の感覚を研ぎ澄まさせるような丁寧な愛撫に、フィリベルトの呼吸は荒く変化していた。
(触ってほしいところには全然触れないくせに、焦らすの上手過ぎ…っ♡ しかも俺の服、魔法使わなかったら脱ぎにくいのに、手際よすぎるし…っ)
トレントの腕に抱かれたフィリベルトは、年上の包容力にドキドキと胸を高鳴らせた。
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