むしょうのあい

池 尚穂

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6話「学校生活」

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 よっちゃんは台所で夕食の用意をし、私はそれを手伝いながら
 「サッチャン、野菜はこういう風に切ると味がしみ込んで美味しンだよ」
 「へェーそうなんだー」
 「サッチャン、学校はどうだった?」
 「楽しかったよ。今日ね、漢字の書き取りテストで100点だったよ」

 よっちゃんは私の頭を優しくなでながら
 「すごいね、サッチャン頭いいね」
 「そうでもないよ。アッ、漢字って意味があるんだって。後で教えるね」
 「そうなんだ。じゃあ、あとで教えて」

 私は学校で教えてもらった事を、よっちゃんに教えるのが日課になっていて、お陰で勉強の点数は良かった。
 よっちゃんは漢字以外の物覚えや理解は早いが、どうしても漢字が解らず、私たちは毎日のように漢字の練習を続けた。
 「よっちゃん、”漢字”って思わないで模様だと思えばいいンだよ」
 「”人”ってほら人が立っているみたいでしょ」
 絵を描いて見せると
 「ほんとだ!そうだね。分かった!サッチャンは教え方上手だね。先生みたいだ」
 私はこの時間も楽しい。『”幸せ”ってこうなんだろうな』と思った。

 それでも役所や学校のお知らせなどの書類は難しいらしく、よっちゃんに説明し、私が書き、初子さんに見てもらった後、提出していた。

 よっちゃんに買ってもらった”宝物”の辞書をみながら
 「これがフケイ(父兄)でこれは・・サンカン(参観)、お父さん、お母さんが勉強見に来る日?なんでフケイ(父兄)なんだろう?
 今度の日曜日父兄参観だって。でも、忙しかったらいいよ」
 「いや、行くよ。でも、私なんかが行って大丈夫?サッチャンがバカにされない?」
 「バカになんてされないよ!よっちゃんをバカにしたらぶっ飛ばす!!」
 「乱暴は駄目!」
 「冗談だよ。よっちゃんすぐ信じるんだから『でも、本心だけどね』」

 でも、私たちに何か言ってくる者やいじめる者なんていない。
 よっちゃんの元に来てから、よっちゃんが私を守ってくれるのと同時に私もよっちゃんを守っていたから、何か言われたら言い返す、役所で頑張ってくれたみたいに私も諦めずに相手が折れるまで しつこく言い返す。
 
 それによっちゃんだけではなく初子さんも一緒だったし、
 最初の運動会では所長や区長さんの家族、職場のよっちゃんの友達、初子さんの友達、ご近所・・・たくさん集まって、大騒ぎして、『面白かった』 
 みんな よっちゃんや私の事を思ってくれる。
  
 あの虐待の地獄が噓のようで、自信もついたし、強くなった。そうしたら私らをいじめる者はいなくなった。

 ただ、校長先生からは
 「参加の人はもっと減らして!騒いじゃダメ」 
 と𠮟られた。
 よっちゃんは父兄参観や運動会、学校の行事は必ず見に来てくれた。
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