一番のクズは…

蛭魔だるま

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私14

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病院についた。

やはりまだ会いたくなくて、病室の前で私は扉を見つめていた。

 彼は私の頭をポンポンと叩いた後、先に病室へ入っていった。 彼と母親の話声が聞こえる。 

私は深呼吸をして部屋に入った。 

「遅い」 

私の目にはベッドに入っている元気な母にしか見えない。 

「まあまあ」 

「それよりあんた、働いてんの?妹から、男の子だから大丈夫よって謎の理論しか聞かないけど」 

「いやいやいや、働いてますよ、一応。結婚相談所ならぬ恋人相談所みたいな感じで」 

「出会い系?詐欺っぽいわね」 

「ははは」 

従兄が押されているようにも見えるが、むしろ母の扱いが上手いと思う。母の話は流すのが一番なのだ。 

「元気じゃん」 

「だって、階段から落ちただけだしね」 

私の小さな独り言に誰かが反応した。

声のする方を見ると、カーテンにちょうど隠れて見えなかったが、ベッドの横に弟がいた。 

「いたの」 

「いた」 

こちらを見ずにスマホを見たまま答えてきた。 

「倒れたとでも言わないと来ないでしょ、あんた。てか旦那はどうしたのよ」 

「仕事に決まってるでしょ」 

「義母が倒れたのに?」 

「本当に来てもらわなくて良かったと思ってる。休んでまで来てもらって階段から落ちただけでしたなんて言えないから」 

「で、どうなのよ。結婚生活は?子供は?」 

従兄の眉が少しだけ動いた気がした。 

「結婚生活は普通、子供は作らない」 

「何言ってるの?子供を産まないなんて、おかしいでしょ」

子供を産まない夫婦はおかしいのだろうか。まあ私たち夫婦は元からおかしいのだろうけど。 

「お互い納得して子供を産まないの。良いでしょ別に」 

「お父さんが認めないわよ」 

「…帰る」
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