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しおりを挟むゼミ4回目。
私は最近先生へのアピールが足りないことに焦っている。だから、今日は少し雰囲気を変えてみようといつもは縛らない髪の毛を三つ編みハーフアップにしてみた。服もそれに合わせて派手過ぎず、可愛すぎないちょっと女子っぽい感じにしてみた。
正直、異性から服や髪型を指摘されるのは好きではない。けど、先生との会話のきっかけに少しでもなってくれるなら…!
教室に行くと、今日は春と寝ている海里がいた。
「おはよ」
「…はよー」
春には悪いが、やはり目当ての先生がいないとテンションはだだ下がりな訳で…。
私は扉のところで彼らを見ると、寝ている海里の隣の通路を開けて隣の隣に春が座っていた。
仲悪いのかな。私は海里のところに授業ノートを置きながら春の方をちらりと見ると少し睨んでいるというか、嫌そうな顔をしていた。
「海里の隣座ればいいじゃん」
「ええ…いや、起きてるときに横に男座ってたらなんか嫌だろ」
「そう?男同士だからこそ座れるイメージあるけど。…じゃあさ、私と春で海里の前と後ろに座ろうよ」
「ははっなんでそんなことすんだよ」
割と本気だったんだけど、春は冗談と思ったようだ。…春ってノリ悪いよな。海里とか天使君なら笑ってやってくれただろうな。
「そういえばさ、結奈ちゃんが春のこと可愛いって言ってたよ」
手伝うのも癪だけど、ここが大人しくくっついてくれれば私に結奈がつっかかってくることもないだろう。
私が春の隣に座りながら言うと、春は難しい顔をしていた。
「…結奈?誰?」
「…フットサルの、一年マネージャー」
「へー。会ったことあるかな」
絶句した。いやでも、これが普通なんだ。史郎が覚えすぎなだけで、男子プレーヤーはかたっぱしから声をかけ、釣れた魚に餌はやらないのだから。
「春が勧誘したって、史郎が言ってたけどね」
「マジ!?えー…どんな子?」
「可愛い系で、ワンピースとか着てた」
「えええー…?」
私は史郎みたいに自分が勧誘した人が入部したら嬉しくて可愛がったけど、春は違うらしい。
その後、笹森君や天使君が来て雑談をしていると先生がやってきた。準備も順調に終わり、今日は先にお菓子も配っている。
「先生ありがとー!」
「貰ったからって帰っちゃ駄目ですよ」
「はーい」
「あ、そうだ。立川さん、この前彼氏さんとファミレスいませんでした?」
「え?」
「はぁ!?」
うるさっ。春が急に叫び出した。そんなに同期に彼氏出来るの嫌か。私が答えないでいると、皆の視線が集まってきた。海里も起きている。
てかなー…ここに先生が居なかったら彼氏持ちって嘘ついて笹森君から逃げれたのに。だけど、私は先生に彼氏持ちと思われるわけにはいかない!
「いや、彼氏じゃなくてただの幼馴染です。全然、声かけて頂いて良かったですよ?」
「あれ、そうなの?この前甘い物巡りしてるときにさ」
「甘い物巡り!?…ですか?」
可愛い。可愛い通り越してきゃわ。何それ何それ。甘い物巡り?言い方がまずきゃわ。ぜひともご一緒させてください。甘い物を美味しそうに食べる先生を見ていたい…!
「うん。2軒目の後に次のお店行く途中、ファミレスでパフェ食べてたの見えたよ。窓側座ってたよね」
「3軒も…」
笹森君が驚いている。
「あーそうだったんですね。私、あそこでバイトしてて!いちごパフェオススメなので今度ぜひ食べに来てください。私いるときなら社割出来ます!」
「え、いいの?…あ!これ…てか見たって発言もセクハラになるのかな?」
「大丈夫です!嫌ってときはちゃんと言うので」
「そお、良かったー」
ニコーっと先生が笑っている。なんて可愛い人なんだ。
「ひーたん、俺も行っていい?」
「嫌です」
「ええ!?なんで?」
「友達に働いてるとこ見られたくないから」
「幼馴染はありなのにー?」
天使君は頬を膨らませている。後で割引券上げとこう。
「そうそう、立川さんの幼馴染君、カッコいい人だったね。僕もオールバックにしようかな…」
先生が前髪を触っている。
「いや、もうあんなの全然、先生の方がかっこいいので!…あ、でも…先生のオールバックも見てみたいです!」
「じゃあ今度朝早く起きられたら頑張ってみるね。立川さんのその髪型も、可愛くて似合ってるよ…あ」
先生がまたセクハラじゃないかと心配になったのか、口を滑らせたって顔をしている。
でも私はめちゃくちゃ嬉しい。女子の髪切ったとかネイルとか彼氏に気づかれたら嬉しい理由がわかった気がする。その人のために可愛くなりたいと頑張ったことを認められる嬉しさ…これか。
「ありがとうございます、嬉しいです!オールバックはぜひ、ゼミのある日にお願いします」
私が笑顔で答えると、先生も笑ってくれた。
私はオールバックのおじさん好きだから、先生のイメチェン楽しみだな。
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