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33話
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◇◇◇
その日の夜中、ノックの音が聞こえて目が覚めた。返事をする前にドアが開き、ヴァルア様の声が聞こえた。
「寝ているかな」
起きがけで頭がぼんやりしており、声も出ない。瞼を半分上げるので精いっぱいだ。気を抜けばすぐ閉じてしまう。
ヴァルア様は足音を立てないよう歩き、ベッドまでたどり着く。そして布団をめくり上げ、そっと中に入ってきた。背後に横になったヴァルア様は、片腕で僕を抱きしめた。
僕が眠っていると思っているのだろう。僕の頭や首元に鼻を押し付け、無遠慮に嗅いでいる。
「あー……赤ちゃんの匂いがする。好きだなあ、ナストの匂い」
「……僕は赤ちゃんじゃありません」
掠れてガサガサになっている声を無理やり発した。赤ちゃんなんて心外な言葉は見過ごせない。
「えっ? 起きてたのかい?」
「あなたに起こされたんですよ。なかなか声が出なくて……」
「ふうん。そうかい。まあ、いいや」
「……」
ヴァルア様からはいつもと違う匂いがする。湯浴みをしたあとなのか、香水の匂いがせず、代わりに石鹸の匂いがした。体温も少し高いし、髪が濡れている。
ヴァルア様は、抱きしめていた腕を僕の腰に当てた。指先をするすると滑らせ、わき腹や太ももを撫でる。
「寝衣、少し丈が短かったかな」
「そうですね。少し」
用意された寝衣は、ヴァルア様の言うように少し丈が短かった。背筋を伸ばして立つと、睾丸が少しはみ出してしまうくらいだ。
「すまない。子ども用の寝衣がこれしかなくてね」
「構わないですが……。あの、以前から気に障っていたのですが、僕を〝子ども〟と称するのはやめてくれませんか。そんな歳じゃありません」
「おっと悪かった。訂正するよ。非常に小柄な大人の丈に合う、大人用の寝衣がこれしかなくてね」
「ええ。それでいいです」
「これでいいのか……」
ヴァルア様が指を寝衣の中に差し込んだ。すっと腰を撫でてから、下着の紐を指先で弄ぶ。
「あれ。この下着……」
「大公様が用意したものです。穿いてきたものより、こちらの方が楽だったので」
「そうなんだ。ということは……」
ヴァルア様が僕のペニスをつついた。
「やっぱり、丸出し」
「金の輪は付けていませんよ」
「本当だ」
ペニスを指でつついたり、うち太ももの間に手を差し込んだり、睾丸を手のひらに載せたりと、ヴァルア様はもどかしいほど優しい手つきで僕の体を触っていた。
「……っ」
たぶん、ヴァルア様は何気なく触れているだけなのだろう。密着している彼の下半身が反応していないことからも分かる。
それなのに僕ときたら、うっかりペニスを反応させてしまった。まだ下向きではあるが、定位置より少し浮いている。
「あっ……」
ヴァルア様の指が尻の割れ目を通ったとき、思わず声が漏れた。僕は慌てて手で口を塞ぐ。
そんな僕の気も知らず、ヴァルア様は呑気におしゃべりをしている。
「俺、こうしてナストとベッドで一緒に横になりたかったんだ」
「そっ、……っ、うなんですね……っ、っ」
「だっていつも汚くて暗い物置部屋で会っていただろう? セックスだってあそこでしかしたことがない。だから、居心地のいい清潔なベッドの上でナストと眠れたらどれほどいいだろうと思っていた」
「っ、……っ、っ、……っ、」
「そうだ。教会のことが落ち着いたら、今度一緒に町を歩かないか? 美味しい屋台をいくつか知っているんだ――」
途中からヴァルア様の言葉が頭に入って来なくなった。もはやペニスはへそに当たり、カウパーを垂らしている。それに気付いているだろうに、ヴァルア様は一向におしゃべりをやめない。
「ふっ……あぁ……」
相槌がいつしか喘ぎ声に変わった頃、僕は耐えられずにヴァルア様の話を遮った。
「ヴァルア様っ……!」
「ん? どうしたんだい?」
「もっ……焦らすのはやめてくださいっ……」
「確かに、焦れているね」
その日の夜中、ノックの音が聞こえて目が覚めた。返事をする前にドアが開き、ヴァルア様の声が聞こえた。
「寝ているかな」
起きがけで頭がぼんやりしており、声も出ない。瞼を半分上げるので精いっぱいだ。気を抜けばすぐ閉じてしまう。
ヴァルア様は足音を立てないよう歩き、ベッドまでたどり着く。そして布団をめくり上げ、そっと中に入ってきた。背後に横になったヴァルア様は、片腕で僕を抱きしめた。
僕が眠っていると思っているのだろう。僕の頭や首元に鼻を押し付け、無遠慮に嗅いでいる。
「あー……赤ちゃんの匂いがする。好きだなあ、ナストの匂い」
「……僕は赤ちゃんじゃありません」
掠れてガサガサになっている声を無理やり発した。赤ちゃんなんて心外な言葉は見過ごせない。
「えっ? 起きてたのかい?」
「あなたに起こされたんですよ。なかなか声が出なくて……」
「ふうん。そうかい。まあ、いいや」
「……」
ヴァルア様からはいつもと違う匂いがする。湯浴みをしたあとなのか、香水の匂いがせず、代わりに石鹸の匂いがした。体温も少し高いし、髪が濡れている。
ヴァルア様は、抱きしめていた腕を僕の腰に当てた。指先をするすると滑らせ、わき腹や太ももを撫でる。
「寝衣、少し丈が短かったかな」
「そうですね。少し」
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「すまない。子ども用の寝衣がこれしかなくてね」
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「おっと悪かった。訂正するよ。非常に小柄な大人の丈に合う、大人用の寝衣がこれしかなくてね」
「ええ。それでいいです」
「これでいいのか……」
ヴァルア様が指を寝衣の中に差し込んだ。すっと腰を撫でてから、下着の紐を指先で弄ぶ。
「あれ。この下着……」
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「……っ」
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それなのに僕ときたら、うっかりペニスを反応させてしまった。まだ下向きではあるが、定位置より少し浮いている。
「あっ……」
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「っ、……っ、っ、……っ、」
「そうだ。教会のことが落ち着いたら、今度一緒に町を歩かないか? 美味しい屋台をいくつか知っているんだ――」
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「ふっ……あぁ……」
相槌がいつしか喘ぎ声に変わった頃、僕は耐えられずにヴァルア様の話を遮った。
「ヴァルア様っ……!」
「ん? どうしたんだい?」
「もっ……焦らすのはやめてくださいっ……」
「確かに、焦れているね」
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