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30.攻side

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 庵を家まで送る事にした。

 仲の悪い庵の兄がそんな事を言うのが本能的に引っかかった。
 
 庵の兄に対しても流石に警戒しすぎだろうか。
 とにかく触られたくないし触って欲しくない。寧ろ一緒に住むなと、言いたい。


 幼い頃から何に対しても独占欲は人一倍強かった。
 それでいて興味のないものにはとことん興味がない。

 興味のあるものには習い事だろうが何だろうが積極的に長く続けていた。
 両親も快く協力してくれていた。

 問題点とすれば欲しいものはどんな事をしてでも手に入れた。

 どんな事をしてでも。





「何の変哲もない一軒家」


「他人の家を何だと想像してたんだよ?」


 別に、兄弟贔屓の強い両親だから妙な拘りでもあるのかと思っただけだ。
 庵は「····じゃあ」と、家の中に入ろうとドアノブを握ろうとした時····

「庵」

 庵の手を引いて唇を奪った。



「···················」



 まさかこんな所でキスをされるなんて思っていなかったのだろう。
 思考が停止した庵は目を見開いたまま目をぱちくりしていた。


 重ねるだけの軽いキス。



「····んだよ?その顔」

 唇を離せばぽかんとした表情をしていた庵に小さく笑う。

「じゃあな」

 踵を返して元来た道を歩き始める。
 自分の姿が見えなくなるまで庵は固まったままだった。




 庵の家から死角になる角に行き、庵が家の中に入ったのを確認する。

 庵の家の前で暫く待機し、とりあえず見張る。何事もなければいいのだが、もし俺の勘があたるのならすぐにでも乗り込んでやる。


 壁に寄りかかり暫くの間、待機をしていたら········


 案の定、俺の勘は当たってしまったようだった。


 中から揉める声と階段から何かが落ちる音が聞こえた。
 不用心に鍵がかかっていない玄関ドアを開けて土足のまま真っ直ぐ家の中を走る。


「········ぅ゛·····っ」

 階段から落ちたのは庵自身だ。
 
「庵!」

 全身を強く打って動けないみたいだ。
 呻き声が聞こえる。


「誰だ?」

 階段上から誰かの声が聞こえる。

「警察呼ぶぞ」と、上から声が聞こえるから

「庵の同級生だよ!」と、叫んでやった。

「普通、警察の前に救急車だろぅが!!」

 それともなにか?

 お前が突き落としたのかと聞けば「勝手に落ちた」だと。


 それを警察が信用してくれるのか?



「そうそう、弟君が勝手に落ちたんだよ」

 二階奥から別の男が出てきた。ヘラヘラした笑い方が気に触る。

「······ゃま····いい···」
 
 自分で足を踏み外したと庵がゆっくりと起き上がって言う。

「痛ぇ所は?」

「···ぜ···身」

「救急車呼ぶか?」

「ぃや···いぃ···」


 救急車を呼ぶ程ではないと庵は言うが、一度病院で診てもらった方が良いだろう。
 肩に腕を回した時に痛みが走ったのか呻き声を上げる。

「疑ったのに謝りもしないのか?」

 上から庵の兄だろう男が言ってくるが、弟が階段から落ちて何もしない奴に謝る気にもならない。

 ソイツらを睨んだ後に俺は庵を連れて出て行った。
 
 
 









 
 
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