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「緋色、授業行く前に生協で買い物して良い?」
「うん」
「じゃあ私たちは先行くよー」
「またね」
真琴はすっかり機嫌を直し、こちらに手を振って沙代里と去って行った。
「ねぇ、次サボんない?ノートは私の友達に頼めばいいし」
「うん、いいよ。長い一服?」
それなら私は何か食べるお菓子でも買おうかな。今はなんだか甘い物が食べたい。
「そういうんじゃないけど…なんか疲れたでしょ?」
「ははっまぁね」
「これは私が買うね」
私の持っていたお菓子を奪われた。
「いや、いいよー。私あんまり奢られるの得意じゃないの知ってるでしょ?」
「うん、でも長い一服はするつもりだから。寿命を奪うにしては安いお返しだよ」
彼女は大学からとはいえ、一番の親友だ。昔のことを少し話したこともある。きっと気を使ってくれてるんだろうな。
外の喫煙所に行くと少し人が多かった。3講は取らない人とかサボる人多いからな。
「いやー大変だったね」
「ははっ…いやー疲れましたねー」
潤香はふーっと煙を吐き出した。
「輪っか作って」
「無理。てかさー、今回はさすがにグループ崩壊すると思ったなー」
グループが出来て3年目。潤香と真琴が小さな言い合いをすることはあっても、私と真琴、沙代里が対立しかけたのは初めてだ。
「男を取り合ってならまだわかるけど、仲良くしてて機嫌悪くなられるのかー。大学でもまだあると思わなかったな」
「あるんじゃない?教師とか間に入らない分、余計タチ悪いかもね。まさか沙代里まで機嫌悪くなるとは思わなかったけど」
「やっぱりさー、好きじゃなくても、自分が好かれてるのって嬉しかったんだろうね。それがさ、自分より下の女に好意向けてたら、イラつくんじゃない?」
私も煙草型の砂糖菓子を咥えた。
「自己中かよ!そういうタイプかー。…ま、真琴と仲良いもんね。そういうとこあっても仕方ないか」
「…そうだね。あのさ」
私が話だそうとしたとき、潤香から手で制された。
「ごめん、ちょっと店長から電話来た」
「…どうぞー」
私に手で謝りながらどこかへ行ってしまった。
これは…喫煙所に喫煙しない人がいてもいいのだろうか。キョロキョロして辺りを見回す。とりあえず砂糖菓子を咥え…たところ、隣の人が立ち去り、今好きな先生が現れた。
がっつり目は合っている。口には煙草型の砂糖菓子、友達もいない、喫煙所に1人いる私を見られた。出来る事なら今一瞬でいいから時を止めて頭を抱えて叫びたい。
「大変そうだね」
「え?」
「ごめん、立川さんって知らなくて…聞き耳立ててた」
正直ー。ゴシップ好きですか?でも、今喫煙所に1人でいる私の現状の理由を知ってくれてるのはありがたい。焦って上手に弁解出来る自信なかったし。
「女子のこういう話、引いちゃいません?」
「いや?…俺が学生の時もそういうのあったし。今でもあるんだなぁって思いながら聞いてたよ」
松原先生は煙を輪っかにして吐き出した。
「あ、できるんですね」
「聞いちゃったお詫び」
「本当に、序盤から聞いてましたね」
思わず笑ってしまった。
「第一声が大変だったは気になっちゃうでしょ」
「確かに。…男性でも、好きな人と仲良くしている相手に苛立って、対立とかってあるんですか?」
先生はゆっくり煙草を吸い、煙を吐いた。
「…あるよ。男は…仲良くしてるからっていうよりは、モテ始めたらとかであったね。無口な奴がクールって言われてモテ始めると、急に仲間から外すとか」
「男女も結局変わらないんですね。…私は、下心を持って近づかれるのも、仲良くしてて嫉妬されるのも嫌です。ただ性別関係なく、仲良くなんて、幼稚園までなんですかね」
「どうだろ。今時の幼稚園児はもう付き合ったり、二股かけたりするって言うしね」
「進んでますね…」
幼稚園児でさえ、そんな感じか。…もう男女関係なく、仲良くなんて、無理なんだろうな。
「どこ行ったって、結局愛情、友情だけじゃない。仕事が出来れば、尊敬されることもあるし、嫉妬されることもある。どこかで割り切って、周りに合わせなきゃいけないときもある。人と仲良くするのなんて、難しいことだから、生きてるだけで人間は偉い」
「そこに着地するんですね」
「で、合わせるのにストレスを感じるから、俺は煙草に逃げる」
私に吸っていた煙草を差し出してきたので、受け取ろうとしたが、先生は自分の口へと戻した。
「煙草はオススメしない。喫煙所どんどん無くなるし、ここに授業終わり毎回ダッシュも疲れるし、周りの人の目も厳しいし」
「デメリット多いじゃないですか」
「多いよ。でも、周りの人に合わせる分、煙草で時代の流れに逆らうっていうか…尾崎が校舎の窓割る感じ?んー…いや、信念を曲げない?…いや、そんないいもんでもないな…」
先生は難しい顔で考えている。授業の時はスラスラと何にでも答えられるような、完璧な感じなのに、今は全然良い言葉が出ずに悩んでいる。可愛い。
「あれだ、世間にいつもは合わせてるけど、ここは反抗してやるっていうのを自分の中に持っていることで、ストレスを軽減させることができる」
「ふふっ全然まとまってませんね」
「これは…雨の日に不良が子犬を助けるの逆パターン」
「晴れの日に真面目が猫を置いて行くってことですか?」
先生の反応が見たくて少し冗談を言ってみた。先生は笑って悪戯っ子のような顔をしていた。
「はい、残念、違いまーす。ま、合わせるのはしんどいから息抜きもしっかりしなさいってこと。そして、煙草以外で」
先生はふーっと空に煙を吐いた。
「美味しそうに煙草吸う人に言われても、説得力ないですね」
「ははっ立川さんも言うねぇ」
オフの先生の方が話しやすいな。普段だと完璧過ぎて緊張しちゃうし…。
「何か困ったことあったら言ってね。相談乗るから」
先生はそう言うと煙草を消し手を振って去って行った。
私はずっと先生の後ろ姿を見て手を振っていた。
「うん」
「じゃあ私たちは先行くよー」
「またね」
真琴はすっかり機嫌を直し、こちらに手を振って沙代里と去って行った。
「ねぇ、次サボんない?ノートは私の友達に頼めばいいし」
「うん、いいよ。長い一服?」
それなら私は何か食べるお菓子でも買おうかな。今はなんだか甘い物が食べたい。
「そういうんじゃないけど…なんか疲れたでしょ?」
「ははっまぁね」
「これは私が買うね」
私の持っていたお菓子を奪われた。
「いや、いいよー。私あんまり奢られるの得意じゃないの知ってるでしょ?」
「うん、でも長い一服はするつもりだから。寿命を奪うにしては安いお返しだよ」
彼女は大学からとはいえ、一番の親友だ。昔のことを少し話したこともある。きっと気を使ってくれてるんだろうな。
外の喫煙所に行くと少し人が多かった。3講は取らない人とかサボる人多いからな。
「いやー大変だったね」
「ははっ…いやー疲れましたねー」
潤香はふーっと煙を吐き出した。
「輪っか作って」
「無理。てかさー、今回はさすがにグループ崩壊すると思ったなー」
グループが出来て3年目。潤香と真琴が小さな言い合いをすることはあっても、私と真琴、沙代里が対立しかけたのは初めてだ。
「男を取り合ってならまだわかるけど、仲良くしてて機嫌悪くなられるのかー。大学でもまだあると思わなかったな」
「あるんじゃない?教師とか間に入らない分、余計タチ悪いかもね。まさか沙代里まで機嫌悪くなるとは思わなかったけど」
「やっぱりさー、好きじゃなくても、自分が好かれてるのって嬉しかったんだろうね。それがさ、自分より下の女に好意向けてたら、イラつくんじゃない?」
私も煙草型の砂糖菓子を咥えた。
「自己中かよ!そういうタイプかー。…ま、真琴と仲良いもんね。そういうとこあっても仕方ないか」
「…そうだね。あのさ」
私が話だそうとしたとき、潤香から手で制された。
「ごめん、ちょっと店長から電話来た」
「…どうぞー」
私に手で謝りながらどこかへ行ってしまった。
これは…喫煙所に喫煙しない人がいてもいいのだろうか。キョロキョロして辺りを見回す。とりあえず砂糖菓子を咥え…たところ、隣の人が立ち去り、今好きな先生が現れた。
がっつり目は合っている。口には煙草型の砂糖菓子、友達もいない、喫煙所に1人いる私を見られた。出来る事なら今一瞬でいいから時を止めて頭を抱えて叫びたい。
「大変そうだね」
「え?」
「ごめん、立川さんって知らなくて…聞き耳立ててた」
正直ー。ゴシップ好きですか?でも、今喫煙所に1人でいる私の現状の理由を知ってくれてるのはありがたい。焦って上手に弁解出来る自信なかったし。
「女子のこういう話、引いちゃいません?」
「いや?…俺が学生の時もそういうのあったし。今でもあるんだなぁって思いながら聞いてたよ」
松原先生は煙を輪っかにして吐き出した。
「あ、できるんですね」
「聞いちゃったお詫び」
「本当に、序盤から聞いてましたね」
思わず笑ってしまった。
「第一声が大変だったは気になっちゃうでしょ」
「確かに。…男性でも、好きな人と仲良くしている相手に苛立って、対立とかってあるんですか?」
先生はゆっくり煙草を吸い、煙を吐いた。
「…あるよ。男は…仲良くしてるからっていうよりは、モテ始めたらとかであったね。無口な奴がクールって言われてモテ始めると、急に仲間から外すとか」
「男女も結局変わらないんですね。…私は、下心を持って近づかれるのも、仲良くしてて嫉妬されるのも嫌です。ただ性別関係なく、仲良くなんて、幼稚園までなんですかね」
「どうだろ。今時の幼稚園児はもう付き合ったり、二股かけたりするって言うしね」
「進んでますね…」
幼稚園児でさえ、そんな感じか。…もう男女関係なく、仲良くなんて、無理なんだろうな。
「どこ行ったって、結局愛情、友情だけじゃない。仕事が出来れば、尊敬されることもあるし、嫉妬されることもある。どこかで割り切って、周りに合わせなきゃいけないときもある。人と仲良くするのなんて、難しいことだから、生きてるだけで人間は偉い」
「そこに着地するんですね」
「で、合わせるのにストレスを感じるから、俺は煙草に逃げる」
私に吸っていた煙草を差し出してきたので、受け取ろうとしたが、先生は自分の口へと戻した。
「煙草はオススメしない。喫煙所どんどん無くなるし、ここに授業終わり毎回ダッシュも疲れるし、周りの人の目も厳しいし」
「デメリット多いじゃないですか」
「多いよ。でも、周りの人に合わせる分、煙草で時代の流れに逆らうっていうか…尾崎が校舎の窓割る感じ?んー…いや、信念を曲げない?…いや、そんないいもんでもないな…」
先生は難しい顔で考えている。授業の時はスラスラと何にでも答えられるような、完璧な感じなのに、今は全然良い言葉が出ずに悩んでいる。可愛い。
「あれだ、世間にいつもは合わせてるけど、ここは反抗してやるっていうのを自分の中に持っていることで、ストレスを軽減させることができる」
「ふふっ全然まとまってませんね」
「これは…雨の日に不良が子犬を助けるの逆パターン」
「晴れの日に真面目が猫を置いて行くってことですか?」
先生の反応が見たくて少し冗談を言ってみた。先生は笑って悪戯っ子のような顔をしていた。
「はい、残念、違いまーす。ま、合わせるのはしんどいから息抜きもしっかりしなさいってこと。そして、煙草以外で」
先生はふーっと空に煙を吐いた。
「美味しそうに煙草吸う人に言われても、説得力ないですね」
「ははっ立川さんも言うねぇ」
オフの先生の方が話しやすいな。普段だと完璧過ぎて緊張しちゃうし…。
「何か困ったことあったら言ってね。相談乗るから」
先生はそう言うと煙草を消し手を振って去って行った。
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