17 / 23
これからのこと
しおりを挟む「そっか、じゃぁこの1年間はほとんど遊びもしないで仕事ばっかりだったんだ」
すごいなぁ。私ならすぐ息が詰まりそう。
『全部じゃないけどな。それに、俺は元々そんなに遊びたいタイプじゃないから』
見た目はチャラそうなのにねw
『なんか言ったか?』
「んん、なにも。」
鋭いw
そうなんだよね。詩乃って意外と真面目っていうか、研究熱心ていうか…
いくらやっても終わらないようなことを平気でやり続けられるタイプっていうか…
なんだろう?研究者タイプっていうのかな?
それを、大学での勉強や仕事として依頼されたもの以外でも1人でやれちゃうんだよな。
これってすごいことだと思う。
少なくとも、私にはあんまり向いてなさそう。
もちろん、サークルでの活動は自分で言い出したことだけど、私の場合は1人でやりきるのは無理だと思う。
だから、サークル活動だって皆支えられてやっとできていると思っているし、私にはそうのやり方の方が合ってるんだと思う。
スタンドプレーかチームプレーかみたいな。
『どうかしたのか?』
詩乃が、急に黙り込んだ私を心配そうにみていた。
「んん、詩乃は、スタンドプレイタイプなんだなと思って。」
『あぁ、対して、さぎりはチームプレイタイプだな』
!!
「すごい!よくわかったね!全く同じこと考えてたの!」
『そうか!以心伝心だな!』
ん?なんだか詩乃の笑顔がちょっと疲れてるみたい。
「詩乃、大丈夫?少し休む?」
『ん?あぁ』
やっぱり、ちょっとボーっとしてるみたい。
『いや、せっかくきてもらってるのに…』
「そんなのいいの。すぐ帰っちゃうわけじゃないし、ずっと寝込むわけでもないでしょ?」
『まぁ、そうか。じゃぁ、30分くらいで起こしてくれるか?』
そう言って布団に入った詩乃は、すぐに寝息を立て始めた。
やっぱり疲れてるんだな。
とは言っても、引越しまでの日もそう遠くないので、私も出来る限りは手伝わなきゃ。
詩乃が眠っているので、起こさないようにキッチンの方に出た。
あまり使用頻度の高くなさそうな食器類を新聞紙に包んで箱に入れていく。
そのあとは、洗面所で私の衣類を整理しながら、カバンに詰めていく。
私が出来ることは、このくらいしかないので、続きは詩乃が起きてからやろう。
まだお昼過ぎなので、詩乃が起きてから作業しても十分に進められるし。
30分だけだし、後はリビングで座っていた。
詩乃を起こすと、ある程度すっきりしたみたいなので安心した。
『悪いな。でも、おかげさまでだいぶすっきりしたよ。』
「んん、スッキリできたならよかった。お昼食べよっか」
大きな欠伸と伸びをした詩乃が、こちらに向き直る。
『うん。そうしよう』
今日は、引越しの荷物を少しでも減らすためにあり合わせで作ったパスタ。
『おぉ、結構いけるな』
「よかった!私、料理は昔から好きだから」
冷蔵庫にあったキャベツとツナ缶をつかったペペロンチーノ。
「ん!ほんとだ!美味しいね!」
我ながらよく出来たなって感じ!
ちょっと才能あるかも??w
なんてねw
2人ともペロッと平らげて、午後は一緒に引越しの準備をした。
この部屋の準備はもちろん、引越し先で使う家具も見に行った。
これも詩乃のすごいところだと思うんだけど、新しい家具も、どんなものを買うかほとんど決まっていて、金銭的にも余裕があるみたいだった。
いくら他より割のいいバイトをしてるからと言って、誰にも頼らずにここまで決めて動けるって、ちょっと他の学生には難しいと思う。
それは、気持ち的にも、金銭的にも。
私は、こんなに自分1人でなんでも決められないし、動けるだけの金銭的余裕もないから。
自立してるなって思う。
詩乃は、部屋の寸法や収納したい資料の大きさから、条件に合う本棚をパッパと決めていく。
私はほんと、ついていくだけ。
『さぎり』
「ん?」
急に呼ばれてびっくりした。
『ここまでは仕事場の家具だからパッと決めたけど、ここからはリビングや洗面所に置く物だから、意見を聞かせてほしんだけど』
え?あぁ
「う、うん、もちろん」
なんか、気を遣わせちゃったかな?
『これについては、後で俺の考えをちゃんと話すけど、必要なものや欲しいものは遠慮なく言ってくれよ』
いや、急にそう言われても…ちょっと頭が追いつかなかった。
結局その場では仕事場の家具だけ決めて、配送の手続きまでしっかり済ませて帰ってきた。
夕飯は、やっぱりあり合わせの食材で作ったチャーハン。
いよいよ引越しが現実のものとして見えてきたなって感じだった。
食べながら、思ったことを言う
「詩乃は、すごいね」
ん?って、詩乃がちょっと首を傾げる
「まだ学生なのに、就職も決まってて、ていうか、既に働き始めてて、その上、自分の判断で済むところも家具も決められるし、躊躇わずに買えるし。ちょっと、他の学生と比べると、頭ひとつ抜けてるっていうか…」
詩乃は優しく微笑む
『ありがとう。でも、俺がここまでの人間になれたのは、周りにいる人たちのおかげだよ。』
そっか、それもそうかもね
『一人暮らしを許してくれた両親も、仕事をくれる先輩たちも、仕事漬けの俺でも誘ってくれる友達も。それに』
「それに?」
『誰よりも、さぎりがいてくれたからだ。』
え?
「いや、私はそんな、むしろ迷惑ばっかりかけちゃって…」
『そんなことはない。』
詩乃は、私が言い終える前に言った。
『俺は、この一年頑張れたのは、さぎりとこうしてまた一緒にいられる未来を信じていたからだ。あそこで別れていたり、無理に付き合っていても、こうはならなかった。だから、距離を置いてた期間も含めて、さぎりには感謝している。』
うるっとしてしまった。
詩乃があまりにまっすぐに私を見るから。
『さぎり。俺は君を愛している。愛せて、よかった』
ずるいよ!そんなの急に!!
『さっきの話だけどな』
ん?どの話だ?
『リビングや洗面の家具は、ほしいものがあったら言ってくれって言う、あれだよ』
あぁ、それか。
「う、うん」
なんだろ?なんかちょっと緊張する。
『これは、プロポーズとは別だから。先に言っておくけど』
はい?今なんて?
『卒業したら、一緒に住もう。結婚を前提に。』
…
……
………
…………
え?
あれ?
今…なんて?
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」
【ヤンデレ鬼ごっこ実況中】
階段
恋愛
ヤンデレ彼氏の鬼ごっこしながら、
屋敷(監禁場所)から脱出しようとする話
_________________________________
【登場人物】
・アオイ
昨日初彼氏ができた。
初デートの後、そのまま監禁される。
面食い。
・ヒナタ
アオイの彼氏。
お金持ちでイケメン。
アオイを自身の屋敷に監禁する。
・カイト
泥棒。
ヒナタの屋敷に盗みに入るが脱出できなくなる。
アオイに協力する。
_________________________________
【あらすじ】
彼氏との初デートを楽しんだアオイ。
彼氏に家まで送ってもらっていると急に眠気に襲われる。
目覚めると知らないベッドに横たわっており、手足を縛られていた。
色々あってヒタナに監禁された事を知り、隙を見て拘束を解いて部屋の外へ出ることに成功する。
だがそこは人里離れた大きな屋敷の最上階だった。
ヒタナから逃げ切るためには、まずこの屋敷から脱出しなければならない。
果たしてアオイはヤンデレから逃げ切ることができるのか!?
_________________________________
7話くらいで終わらせます。
短いです。
途中でR15くらいになるかもしれませんがわからないです。
【完結】忘れてください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。
貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。
夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。
貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。
もういいの。
私は貴方を解放する覚悟を決めた。
貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。
私の事は忘れてください。
※6月26日初回完結
7月12日2回目完結しました。
お読みいただきありがとうございます。
私が死ねば楽になれるのでしょう?~愛妻家の後悔~
希猫 ゆうみ
恋愛
伯爵令嬢オリヴィアは伯爵令息ダーフィトと婚約中。
しかし結婚準備中オリヴィアは熱病に罹り冷酷にも婚約破棄されてしまう。
それを知った幼馴染の伯爵令息リカードがオリヴィアへの愛を伝えるが…
【 ⚠ 】
・前半は夫婦の闘病記です。合わない方は自衛のほどお願いいたします。
・架空の猛毒です。作中の症状は抗生物質の発明以前に猛威を奮った複数の症例を参考にしています。尚、R15はこの為です。
【短編】悪役令嬢と蔑まれた私は史上最高の遺書を書く
とによ
恋愛
婚約破棄され、悪役令嬢と呼ばれ、いじめを受け。
まさに不幸の役満を食らった私――ハンナ・オスカリウスは、自殺することを決意する。
しかし、このままただで死ぬのは嫌だ。なにか私が生きていたという爪痕を残したい。
なら、史上最高に素晴らしい出来の遺書を書いて、自殺してやろう!
そう思った私は全身全霊で遺書を書いて、私の通っている魔法学園へと自殺しに向かった。
しかし、そこで謎の美男子に見つかってしまい、しまいには遺書すら読まれてしまう。
すると彼に
「こんな遺書じゃダメだね」
「こんなものじゃ、誰の記憶にも残らないよ」
と思いっきりダメ出しをされてしまった。
それにショックを受けていると、彼はこう提案してくる。
「君の遺書を最高のものにしてみせる。その代わり、僕の研究を手伝ってほしいんだ」
これは頭のネジが飛んでいる彼について行った結果、彼と共に歴史に名を残してしまう。
そんなお話。
形だけの妻ですので
hana
恋愛
結婚半年で夫のワルツは堂々と不倫をした。
相手は伯爵令嬢のアリアナ。
栗色の長い髪が印象的な、しかし狡猾そうな女性だった。
形だけの妻である私は黙認を強制されるが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる