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裏花言葉
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「この前教わったアニメ、アマプラで観たんだけどあれスッゲーオープニング凝ってるのな!」
断崖絶壁90度の寝癖をつけた佐々木が、前の席から意気揚々と話しかけてくる。
「知ってた?!あれさ!オープニングで黄色い百合がすっげぇ出てくるんだけど、その花言葉が【偽り】と【陽気】なんだって!ただのギャグアニメじゃなくて、こう言う所がエモくていいよな!」
朝一番の会話が大声でこんなのから始まる度に、僕のクラスでの立ち位置は確固たるものになっていく。が、その辺を気にするのはもうやめた。
「へー、それは知らんかった。わざわざ調べたん?」
自分の席に座りながら、脊髄反射的に聞き返す。
「いや!まとめサイトでたまたま見た!」
知ったかぶらないのが佐々木の美徳だ。嫌いじゃない。
「それでさ!ついでに見つけたんだけど『ホントは怖い花言葉5選』って言うのがカッコよくてさ!」
昨日は『神話や伝承に登場する最強の武器7選』だったので、二個減った今日の朝の定例報告は少し早めに終わりそうだ。
「まずアザミ!裏花言葉は【報復】!」
花言葉に裏表があったとは初耳だが、一切触れずに自分のスマホでも「花言葉 怖い」で検索をかけてみた。
「ロベリアは【悪意】で黄色いカーネーションは【軽蔑】!いやーこれ今度なんかに使いたいなー!」
いったいお前が花言葉を何に使うというのか。それよりもその寝癖に水でもかけたらどうだと思ってるうちに、件のページを見つけることができた。
「キブシは【嘘】で、なんとマリーゴールドが【嫉妬】【絶望】【悲しみ】!これ激アツじゃね!?」
「へー、佐々木くんって物知りさんなんだ」
いつの間にかに後ろにいた淳子の言葉に、佐々木はまるで静電気に打たれたかの様に背筋を伸ばし振り向いた。
「い、いや!まとめサイトで見ただけでして!ちょっと待ってね!」
知ったかぶりをしないのが彼の美徳だ。嫌いじゃない。
佐々木は右手でiPhoneを、左手で寝癖を大急ぎでスクロールさせ目的のページを探し始めた。
どうやら寝癖がついていたのも、それがあまりカッコいいものではない事も知っていたらしい。
頭を左に傾け、両手でせわしなく動く姿はシルエットだけ見るとDJみたいだが、友人としては筆舌に尽くしがたい哀愁を感じる。
「ほら!コレ!このページ!」
ページの表示されたiPhoneを受け取った淳子が割れた画面の奥を眺めている間も、佐々木は断崖絶壁を左手で必死に均そうとしていた。
「へぇ、マリーゴールドの花言葉って【変わらない愛】だけじゃないんだ。知らなかった!」
佐々木は照れた様に笑った。いや、別にお前は褒められていない。お前は別に【変わらない愛】でも何でもない。
DJ佐々木の後頭部にパンチでも入れようとしたその時、ちょうど始業のチャイムが鳴り響いた。
「あ、これごめん。もう落とさないようにね!それと、その寝癖はズルいよ」
そう小声で囁き笑いながら、淳子は蜘蛛の巣が張ったようなiPhoneを丁寧に手渡し、自分の席に戻っていった。
DJ佐々木は「っんん!」というイエスなのかビックリなのか、どちらの意味にも取れそうな返事をしてiPhoneをすぐにポケットにしまいこんだ。
そしてまた寝癖を二、三回撫でた後、こちらを振りむき、僕の目を見ずに恥ずかしそうに言った。
「大竹、佐伯さんはひょっとして、俺のことが好きという可能性が微レ存?」
いつの時代のネットスラングだと思いつつ、使い方があってるのかもわからない言葉と紅潮した頬が何となくムカついたので、僕はDJ寝癖に肩パンを入れてやった。
拳がめり込むと同時に「なぜっ!?」と佐々木は小さく叫んだ。
断崖絶壁90度の寝癖をつけた佐々木が、前の席から意気揚々と話しかけてくる。
「知ってた?!あれさ!オープニングで黄色い百合がすっげぇ出てくるんだけど、その花言葉が【偽り】と【陽気】なんだって!ただのギャグアニメじゃなくて、こう言う所がエモくていいよな!」
朝一番の会話が大声でこんなのから始まる度に、僕のクラスでの立ち位置は確固たるものになっていく。が、その辺を気にするのはもうやめた。
「へー、それは知らんかった。わざわざ調べたん?」
自分の席に座りながら、脊髄反射的に聞き返す。
「いや!まとめサイトでたまたま見た!」
知ったかぶらないのが佐々木の美徳だ。嫌いじゃない。
「それでさ!ついでに見つけたんだけど『ホントは怖い花言葉5選』って言うのがカッコよくてさ!」
昨日は『神話や伝承に登場する最強の武器7選』だったので、二個減った今日の朝の定例報告は少し早めに終わりそうだ。
「まずアザミ!裏花言葉は【報復】!」
花言葉に裏表があったとは初耳だが、一切触れずに自分のスマホでも「花言葉 怖い」で検索をかけてみた。
「ロベリアは【悪意】で黄色いカーネーションは【軽蔑】!いやーこれ今度なんかに使いたいなー!」
いったいお前が花言葉を何に使うというのか。それよりもその寝癖に水でもかけたらどうだと思ってるうちに、件のページを見つけることができた。
「キブシは【嘘】で、なんとマリーゴールドが【嫉妬】【絶望】【悲しみ】!これ激アツじゃね!?」
「へー、佐々木くんって物知りさんなんだ」
いつの間にかに後ろにいた淳子の言葉に、佐々木はまるで静電気に打たれたかの様に背筋を伸ばし振り向いた。
「い、いや!まとめサイトで見ただけでして!ちょっと待ってね!」
知ったかぶりをしないのが彼の美徳だ。嫌いじゃない。
佐々木は右手でiPhoneを、左手で寝癖を大急ぎでスクロールさせ目的のページを探し始めた。
どうやら寝癖がついていたのも、それがあまりカッコいいものではない事も知っていたらしい。
頭を左に傾け、両手でせわしなく動く姿はシルエットだけ見るとDJみたいだが、友人としては筆舌に尽くしがたい哀愁を感じる。
「ほら!コレ!このページ!」
ページの表示されたiPhoneを受け取った淳子が割れた画面の奥を眺めている間も、佐々木は断崖絶壁を左手で必死に均そうとしていた。
「へぇ、マリーゴールドの花言葉って【変わらない愛】だけじゃないんだ。知らなかった!」
佐々木は照れた様に笑った。いや、別にお前は褒められていない。お前は別に【変わらない愛】でも何でもない。
DJ佐々木の後頭部にパンチでも入れようとしたその時、ちょうど始業のチャイムが鳴り響いた。
「あ、これごめん。もう落とさないようにね!それと、その寝癖はズルいよ」
そう小声で囁き笑いながら、淳子は蜘蛛の巣が張ったようなiPhoneを丁寧に手渡し、自分の席に戻っていった。
DJ佐々木は「っんん!」というイエスなのかビックリなのか、どちらの意味にも取れそうな返事をしてiPhoneをすぐにポケットにしまいこんだ。
そしてまた寝癖を二、三回撫でた後、こちらを振りむき、僕の目を見ずに恥ずかしそうに言った。
「大竹、佐伯さんはひょっとして、俺のことが好きという可能性が微レ存?」
いつの時代のネットスラングだと思いつつ、使い方があってるのかもわからない言葉と紅潮した頬が何となくムカついたので、僕はDJ寝癖に肩パンを入れてやった。
拳がめり込むと同時に「なぜっ!?」と佐々木は小さく叫んだ。
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