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夏休み中旬:朱鷺

64話 8月16日:きれいだよ

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 あてがわれた部屋に入った俺は、ソファに腰を下ろして怜とキスしようとした。だが、怜に拒まれる。

「なんでだよ!!」
「お風呂入りたい……」
「またかよ潔癖症め!!」

 構わず盛ろうとしたが、あごに拳を入れられた。

「ぐぼぉっ」
「今日はダメ!! 絶対にお風呂に入りたい!!」

 いいだろ、別にいいじゃん、なあいいじゃんかあ、と何度誘っても怜はかたくなに拒んだ。これは絶対に譲る気がないと悟った俺は、ムスッとしながらも承諾することになった。

「すぐ戻って来いよ」
「……うん」

 しかし、十分経っても二十分経っても、怜がなかなか浴室から出てこない。
 耐えかねた俺は、三十分経ったあたりで浴室のドアを勢いよく開けた。

「おいこら怜お前おせえよ何してんだ――」
「~~っ……」

 突然ドアを開けられ、怜は硬直している。彼の顔からサーッと血の気が引いた。
 俺はあんぐりと口を開け、アホのような顔で怜の姿を見た。
 怜は壁に手を突いて立っていた。指はケツに差し込まれており、ケツからは白い液体が垂れている。床にも、白濁した液体の小さな水たまりができていた。

「……」
「……」

 怜は三十分かけて、ケツに注がれた義父の精液を掻き出していたんだ。

「……」
「……」

 怜は咄嗟にケツを手で隠した。俺から顔を逸らし、ぷるぷると震える。
 そして、消え入りそうな声で言った。

「……ごめんなさい……」
「……」
「ごめっ……ごめんなさい……」

 泣くな。
 お前はなんにも悪くないだろ。なんでお前が謝るんだよ。

「き……嫌いにならないで……」
「……」
「き、汚くてごめんなさっ……ごめんなさい……っ」
「っ……」

 俺は服を着たまま浴室にズカズカと入り、怜のうしろに立った。

「ふっ!?」

 怜のケツに指を突っ込むと、怜の体がのけぞった。

「俺がやる」
「まっ……やめて、いやだっ、見ないで……っ、こんな……ふ……っ」

 指を一度出し入れしただけで、ボタボタと精液が落ちた。

「……」

 昨日だけであいつは何度こいつを犯したんだ。
 俺はケツをかき回しながら怜にキスをした。さっきも思ったけど、こいつの口の中がいろんなアルファの味がする。こいつはこの数日間で何本のちんこをしゃぶらされたんだ。

 でもな、怜――

 長いキスのあと、俺はめいっぱい怜を抱きしめた。

「汚くなんかねえよ」
「っ……」
「お前は汚くなんかない」

 たとえ口の中が知らんおっさんのちんこの味がしても、ケツの中が義父の精液で溢れかえっていても。

「きれいだよ、怜」

 俺はお前ほどきれいな人を見たことがない。


 ◇◇◇

 俺に精液を掻き出されている間、怜はずっと泣いていた。泣きはらした顔で浴室を出て、ベッドに倒れ込む。

「俺もシャワー浴びてくるわ」
「うん……」

 俺がシャワーを浴びている間に怜は眠ってしまっていた。ここんところずっと寝る間がなかっただろうし、今晩は夢も見ずに眠ってほしい。
 俺は怜を起こさないようベッドに潜り込み、怜を抱きしめた。ぼうっとしていると勝手に涙が流れた。いつしか俺は、怜を抱きしめながら嗚咽を漏らしていた。

「……っ、うっ、うぅ……っ、怜……っ」

 怖かった。怜が戻って来なかったらどうしようかって考えて、ずっと怖かった。
 でも、怜は俺と生きる道を選んでくれた。それが嬉しくて、ホッとして、涙が止まらなくなった。

 そっと、怜の手が俺の頭を撫でた。
 驚いている俺に、怜は微笑を浮かべる。

「起きてたのかよ……」
「起きたんだよ」
「ああ、ごめん……」
「ううん」

 怜は俺を抱きしめた。そして彼もまた、泣いた。
 自然と唇が重なり合う。互いの愛を確かめ合っているうちに、それもまた自然と、体を重ねていた。

「あっ……」

 いつもより、静かな交わり。
 音もたてずゆっくりと、そっとそっと、俺たちはひとつとなった。
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