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6月19日(水)公園
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21時5分前に、淳子がいつものベンチまでやってきた。
両手を後ろで組み、左右にひょこひょこと愛嬌たっぷりに歩く。顔に張り付いた、いつもと変わらない笑顔が少し心を不安にさせる。
「よっす」
「おいっす」
「風邪って聞いたけど、大丈夫なん?」
「いや、あれ実は仮病!今日はちょっとこれに集中してみたかったのだよ!」
そう言って後ろから「ジャーン!」と広げたのは、一枚の絵だった。
公園の外灯に照らされた画用紙の中心に、少し細身の真っ赤なブドウが描かれている。
その周りが様々なグラデーションの赤で彩られ、あまりの力作ぶりに、つい言葉を忘れて見入ってしまった。
「どう、コレ?」
「あ、あー、今回は赤一色なんだな」
いつも通り、色の話でごまかそうとした。絵のテクニック的なことも知らないし、自分の感性で感想を言うのも怖い。
「そう、赤だけなんだ。今回は」
そう言って再び絵を素早く丸め、淳子はそのまま僕へと差し出した。
「これは今回はプレゼント決定です!大事に持っておくように!」
いつも完成した絵はここで僕に披露した後、淳子の独断で「捨てる」か「あげる」の判断が下される。
判断基準も不明で、だいたいが「捨てる」になってしまうのだが、今回無事に生き残った作品は「あげる」の記念すべき通算10枚目となった。
「サンキュ。お袋に渡しておくわ」
「オッケー!っていうか、いつも雅哉にあげてるわけじゃないしね」
「はいはいあんがと」
花屋で働いていたからか、お袋は淳子の描く絵が好きなようで家に持って帰ったらすぐに渡すようにしている。
本当は自分の部屋に貼りたいのだが、お袋はなぜか仏壇のある部屋に綺麗に貼って飾っていた。
もらった絵を右手から左手に持ち変えながら、いつ話していいかもわからない、ずっと考えてた話を切り出す事にした。
「あのさ、学校で今お前の噂すげーじゃん。ある事ない事」
慎重に話さなくてはいけないのに、こんな話し方になる自分に腹がたつ。
「あー、全然気にしてないよ!全然平気」
そう言っていつもと変わらないテンションで淳子は続けた。
「私、あの時の事正直全然覚えてないし、噂されてもピンとこないんだよね。私に話しかけてくる人はだいぶ減ったけど、私が必要ないって人は、逆に困ってないって事だから素晴らしい事じゃんね!」
そう言って笑う淳子は、本当にいつも通りだった。
「それに文化祭の準備もいっぱい頼まれてるし、まだまだお役に立ちますよ!」
それなら今日ずる休みするなよ。と思ったが言うのはやめた。
「そっか、お前がいいならいいんだけどな。じゃあ、文化祭終わって暇になったら絵でも描いてみたら。ゆっくりとさ」
「ほいほい。了解」
いつものように軽い調子が、僕の心をだんだん軽くさせる。
「あのさ、前に由美が『18歳になる前に死にたい!17歳が最強なのに!』って言ってだんだけど、そんなの私、全然理解できないんだよね」
いきなり何を話し始めるのかと思ったが、登場人物もわかる事だし黙って聞く事にした。
「私は絶対18歳になってやる!生き延びてやる!そしてみんなのために!役に立つ人間になるのだ!」
やはり、こいつは気でも触れたのかもしれないと不安になったが、それもつかの間、淳子は立ち上がり駆け出し始めた。
「それじゃ!明日また学校で!」
「おう、おつかれ~」
そう言って僕も仕方なく帰ろうとすると、背後から「あ!」と声がした。
「その絵ね、タイトルは『私の人生』だよ」
その声に振り向いてはみたが、時すでに遅く、淳子は後ろを向いて走り出していた。
両手を後ろで組み、左右にひょこひょこと愛嬌たっぷりに歩く。顔に張り付いた、いつもと変わらない笑顔が少し心を不安にさせる。
「よっす」
「おいっす」
「風邪って聞いたけど、大丈夫なん?」
「いや、あれ実は仮病!今日はちょっとこれに集中してみたかったのだよ!」
そう言って後ろから「ジャーン!」と広げたのは、一枚の絵だった。
公園の外灯に照らされた画用紙の中心に、少し細身の真っ赤なブドウが描かれている。
その周りが様々なグラデーションの赤で彩られ、あまりの力作ぶりに、つい言葉を忘れて見入ってしまった。
「どう、コレ?」
「あ、あー、今回は赤一色なんだな」
いつも通り、色の話でごまかそうとした。絵のテクニック的なことも知らないし、自分の感性で感想を言うのも怖い。
「そう、赤だけなんだ。今回は」
そう言って再び絵を素早く丸め、淳子はそのまま僕へと差し出した。
「これは今回はプレゼント決定です!大事に持っておくように!」
いつも完成した絵はここで僕に披露した後、淳子の独断で「捨てる」か「あげる」の判断が下される。
判断基準も不明で、だいたいが「捨てる」になってしまうのだが、今回無事に生き残った作品は「あげる」の記念すべき通算10枚目となった。
「サンキュ。お袋に渡しておくわ」
「オッケー!っていうか、いつも雅哉にあげてるわけじゃないしね」
「はいはいあんがと」
花屋で働いていたからか、お袋は淳子の描く絵が好きなようで家に持って帰ったらすぐに渡すようにしている。
本当は自分の部屋に貼りたいのだが、お袋はなぜか仏壇のある部屋に綺麗に貼って飾っていた。
もらった絵を右手から左手に持ち変えながら、いつ話していいかもわからない、ずっと考えてた話を切り出す事にした。
「あのさ、学校で今お前の噂すげーじゃん。ある事ない事」
慎重に話さなくてはいけないのに、こんな話し方になる自分に腹がたつ。
「あー、全然気にしてないよ!全然平気」
そう言っていつもと変わらないテンションで淳子は続けた。
「私、あの時の事正直全然覚えてないし、噂されてもピンとこないんだよね。私に話しかけてくる人はだいぶ減ったけど、私が必要ないって人は、逆に困ってないって事だから素晴らしい事じゃんね!」
そう言って笑う淳子は、本当にいつも通りだった。
「それに文化祭の準備もいっぱい頼まれてるし、まだまだお役に立ちますよ!」
それなら今日ずる休みするなよ。と思ったが言うのはやめた。
「そっか、お前がいいならいいんだけどな。じゃあ、文化祭終わって暇になったら絵でも描いてみたら。ゆっくりとさ」
「ほいほい。了解」
いつものように軽い調子が、僕の心をだんだん軽くさせる。
「あのさ、前に由美が『18歳になる前に死にたい!17歳が最強なのに!』って言ってだんだけど、そんなの私、全然理解できないんだよね」
いきなり何を話し始めるのかと思ったが、登場人物もわかる事だし黙って聞く事にした。
「私は絶対18歳になってやる!生き延びてやる!そしてみんなのために!役に立つ人間になるのだ!」
やはり、こいつは気でも触れたのかもしれないと不安になったが、それもつかの間、淳子は立ち上がり駆け出し始めた。
「それじゃ!明日また学校で!」
「おう、おつかれ~」
そう言って僕も仕方なく帰ろうとすると、背後から「あ!」と声がした。
「その絵ね、タイトルは『私の人生』だよ」
その声に振り向いてはみたが、時すでに遅く、淳子は後ろを向いて走り出していた。
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