死に別れた縁と私と異界の繋

海林檎

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「コシが足らん」

 コシが足らんって何だ。
 現在進行形で結は繋の洗髪をしている。
 風呂場で。浴槽に浸かり上縁面に後頭部を預けた繋の髪を。

「せめて前隠してよ!」

 流石に堂々と繋の身体を見れるはずもなく目を瞑りながら洗髪をしている。

「何がそんなに恥ずかしいんだよ」

「恥ずかしいわ!」

「男の身体見るのはじめてじゃないんだろ?」

 初めてでなくても恥ずかしいものは恥ずかしい。

「何で自分が脱いでるわけじゃねぇのに恥ずかしいんだか····ちょ···泡が顔にかかってる!」

 少し黙れとわざと顔面に洗髪用の泡をぶっかける。
 そのまま顔まで洗ってやろうそうしようと結は繋の顔をマッサージする様に洗う。

「····これって髪と顔両方使えるんだっけ?」


 ただの石鹸だから大丈夫だろうと結は自己完結した。

「····ぃいかげんに」


「しろ!」と、繋が結の腕を掴み引っ張る。


「え!?ちょ····」



 ---ドボンと、浴槽の中に落とされた。
 顔を洗って泡を取った繋が「やってくれたな」と、ニヤリと笑う。

「何すんのよ!?」



 ザバリとお湯を被った結が湯船から起き上がり、文句を言うが


「··············」

 繋の身体をモロに見てしまった結の顔は見る見る赤くなった。

「····そんなに見とれてどうした?」

「み····見とれてなんてないわよ!!」

「····じゃあどう思うんだ?」


 どう思うとは?

 上縁面に肘をついてニヤニヤ笑う繋は自分の身体は結が見てきた他の男と比べてどうだと聞いてくる。



「···は?ぇ?···へ···」


「へ?」


「変態!!」


 結の答えに「何でだ!?」と、繋が叫ぶ。
 聞いただけなのに変態呼ばわりされるなんて予想外だった。
 控えめに「恥ずかしいから止めて」くらいは言うだろうと思っていれば「変態」呼ばわり。

 己の雇い主に向かって随分な言い草だ。


言うだけ言って浴槽から出ようとする結はツルりとお約束の如く滑って繋に向かってダイブした。


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