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40話

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 ◇◇◇

 その日から司祭様は、必ず出席しなければならない行事ごとのとき以外は私室に籠り、昼夜を問わず僕を犯した。
 あの空白の七日間で僕への情欲がより濃くなった気がする。それは僕にとっても都合が良かった。僕の体に夢中にさせておけば、アリスと彼女の息子が悲惨な結末を迎えずにすむのだから。

 僕は司祭様の私室に監禁状態になっていた。一歩も外に出してもらえず、アコライトとしての仕事もさせてもらえない。それなのになぜか祭服を着せられているのが滑稽だ。

 基本的に朝と昼は、司祭様が信頼している使用人の監視の元、寝室という狭い範囲内でだが自由に過ごすことを許されている。夜になると、あのときと同じように、ベッドの上で拘束されるが。

 しかしこの日は例外だった。朝僕を犯したあと、司祭様は使用人に僕を拘束するよう命じた。

「司祭様、その前に用を足したいのですが……」

 僕がそう言うと、司祭様はねっとりとした笑みを浮かべた。そしてすぐ使用人に視線を戻す。

「用を足させず、拘束しなさい」
「えっ……」
「では、ミサに行ってくる」
「し、司祭様……!」

 司祭様は振り返ることなくドアを閉めた。


 司祭様が戻って来たのはそれから一時間後のことだった。全裸で拘束された、みっともない姿で尿意を我慢している僕を見下ろし、司祭様は鼻息を荒くした。

「おお。ナストは良い子だ。ちゃんと我慢できたんだね」

 脚を閉じることもできず――むしろこれ以上ないほど開脚させられて、尿意を我慢するのは極めて困難だった。
 戻って来た司祭様を見て、安堵してその場で放尿しそうになってしまった。僕は最後の力を振り絞り、今にも破裂しそうな膀胱を閉じた。

「ふ……はっ……し、司祭様っ……もう……っ、限界です……っ」
「そうか。だが、もう少し我慢なさい」
「できませんっ……。お願いします……っ。拘束を解いてください……っ」

 司祭様はただ首を横に振るだけだ。僕の股間がよく見えるよう、僕の両脚の間にうつ伏せになった。今か今かと、僕が放尿するのを待っているかのようだ。
 それからも僕はしばらく耐えたが、とうとう限界が来てしまった。

「司祭様っ……! 本当にもう我慢できません……! 拘束を外して……っ」
「……」
「おね、が――……あぁ……あぁぁぁ……」

 少量の尿が出た。はじめは膀胱を締め付けようと踏ん張ったが、一度出てしまえば止めることはできない。諦めた瞬間、溜め込んでいた尿が勢いよく放物線を描いた。

「あぁぁ……」

 尿が、股間の間近くにあった司祭様の顔にかかった。それでも司祭様は一歩も動かず、放尿が終わるまで僕のペニスを凝視していた。

「いけない子だ、ナスト」

 いきり立ったペニスを肛門に押し付けて、司祭様は言った。

「我慢しなさいと言ったのに。君はまた言いつけを破った」
「ご……ごめんなさい……」
「お仕置きだ。聞き分けのない体には、しっかりと分からせないとな!!」
「あぅぅぅっ……!!」

 最近の司祭様は、僕を存分に犯せるよう滋養強壮剤を飲んでいる。そのせいで、僕を一日中犯したあとでも、恐ろしいほど短時間で勃起する。

「おっ、おほっ、おほっ、ナストッ、お漏らしをするなんてっ!! その歳で恥ずかしくないのか!!」
「うぅぅっ、あぁっ、うぅ~……っ」

 確かに恥ずかしいことだ。だが、僕はこの国の大公に放尿を浴びせるという、この上ない醜態を経験している。司祭様の顔面に尿をかけ、司祭様に罵られようとも、あのときに比べるとあまり精神的な苦痛はなかった。

 想像より薄い反応だったのが気に食わなかったのか、司祭様はチェストから注射器を取り出した。
 僕はそれを見て顔を青くする。

「ひっ……」
「ナストッ……! 久しぶりにこれをするぞっ……! また雌猫のような淫らなお前を見せておくれ……!!」
「司祭様お願いします!! それだけはやめてくださ――うっ……!」

 それからの僕は悲惨なものだった。理性なんてものはすぐさま失った。媚薬を打たれた体はほどなくして快感と精液を求め、甲高い嬌声で司祭様に甘えた。ペニスはカウパーまたは精液を絶え間なく吐き出し、肛門は司祭様の精液が入り混じった愛液を滴らせる。
 そんな僕に、司祭様は涎を垂らしながら腰を振った。

「おぉぉっ!! おっ、おんっ、おんっ、ナストッ!! 知っているか!! この媚薬は異国のヒト族のフェロモンから作られているんだがなぁぁっ!! おっ、あぁっ、気持ちいいっ、気持ちいいっ、そのヒト族のオスはっ、オスでも子を孕むことができるんだッ……!! あぁぁっ、おっ、んあっ」
「あぁぁっ!!♡ あっ、きもちっ、そこっ、そこもっとっ、あぁぁっ、あっ、あっ♡」
「お前も孕めナストォォォ!! わしのっ、わしの精子でっ、おっ、おぉぉっ、孕ませてやるっ!! んおぉぉっ、ナストッ!! わしのっ、わしのナストのケツマンコッ、あっ、きもちっ、んっ、あぁっ!!」

 司祭様が大量の精液を僕の中にまき散らしたと同時に、司祭様の首に剣が突き付けられた。

「そこまでだ」

 背後から声がして、司祭様は振り返った。

「ひっ!? だ、誰だ貴様!! ナストとの儀式を阻む不届き者め!! その剣をしまいなさい!!」
「……?」

 僕も朦朧としている視界で声の元を辿った。そして安堵のあまり泣き出してしまった。

「私か? ふむ。名乗らねば分からんか。私はフィリッツ大公が息子、フラスト・フォン・フィリッツ」

 彼の名を聞き、司祭様は目を見開いた。さーっと顔から血の気が引き、冷や汗を流す。

「フィリッツ大公家の……フラスト様……ですと……」
「熱い情事の最中に申し訳ない。ちとあなたに話がありましてね」

 司祭様の目玉がせわしなく動いた。それをすかさず察知したフラスト様は、余裕たっぷりに肩をすくめた。

「おっと。逃げ場所なんぞ探しても無駄です。教会はすでに全方面包囲済みですから」
「なっ……。そ、そのようなこと、なぜ……」
「なぜ? なぜとは? 理由が分からないのであれば、あなたが今なさっていることを思い出していただきたいですな」
「……このようなこと、今回が初めてでございます……! 確かに聖職者としての掟をひとつおろそかにしてしまいましたが、教会を包囲されるほどの罪ではありますまい!?」
「ふむ。それがあなたの言い分ですな。分かりました」

 司祭様はホッと吐息をつき、頬を緩めた。

「お分かりいただけたようで――」
「生憎私は補佐に過ぎませんのでね。続きは愚弟にお願いします」

 フラスト様はニッと口角を上げ、司祭様の耳元で囁いた。

「あなたに同情しますよ、司祭殿。恨むのであれば、愚弟に目を付けられたあなたの不運を恨んでください」
「……?」
「愚弟は……愛する者にはひだまりのように明るく暖かく接するが――」

 廊下から、コツコツと足音が近づいてくる。背後に控えていた教会監視団体の部下がそれに気付き道を空けた。その間を通りフラスト様の隣に立ったのは、ヴァルア様だ。俯いているので表情が見えない。

「――憎むものには海底よりも暗く、冷たい」

 ヴァルア様が顔を上げた。司祭様を睨みつける目はゾッとするほど冷たかった。瞳孔が開いており、瞳に一切の光を感じない。
 こんなヴァルア様の表情を見たことがなくて、僕まで震え上がってしまった。

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