嘘つきな私が貴方に贈らなかった言葉

海林檎

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彼の思い

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 おかしいとは思った。

 何故、貴女が変わってしまったのか。

 いつも優しかった貴女の事を信じられなくて悪評が流れる度に耳を塞ぎたくなった。


 そして今の彼女と出会った。


 彼女が自分の救いに見えた。

 貴女に虐められていると知って彼女を護るよう心に誓い、貴女と婚約破棄をした。

 その時の貴女の顔が頭から離れない。



 もしかして俺と破棄をしたかったのか。



 まるでずっと望んでいたような顔だった。



 彼女と新しく婚約しても貴女の事が何処かで引っかかっていた。


 彼女との出会いからあまりにもトントン拍子に事が進んだからだ。


 この違和感はなんだろう。


 妙な胸騒ぎが三週間続いた。




 そしてその日に彼女の訃報が届いた。




 死因は病死と言うじゃないか。


 一体いつから?
 いつから大病を患っていた?



 心臓の動きが早まり苦しく感じた時に彼女がある手紙を持ってやってきた。


 彼女に当てた貴女の手紙。





 全ての真実を知った時は全てが遅すぎた。





 何であんな態度をとっていたのか、何故彼女と自分を出会わせたのか、何故破棄の時にあんな表情をしていたのか


「どうして共に悩んで泣くことを許してくれなかったのか」


  

 その彼女の本当の優しさは俺にとって残酷なものだった。



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