一番のクズは…

蛭魔だるま

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私19

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「どうした?」

不審に思った夫が玄関に向かってくる。

「…だ…め…」

「…何をしてるんだ?」

初めて聞く、低く怒気を含めた声だった。

「あれ、おかしいなぁ。いつもなら仕事ですよね?さぼりですか?だめだなぁ」

男は笑っている。

「俺の嫁に何してんだ」

「もう他の男に取られてるんだから、僕にくれたって良くない?」

駄目、言わないで。

「どういうことだ?」

「あなたの奥さん、従兄と浮気してるんですよ。あなたが仕事してる間、この家で」

こんな知らない男にばらされたくなかった。

こんな形で夫に知られたくはなかった。

「…」

夫はただ無言で男を見つめる。

「でも、あなたよりもあの男よりも、僕の方が彼女を愛してるんだ。彼女を幸せにするのは僕だよ」

「お前がどれだけ愛してようが、お前が愛されてないんだから、幸せに出来るわけないだろ」

「はぁあ?」

ニコニコしていた男の顔が一気に歪んだ。

「愛がなくたって幸せにはなれる。でも、お前には愛もないし、一緒にいるメリットもない。幸せになんてなれるわけないんだよ」

「何なんだよお前はぁ!」

男は胸ポケットからナイフを出し、夫に向かって走っていった。

夫はわき腹を刺された。

「いっ…くそっ」

「ああ…」

私はそこで意識をなくした。
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