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10話
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「っ、っ……っ、~~……っ、」
薄い唇なのに柔らかく、ざらつきがない。舌を絡めるたび口の中に広がるのは、おそらくミントの香りだろう。舌は司祭様よりも薄く、少し長い。もったりとした舌の動きに戸惑ってしまう。まるで、羽でくすぐられているような感覚だ。
僕は拒絶の意を示すため、ヴァルア様の胸を強く押した。ヴァルア様は「ん?」と子どもみたいな甘えた声を出した。
「どうしたんだい?」
僕は口をこすり、ヴァルア様を睨みつけた。
「やっ……やはりあなたに触れられると穢れる……!! これで証明されました……!!」
「どうしてそう思う?」
「司祭様と同じことをするよりも、ペニスの膨張が著しいからです!!」
僕の気も知らず、ヴァルア様は噴き出した。必死に笑いを堪えているようだが、表情が隠し通せていない。やはり確信犯か。彼は自身が穢れであると自覚しているのだ。それなのに、僕を穢すためにあのようなことを嘯いたんだ。
「それがどうして穢れに繋がる? 快感は清めの証拠なのだろう?」
「ペニスの快感は別です! ここは卑しい快感を得るところです。忌まわしい快感を!!」
「キスだけでそんなに感じてくれたのなら嬉しいよ。ふふっ」
「何を笑って……やっぱり、あなたが王族と言うのは偽りで、僕を穢すために来た悪の使者か何かだな!?」
今度は我慢する様子もなく、ヴァルア様は腹を抱えて笑った。こんな品のない笑い方をする人なんて、教会の中に一人もいない。嫌悪感が極まって吐き気を覚えた。
ヴァルア様はいかにも楽しそうに言った。
「それじゃあ今から、俺が悪の使者じゃないことを証明してみせようじゃないか!」
キャソックのボタンに手をかけられたので、僕は声を荒らげた。
「何をしている!? 僕に触れるな汚らわしい!」
「ペニスの快感は、えーっと、卑しい快感、なんだっけ? それで、アナルの快感は、清めの証拠……なんだよね? じゃあ、俺が君のアナルを感じさせたら、俺が悪の使者じゃないと分かるだろう」
「そんなことをされずとも、もうお前の正体は分かり切っている!」
ヴァルア様は「へえ?」と僕の目を見て、ニッと口角を上げる。
「俺にアナルを触れさせたくない? 俺で快感を覚えたら怖いからかな?」
「なっ……」
どこまで司祭様と僕をバカにすれば気が済むんだ。司祭様の聖なる力を日々与えられている僕なら、そこらへんの聖職者ですら快感を覚えるはずがないのだ。当然、こんな悪の使者なんかに触れられたくらいで感じるわけがない。むしろ穢れに当てられて気分が悪くなるはずだ。体調にも支障をきたすだろう。それなのにこの人は、その穢れた体で僕に快感を与えられると思っている。
「愚かな穢れとは会話すら成り立たないのか」
僕はそう呟き、自ら足を開いた。
「さあ、やってごらんよ」
またヴァルア様が震えた気がした。彼は口元を手で押さえ、「あー……」とだらしない声を漏らす。
「君がそんなことをするから少し勃ってしまったじゃないか」
「はっ。汚らわしい」
「今にも破裂しそうなほど勃起している君には言われたくないがね」
ヴァルア様は自身の薬指を、唾液をたっぷり含んだ舌でひと舐めした。そしてその指先を僕の肛門に添え、穴の周りをぬるぬると唾液で濡らしていく。
「……指を濡らす必要なかったね。見て、司祭の精液がアナルから少し垂れてるよ」
「僕の穢れが司祭様の聖なる力を拒絶するせいで、全てを体内に留めておけない」
「うーん……。ま、いっか。……入れるよ」
「……」
肛門に異物が侵入するのを感じた。細長い指が、ゆっくりと根元まで押し込まれる。
予想通りだ。この男に肛門を触られても、何も感じない。
「おー。使い込まれているね。簡単に根元まで入った」
「司祭様に毎晩清めてもらっている。その程度の穢れならば、僕にはどうってことない」
「うーん。やはり会話が微妙に成り立たないな」
それはこちらのセリフだ。
腸の上側に指の腹を当てたまま、ヴァルア様の指がすぅっと引き下がっていく。
「あっ……!」
「ん?」
「……」
指がある場所を通ったとき、望まない快感が僕を襲った。思わず声が出てしまったことに自分で気付き、口を真一文字に結んだものの、ヴァルア様に聞かれてしまったようだ。
しかし、ヴァルア様は特段何を言うわけでもなく、肛門の中に指を這わせる。まるで何かを探るように、ゆっくりと、念入りに、あらゆるところを指の腹で触れた。
「っ……、っ……、っ」
長い。いつまでこんなことを続けるんだ。でも、やはり、僕は司祭様以外で感じることはないようだ。正直に言えば、快感が訪れそうになる瞬間はあった。だがそれは体の誤作動に過ぎず、この指が司祭様のものではないと気付いた体はすぐに正気に戻るのだ。
「……もう分かったでしょう? 僕はあなたでは――」
「うん。よく分かったよ」
「だったらもうその指を抜いて――」
「君の好きなところ、全部ね」
「あぁっ!?」
ヴァルア様の指がぐいと腸を押さえ付けた瞬間、僕の肛門がきつく締まった。体の奥が痙攣している。それに、金の輪が射精しそうになるペニスを抑圧するために、ギチギチと音を立てたかのように感じた。
「!? っ、っ!?」
「わ、すごい。一発で中イキ」
「っ、~~……っ、な、なに、今のっ……」
ヴァルア様は胡散臭い笑みを浮かべ、今度は激しく指を出し入れしはじめた。彼の指が中で動くたび、体がのけぞる。
「あっ!? あぁっ、あぁぁっ、やっ、あぁぁっ、!? !? なにっ、なにこれっ、んあぁっ!?」
「快感というのはね、ナスト。清めや穢れの証明なんかではないんだよ。ただの生理現象だ」
「やっ、もうそこやめてっ、あぁっ、やぁっ! おかしくなる……っ、んんぁぁっ……!!」
「男性には前立腺と言う臓器があってね、そこを刺激されると……調教済みの限られた人ではあるが……快感を覚えるんだよ。君のようにね。それが、ここ」
「あぁぁぁっ!!」
再び体中が痙攣する。肛門でここまでの暴力的な快感を得たのははじめてで、なにもかも意味が分からなくなった。
ヴァルア様が指を抜いた。気付けば僕は、涎を垂らしてぐったりと脱力していた。
薄い唇なのに柔らかく、ざらつきがない。舌を絡めるたび口の中に広がるのは、おそらくミントの香りだろう。舌は司祭様よりも薄く、少し長い。もったりとした舌の動きに戸惑ってしまう。まるで、羽でくすぐられているような感覚だ。
僕は拒絶の意を示すため、ヴァルア様の胸を強く押した。ヴァルア様は「ん?」と子どもみたいな甘えた声を出した。
「どうしたんだい?」
僕は口をこすり、ヴァルア様を睨みつけた。
「やっ……やはりあなたに触れられると穢れる……!! これで証明されました……!!」
「どうしてそう思う?」
「司祭様と同じことをするよりも、ペニスの膨張が著しいからです!!」
僕の気も知らず、ヴァルア様は噴き出した。必死に笑いを堪えているようだが、表情が隠し通せていない。やはり確信犯か。彼は自身が穢れであると自覚しているのだ。それなのに、僕を穢すためにあのようなことを嘯いたんだ。
「それがどうして穢れに繋がる? 快感は清めの証拠なのだろう?」
「ペニスの快感は別です! ここは卑しい快感を得るところです。忌まわしい快感を!!」
「キスだけでそんなに感じてくれたのなら嬉しいよ。ふふっ」
「何を笑って……やっぱり、あなたが王族と言うのは偽りで、僕を穢すために来た悪の使者か何かだな!?」
今度は我慢する様子もなく、ヴァルア様は腹を抱えて笑った。こんな品のない笑い方をする人なんて、教会の中に一人もいない。嫌悪感が極まって吐き気を覚えた。
ヴァルア様はいかにも楽しそうに言った。
「それじゃあ今から、俺が悪の使者じゃないことを証明してみせようじゃないか!」
キャソックのボタンに手をかけられたので、僕は声を荒らげた。
「何をしている!? 僕に触れるな汚らわしい!」
「ペニスの快感は、えーっと、卑しい快感、なんだっけ? それで、アナルの快感は、清めの証拠……なんだよね? じゃあ、俺が君のアナルを感じさせたら、俺が悪の使者じゃないと分かるだろう」
「そんなことをされずとも、もうお前の正体は分かり切っている!」
ヴァルア様は「へえ?」と僕の目を見て、ニッと口角を上げる。
「俺にアナルを触れさせたくない? 俺で快感を覚えたら怖いからかな?」
「なっ……」
どこまで司祭様と僕をバカにすれば気が済むんだ。司祭様の聖なる力を日々与えられている僕なら、そこらへんの聖職者ですら快感を覚えるはずがないのだ。当然、こんな悪の使者なんかに触れられたくらいで感じるわけがない。むしろ穢れに当てられて気分が悪くなるはずだ。体調にも支障をきたすだろう。それなのにこの人は、その穢れた体で僕に快感を与えられると思っている。
「愚かな穢れとは会話すら成り立たないのか」
僕はそう呟き、自ら足を開いた。
「さあ、やってごらんよ」
またヴァルア様が震えた気がした。彼は口元を手で押さえ、「あー……」とだらしない声を漏らす。
「君がそんなことをするから少し勃ってしまったじゃないか」
「はっ。汚らわしい」
「今にも破裂しそうなほど勃起している君には言われたくないがね」
ヴァルア様は自身の薬指を、唾液をたっぷり含んだ舌でひと舐めした。そしてその指先を僕の肛門に添え、穴の周りをぬるぬると唾液で濡らしていく。
「……指を濡らす必要なかったね。見て、司祭の精液がアナルから少し垂れてるよ」
「僕の穢れが司祭様の聖なる力を拒絶するせいで、全てを体内に留めておけない」
「うーん……。ま、いっか。……入れるよ」
「……」
肛門に異物が侵入するのを感じた。細長い指が、ゆっくりと根元まで押し込まれる。
予想通りだ。この男に肛門を触られても、何も感じない。
「おー。使い込まれているね。簡単に根元まで入った」
「司祭様に毎晩清めてもらっている。その程度の穢れならば、僕にはどうってことない」
「うーん。やはり会話が微妙に成り立たないな」
それはこちらのセリフだ。
腸の上側に指の腹を当てたまま、ヴァルア様の指がすぅっと引き下がっていく。
「あっ……!」
「ん?」
「……」
指がある場所を通ったとき、望まない快感が僕を襲った。思わず声が出てしまったことに自分で気付き、口を真一文字に結んだものの、ヴァルア様に聞かれてしまったようだ。
しかし、ヴァルア様は特段何を言うわけでもなく、肛門の中に指を這わせる。まるで何かを探るように、ゆっくりと、念入りに、あらゆるところを指の腹で触れた。
「っ……、っ……、っ」
長い。いつまでこんなことを続けるんだ。でも、やはり、僕は司祭様以外で感じることはないようだ。正直に言えば、快感が訪れそうになる瞬間はあった。だがそれは体の誤作動に過ぎず、この指が司祭様のものではないと気付いた体はすぐに正気に戻るのだ。
「……もう分かったでしょう? 僕はあなたでは――」
「うん。よく分かったよ」
「だったらもうその指を抜いて――」
「君の好きなところ、全部ね」
「あぁっ!?」
ヴァルア様の指がぐいと腸を押さえ付けた瞬間、僕の肛門がきつく締まった。体の奥が痙攣している。それに、金の輪が射精しそうになるペニスを抑圧するために、ギチギチと音を立てたかのように感じた。
「!? っ、っ!?」
「わ、すごい。一発で中イキ」
「っ、~~……っ、な、なに、今のっ……」
ヴァルア様は胡散臭い笑みを浮かべ、今度は激しく指を出し入れしはじめた。彼の指が中で動くたび、体がのけぞる。
「あっ!? あぁっ、あぁぁっ、やっ、あぁぁっ、!? !? なにっ、なにこれっ、んあぁっ!?」
「快感というのはね、ナスト。清めや穢れの証明なんかではないんだよ。ただの生理現象だ」
「やっ、もうそこやめてっ、あぁっ、やぁっ! おかしくなる……っ、んんぁぁっ……!!」
「男性には前立腺と言う臓器があってね、そこを刺激されると……調教済みの限られた人ではあるが……快感を覚えるんだよ。君のようにね。それが、ここ」
「あぁぁぁっ!!」
再び体中が痙攣する。肛門でここまでの暴力的な快感を得たのははじめてで、なにもかも意味が分からなくなった。
ヴァルア様が指を抜いた。気付けば僕は、涎を垂らしてぐったりと脱力していた。
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