おじ専女子の望まぬモテ期

蛭魔だるま

文字の大きさ
上 下
34 / 41

33

しおりを挟む

 遅い。私のバイト終わり時間は20分前のはずなのだが、交代の人が来なくて延長させられている。

 カラカラーン

「いらっしゃいま…せ。…何名様ですか?」
「あー待ち合わせ時間過ぎても相手が来なくて。1人です」

 私の幼馴染である御影藍お兄ちゃんだ。笑顔ではあるが、確実に怒っている。

「…お席ご案内します」

 藍ちゃんをボックス席に案内した。

「で?」
「いや、すみません。あの、交代のバイトが来なくて…もう少し待ってください。ここ、奢るんで」
「ブラックコーヒーホット」
「すぐお持ちします!」

 私は急いで厨房でコーヒーを用意する。

「立川さん、大丈夫ですか?」

 この人は確かたまに一緒になる後輩の…何君だったかな。

「え、何がですか?」
「ほら、この注文の黒い服の男、目つき悪いし…何か立川さんぺこぺこしてたんで。文句言われたのかなって思って」
「あー見てたんですか」
「あ、すみません。助けに行けず。その、怖かったとかじゃないんですよ、その…ほら、他の注文、受けてるところで…あの」
「大丈夫です、知り合いなんで」
「え、どういう知り合い?」

 なんか凄い絡んでくるな。プライベートなこと関係ないでしょ。

「あ、コーヒー淹れ終わったんで届けに行きますね」
「あ…」

「お待たせしましたー。ホットコーヒーになります」
「…まだか」
「も、もう少しだけ…」

 入口の扉が騒がしく開いた。息を切らした男がそのまま従業員の更衣室へ入っていった。

「あ、あれなんでもういけます」
「あぁ?俺コーヒー頼んじゃったし、お前もなんか飲めば?」
「うん、パフェ頼んどいて」

 交代の人が来たので私も更衣室へ向かった。

「立川さん、すみません!代わりにやってくれてたんですか」
「うん、予定あったけど店長にどうしてもって頼まれたから」

 この人遅刻常習犯なんだよな。こういう人には嫌味をストレートに伝える。

「す、すみませんでした。あの、今度何か奢ります」
「…あ、じゃあ今でもいい?待たせてる知り合いも来てて」

 遠慮もしない。パフェとコーヒーじゃ足りない気もするけど。

「大丈夫です」
「5番テーブルだから。お会計のときお願い」
「はい!」

 遅刻常習犯だけど、まだ奢ってくれるだけマシかな。一応罪悪感はあるっぽいし。

 私は急いで藍ちゃんの元へ行く。席に座っている藍ちゃんを遠目に見ると、全身黒ずくめのツーブロック、目つき悪い…確かに怪しい…怖い系の人に見える気もする。

「おまたせしました」
「遅え」

 知らない人が見ると、幼馴染同士の再会というより、若い借金取りと債務者的な感じかな。藍ちゃん顔はいいけど目つき悪すぎて…。

「いちごパフェとカフェラテお持ちしましたー」

 私たちの間にいちごパフェがあれば少しはマシに見えるかな。

「カフェラテも頼んでくれたんだ」
「いっつも飲んでるだろ。あとお前の金だし」

 口も悪いけど、このオラオラ系と思いきや女子への気づかいができるところ。これがモテるんだろうな。私はツンデレって勝手に言ってるけど。

「遅刻の人が奢ってくれるって」
「今日の飯ここにするか」

 悪い顔して笑ってる。待たされた怒りだろうな。

「嫌だよ。ここご飯美味しくないよ」
「売り上げに貢献しとけよ」
「給料変わらないんで」
「ははっさすがバイト」
「ここさ、調理すると不味いんだよね。だから、機械のコーヒーと、市販のクリーム、いちご、コーンフレークのパフェはセーフ」

 私はいちごを食べた。

「そういや、前に居酒屋でバイトしてたとき、そこソフトドリンク酷かったな」
「不味いってこと?」
「いや、気の抜けた炭酸と炭酸を半々に入れるとか、ジュースは65円のパックのやつをグラスに入れて250円取る。氷はグラスから出るまで入れるから飲み物なんてグラス半分入るか入んないかだし」
「もう居酒屋でソフトドリンク飲むのやめよ」 

 私の嫌そうな顔を見て藍ちゃんは笑っている。

「酒飲んでんだからどうせ頼まねぇだろ」
「飲み放題じゃないときお酒高いし」
「ふーん」

 藍ちゃんも私のパフェを食べ始めた。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄
恋愛
 あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。  奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。  ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。  *BL描写あり  毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。

Sランクの年下旦那様は如何でしょうか?

キミノ
恋愛
 職場と自宅を往復するだけの枯れた生活を送っていた白石亜子(27)は、 帰宅途中に見知らぬイケメンの大谷匠に求婚される。  二日酔いで目覚めた亜子は、記憶の無いまま彼の妻になっていた。  彼は日本でもトップの大企業の御曹司で・・・。  無邪気に笑ったと思えば、大人の色気で翻弄してくる匠。戸惑いながらもお互いを知り、仲を深める日々を過ごしていた。 このまま、私は彼と生きていくんだ。 そう思っていた。 彼の心に住み付いて離れない存在を知るまでは。 「どうしようもなく好きだった人がいたんだ」  報われない想いを隠し切れない背中を見て、私はどうしたらいいの?  代わりでもいい。  それでも一緒にいられるなら。  そう思っていたけれど、そう思っていたかったけれど。  Sランクの年下旦那様に本気で愛されたいの。 ――――――――――――――― ページを捲ってみてください。 貴女の心にズンとくる重い愛を届けます。 【Sランクの男は如何でしょうか?】シリーズの匠編です。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~ その後

菱沼あゆ
恋愛
その後のみんなの日記です。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

処理中です...