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私2
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ケーキをお皿に分け彼の前に出した。
「で、最近どう?結婚生活は」
「どうもこうも、特に何もないけど」
先に言っておくがこれは不倫ではない。夫も彼がくることは承知している。だって…。
「俺もさぁお前らを引き合わせた責任とか感じてこうやってちょくちょく様子見に来てるのに、付き合ったときからずっとその答えじゃねぇか」
「だって本当に何もないんだもん」
そう、彼は私たち夫婦の仲人だ。特に好きな人も出来ず恋人もいなかった私に今の夫を紹介したのが彼だ。
夫とは高校からの友達だったらしく、真面目なお前らお似合いじゃね?とか軽いノリで紹介されたのがきっかけだった。
そこからなんやかんやで気づいたら結婚していた。
結婚以来彼は私たちの様子をちょくちょく見に来るのだ。
「むしろそっちこそどうなの?結婚とか」
「いやーいい女がいなくてさー」
看護師、家庭教師、私の先輩、読モ、人妻などなど。色んなジャンル行き過ぎて迷走しているのか、はなから結婚する気がないのか。
私はケーキを1口食べた。その様子を彼はじっと見つめてくる。
「…何?」
「なぁ、やっぱり俺そっちがいい、変えて」
「はい」
私が1口しか食べてないケーキと、彼が半分食べたケーキ。どう考えても理不尽な交換だが、彼はそういう人間だ。昔からわかりきっている。だから特に異を唱えず彼とケーキを交換した。
彼は昔と何も変わらない。私は少し笑いながら紅茶を口にした。
熱い。
どうして私の体に紅茶がかかっているのだろう。どうして私の目には彼と天井が映っているんだろう。どうして私は、彼にキスされているのだろう。
私はただただ呆然と彼を見つめていた。
「お前、俺のことまだ好きだろ」
「何の話?自意識過剰過ぎない?」
「お前は俺の事が昔から好きで、俺の言うことは何でも聞く。お前のそういうとこ好きだぜ」
「嘘つき」
「昔の約束覚えてるか?」
彼は上の服を脱ぎ始めた。
「なんの?」
「お前が俺に結婚してって言ったとき、俺はお前が結婚したら付き合ってやるって言っただろ」
私の服を脱がせに来た。
「待って、違う。だって、どういうこと?」
「お前は頭良いんだしよく考えろよ、お前は俺の一番の理解者だろ?」
私が結婚したら、付き合う。つまり…。
私は驚きの表情で彼を見た。
「まさか…」
人の物じゃなきゃ意味がないってことか。
「俺はお前が結婚するの待ってたんだぜ。ちゃんと相手も用意してやったし、お前は俺の言うことを聞いてあいつと結婚したし。これで、全てうまくいったな」
「違う、私は私の意思で、結婚した」
「お前、俺に恋愛相談してたくせに何言ってんの?」
彼は私を鼻で笑った。
『あの人に告白された』
『マジ⁉良かったじゃん、お前あいつのこと良いって言ってたもんな。お似合いだって』
『…うん』
『じゃあもう結婚するしかねぇよ。ほら、早く電話かけろよ。ほら今だよ今』
私は夫のどこが好きなんだっけ。
「あいつじゃ物足りないだろ。お前が好きなのは俺みたいなクズ男だもんねー?」
首元にキスされた。
「ほら、言って?昔みたいにお兄ちゃん大好きって」
私の初恋の人。昔なら迷わずに言えた言葉だろう。今、私は夫とこの人どちらを好きなんだろう。
私が下を向いていると、顎を強く掴まれ無理やり上を向かされた。
「早く、言え」
「…お兄ちゃん大好き」
彼は満足そうに微笑み私の頭を撫でた。ああ、この表情が一番好きだな。
私は彼の一番の理解者であり、彼は私の一番の理解者であった。
「じゃあまたな」
彼は私の頬にキスを落とし帰っていった。
私はしばらくぼうっと宙を見ていたが、夕飯作りのために重たい腰をあげた。
彼がそのまま居座り、一緒にご飯を食べるとか言い出さない程度の常識を持っていたことには感謝した。
「で、最近どう?結婚生活は」
「どうもこうも、特に何もないけど」
先に言っておくがこれは不倫ではない。夫も彼がくることは承知している。だって…。
「俺もさぁお前らを引き合わせた責任とか感じてこうやってちょくちょく様子見に来てるのに、付き合ったときからずっとその答えじゃねぇか」
「だって本当に何もないんだもん」
そう、彼は私たち夫婦の仲人だ。特に好きな人も出来ず恋人もいなかった私に今の夫を紹介したのが彼だ。
夫とは高校からの友達だったらしく、真面目なお前らお似合いじゃね?とか軽いノリで紹介されたのがきっかけだった。
そこからなんやかんやで気づいたら結婚していた。
結婚以来彼は私たちの様子をちょくちょく見に来るのだ。
「むしろそっちこそどうなの?結婚とか」
「いやーいい女がいなくてさー」
看護師、家庭教師、私の先輩、読モ、人妻などなど。色んなジャンル行き過ぎて迷走しているのか、はなから結婚する気がないのか。
私はケーキを1口食べた。その様子を彼はじっと見つめてくる。
「…何?」
「なぁ、やっぱり俺そっちがいい、変えて」
「はい」
私が1口しか食べてないケーキと、彼が半分食べたケーキ。どう考えても理不尽な交換だが、彼はそういう人間だ。昔からわかりきっている。だから特に異を唱えず彼とケーキを交換した。
彼は昔と何も変わらない。私は少し笑いながら紅茶を口にした。
熱い。
どうして私の体に紅茶がかかっているのだろう。どうして私の目には彼と天井が映っているんだろう。どうして私は、彼にキスされているのだろう。
私はただただ呆然と彼を見つめていた。
「お前、俺のことまだ好きだろ」
「何の話?自意識過剰過ぎない?」
「お前は俺の事が昔から好きで、俺の言うことは何でも聞く。お前のそういうとこ好きだぜ」
「嘘つき」
「昔の約束覚えてるか?」
彼は上の服を脱ぎ始めた。
「なんの?」
「お前が俺に結婚してって言ったとき、俺はお前が結婚したら付き合ってやるって言っただろ」
私の服を脱がせに来た。
「待って、違う。だって、どういうこと?」
「お前は頭良いんだしよく考えろよ、お前は俺の一番の理解者だろ?」
私が結婚したら、付き合う。つまり…。
私は驚きの表情で彼を見た。
「まさか…」
人の物じゃなきゃ意味がないってことか。
「俺はお前が結婚するの待ってたんだぜ。ちゃんと相手も用意してやったし、お前は俺の言うことを聞いてあいつと結婚したし。これで、全てうまくいったな」
「違う、私は私の意思で、結婚した」
「お前、俺に恋愛相談してたくせに何言ってんの?」
彼は私を鼻で笑った。
『あの人に告白された』
『マジ⁉良かったじゃん、お前あいつのこと良いって言ってたもんな。お似合いだって』
『…うん』
『じゃあもう結婚するしかねぇよ。ほら、早く電話かけろよ。ほら今だよ今』
私は夫のどこが好きなんだっけ。
「あいつじゃ物足りないだろ。お前が好きなのは俺みたいなクズ男だもんねー?」
首元にキスされた。
「ほら、言って?昔みたいにお兄ちゃん大好きって」
私の初恋の人。昔なら迷わずに言えた言葉だろう。今、私は夫とこの人どちらを好きなんだろう。
私が下を向いていると、顎を強く掴まれ無理やり上を向かされた。
「早く、言え」
「…お兄ちゃん大好き」
彼は満足そうに微笑み私の頭を撫でた。ああ、この表情が一番好きだな。
私は彼の一番の理解者であり、彼は私の一番の理解者であった。
「じゃあまたな」
彼は私の頬にキスを落とし帰っていった。
私はしばらくぼうっと宙を見ていたが、夕飯作りのために重たい腰をあげた。
彼がそのまま居座り、一緒にご飯を食べるとか言い出さない程度の常識を持っていたことには感謝した。
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