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13話、「ゲーム」
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薬草採取は午後より午前の方が良いという考えがアリスと一致した。
そのため、俺は言語の勉強に戻ることにした……のだが。
「シロー、シロー、これは何ですか?」
「ゲームだよ」
「げーむ」
ゲームを起動してディスプレイに画面が映った途端にアリスが飛んできた。
「俺の元いた世界で流行ってたやつだよ」
俺はダウンロードし、散々プレイしていた、錬金術が題材になっているゲームを起動して、アリスに笑いかける。
よくわからないと言いたげなアリスに、「楽しいやつ」と伝えて、オープニングを眺める。
「この少女、可愛いですね」
「おっ、分かるか? この子はとっても優柔不断なんだが、大事な時には決断できるという二面性があって……」
いかん、思わずオタクトークに入りかけた。それでもアリスは笑顔でなるほど、と言ってくれる。
オタクに優しい陽キャかよ。
そんな訳のわからないツッコミを内心しつつ、タイトル画面で文字を見る。
『つづきから』『はじめから』『せってい』『くれじっと』
『から』が二つ使われてることでよく分かりやすいな。
『はじめから』を選択して、会話文を読む。確かここのセリフは……。
そう思うより先に、ボイスが再生された。そうだ、このゲームはフルボイスだった。
ディスプレイからボイスが再生されたからだろうか、アリスは驚愕の表情をしていた。
「今……誰も居ない所から声が……」
「ゲームだからな」
ゲームだから。そう言う他無かった。だってゲームだから。
「なるほど……?」と疑問と興味を抱いてディスプレイをちょんちょんと触れるいアリスに、こう説明する。
「元々の人間の声を保存して、ええと……録音して、それを再生してるんだよ」
「そんな変なことができるんですか? それに、声を保存……保存しておくアイテムも魔法もこの世界にはないのですよ、……不思議すぎます」
驚きを一周回って呆れたような表情をするアリスを見ながら、アイテムを採取して、釜を使って錬成。
「おおっ、凄い魔法ですね!」
ワクワクとゲームを楽しんでいるらしいアリスが、凄いと言った。そう、凄いと。
「こういうことって出来る人居ないのか?」
純粋な疑問。だが、王すら知らない“レンキンジュツシ”、居ないほうが正しいのだろうが……。
「このような高等な魔法は存在しませんよ、物質そのもの自体を変化させるなんて……できたら研究対象になる可能性が高いです」
研究対象になる可能性が高い。
マジで?
「この技術があればきっとなんでも出来ちゃいますね!」
ああ、確かに何でもできるんだが。
「それと……さっきの『ちょうごう』のところにあった素材、この世界の素材ですね」
「え?」
思わず素っ頓狂な声が出る。
「『活力ハーブ』と『スライムの液体』、どちらもありますから」
「……盲点だった」
アイテムが変わってる可能性には気付かなかった。いつもの通りハーブと水を選んだつもりだったのに。
待てよ? このシステム……。
「この世界のアイテムに、適応してる……?」
そんなご都合主義なことがあってたまるか。
そう思いながらも、ゲームを進める。
「この素材の名前、『うにに』、ありますよ。あと『フェッス』も……」
あいうえお表を見ながらゲームプレイをしていくと、何もかもがこの世界にあるもののようだった。アリスの知識量には頭が上がらない。
待てよ、じゃあ……。
「少し待っててくれ」
「はい」
俺はパソコンを立ち上げて、あることを調べる。
ゲーム名と、攻略法を。
そんなもの調べなくても分かってる、RTA走者一位の俺を舐められては困る。だが。
そこに映し出された素材名は、何もかもが変わっていたんだ。
「マジ……かよ」
じゃあ、このゲームで創り出せるものは俺も創れると? そういうことだな?
……チートじゃねえか。これが所謂、異世界無双ってやつか?
「は、はは……」
思わず笑い声が漏れる。
そんな俺に追い打ちをかけるかのように、ゲームウィンドウのようなものが眼前に表示される。
『錬金術を安全に行う為に、釜を用意しましょう』
……まんまじゃねーか!! 俺は異世界に来たと思ったらゲームの世界に来たとでも言うのか!? いやもう訳わかんねえよ! 確かに俺は錬金術師らしいけどもだ!!
叫びそうになりながらも、アリスの方をちらりと見る。
このウィンドウは俺だけが見えるものらしい。
『釜』という単語のみが、対象リンクを貼り付けたかのように文字の色が変わっている。
恐る恐るそれに触れてみれば――様々な『釜』と金額が表示された。
え、買えってことですか? いやいや、でも前そのまま錬成できたぞ? つか、この世界に釜って存在していいのか? いや、いいのかもしれんが異風すぎないか? しかも、値段が……そこそこする。
一番安くて200ペイ、高くて……桁が分からない。何ペイなんだ。何億兆……いや、無理だろ。
ふと気が付くと、ウィンドウの下に注意書きがされていた。
『価格が高いほど錬成の成功率が上がり、失敗しにくいものになります』
『また、扱える素材が高ければ高いほどに多くなります』
『最高値の釜より優れた釜が欲しい場合は『錬成』してください』
…………ええ……。
釜も錬成って……いや。あのゲームでも確かに釜を錬成していた。できなくはないのだろう。
とりあえず、今はこのウィンドウは放置だ。王から貰った金があると言えど、浪費はすべきじゃない。
きちんと稼いで、その金で買おう。
そう決心して、パソコンを閉じる。
パソコンの日本語化もあと二十何日で消えるんだよな……。
今のうちにしっかりと文字を覚えなければ。
アリスの元へ戻って、言語を教えてもらいながらゲームを進めていくのであった。
そのため、俺は言語の勉強に戻ることにした……のだが。
「シロー、シロー、これは何ですか?」
「ゲームだよ」
「げーむ」
ゲームを起動してディスプレイに画面が映った途端にアリスが飛んできた。
「俺の元いた世界で流行ってたやつだよ」
俺はダウンロードし、散々プレイしていた、錬金術が題材になっているゲームを起動して、アリスに笑いかける。
よくわからないと言いたげなアリスに、「楽しいやつ」と伝えて、オープニングを眺める。
「この少女、可愛いですね」
「おっ、分かるか? この子はとっても優柔不断なんだが、大事な時には決断できるという二面性があって……」
いかん、思わずオタクトークに入りかけた。それでもアリスは笑顔でなるほど、と言ってくれる。
オタクに優しい陽キャかよ。
そんな訳のわからないツッコミを内心しつつ、タイトル画面で文字を見る。
『つづきから』『はじめから』『せってい』『くれじっと』
『から』が二つ使われてることでよく分かりやすいな。
『はじめから』を選択して、会話文を読む。確かここのセリフは……。
そう思うより先に、ボイスが再生された。そうだ、このゲームはフルボイスだった。
ディスプレイからボイスが再生されたからだろうか、アリスは驚愕の表情をしていた。
「今……誰も居ない所から声が……」
「ゲームだからな」
ゲームだから。そう言う他無かった。だってゲームだから。
「なるほど……?」と疑問と興味を抱いてディスプレイをちょんちょんと触れるいアリスに、こう説明する。
「元々の人間の声を保存して、ええと……録音して、それを再生してるんだよ」
「そんな変なことができるんですか? それに、声を保存……保存しておくアイテムも魔法もこの世界にはないのですよ、……不思議すぎます」
驚きを一周回って呆れたような表情をするアリスを見ながら、アイテムを採取して、釜を使って錬成。
「おおっ、凄い魔法ですね!」
ワクワクとゲームを楽しんでいるらしいアリスが、凄いと言った。そう、凄いと。
「こういうことって出来る人居ないのか?」
純粋な疑問。だが、王すら知らない“レンキンジュツシ”、居ないほうが正しいのだろうが……。
「このような高等な魔法は存在しませんよ、物質そのもの自体を変化させるなんて……できたら研究対象になる可能性が高いです」
研究対象になる可能性が高い。
マジで?
「この技術があればきっとなんでも出来ちゃいますね!」
ああ、確かに何でもできるんだが。
「それと……さっきの『ちょうごう』のところにあった素材、この世界の素材ですね」
「え?」
思わず素っ頓狂な声が出る。
「『活力ハーブ』と『スライムの液体』、どちらもありますから」
「……盲点だった」
アイテムが変わってる可能性には気付かなかった。いつもの通りハーブと水を選んだつもりだったのに。
待てよ? このシステム……。
「この世界のアイテムに、適応してる……?」
そんなご都合主義なことがあってたまるか。
そう思いながらも、ゲームを進める。
「この素材の名前、『うにに』、ありますよ。あと『フェッス』も……」
あいうえお表を見ながらゲームプレイをしていくと、何もかもがこの世界にあるもののようだった。アリスの知識量には頭が上がらない。
待てよ、じゃあ……。
「少し待っててくれ」
「はい」
俺はパソコンを立ち上げて、あることを調べる。
ゲーム名と、攻略法を。
そんなもの調べなくても分かってる、RTA走者一位の俺を舐められては困る。だが。
そこに映し出された素材名は、何もかもが変わっていたんだ。
「マジ……かよ」
じゃあ、このゲームで創り出せるものは俺も創れると? そういうことだな?
……チートじゃねえか。これが所謂、異世界無双ってやつか?
「は、はは……」
思わず笑い声が漏れる。
そんな俺に追い打ちをかけるかのように、ゲームウィンドウのようなものが眼前に表示される。
『錬金術を安全に行う為に、釜を用意しましょう』
……まんまじゃねーか!! 俺は異世界に来たと思ったらゲームの世界に来たとでも言うのか!? いやもう訳わかんねえよ! 確かに俺は錬金術師らしいけどもだ!!
叫びそうになりながらも、アリスの方をちらりと見る。
このウィンドウは俺だけが見えるものらしい。
『釜』という単語のみが、対象リンクを貼り付けたかのように文字の色が変わっている。
恐る恐るそれに触れてみれば――様々な『釜』と金額が表示された。
え、買えってことですか? いやいや、でも前そのまま錬成できたぞ? つか、この世界に釜って存在していいのか? いや、いいのかもしれんが異風すぎないか? しかも、値段が……そこそこする。
一番安くて200ペイ、高くて……桁が分からない。何ペイなんだ。何億兆……いや、無理だろ。
ふと気が付くと、ウィンドウの下に注意書きがされていた。
『価格が高いほど錬成の成功率が上がり、失敗しにくいものになります』
『また、扱える素材が高ければ高いほどに多くなります』
『最高値の釜より優れた釜が欲しい場合は『錬成』してください』
…………ええ……。
釜も錬成って……いや。あのゲームでも確かに釜を錬成していた。できなくはないのだろう。
とりあえず、今はこのウィンドウは放置だ。王から貰った金があると言えど、浪費はすべきじゃない。
きちんと稼いで、その金で買おう。
そう決心して、パソコンを閉じる。
パソコンの日本語化もあと二十何日で消えるんだよな……。
今のうちにしっかりと文字を覚えなければ。
アリスの元へ戻って、言語を教えてもらいながらゲームを進めていくのであった。
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