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夏休み中旬:怜
52話 8月16日:とんでもないSP(※)
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そう言ったかと思えば、鶯巣社長に向かって口を開いた。
「あなたは味見しなくていいのね?」
「……する」
「あら。こらえ性のない人だこと」
「さすがにこんなオメガの前ではね……」
「我慢なんてできないわよ」
「その通り」
うわあ……。上品な人たちだなあって思っていたけど、やっぱり中身はアルファだった……。
二人ともかなり興奮している。鶯巣社長のズボンにはテントが張っているし、ミサさんもスカートの奥からすごく濃いアルファの匂いを漂わせている。
それでも彼らはがっつくことなく、割れ物を扱うかのように優しく僕を愛撫した。
その触れ方がくすぐったくて、思わず目を閉じた。
ここのところ自分本位で乱暴な犯され方しかされていなかったから、なんだか沁みる。
それに二人のアルファ臭が妙に心地いい。東京の人のアルファ臭はこっちと違うのかな。
「んっ……」
下着を脱がされ、鶯巣社長におしりを、ミサさんにかたくなったものを触られる。やっぱり、彼らの指使いは優しくてくすぐったい。
「あ……んん……」
「可愛い声ね」
「たまらない」
鶯巣社長はそう呟き、僕と唇を重ねた。ゆっくりと舌が入り込み、僕の舌と絡み合う。
僕が鶯巣社長と長いキスをしている間、ミサさんは僕の首筋を舌で愛撫する。
「あっ……、あぁっ、んっ……」
なんか、すごい。ベテランの余裕を感じる。こんな前戯ははじめてかもしれない。じれったい、ねっとりとした前戯。でも時に前立腺を刺激したり、竿を激しく擦られたりして、強い快感も与えられる。
だめだ。気持ちいい。
「ふぅん……あっ……」
もどかしくて無意識に腰が浮いてしまう。
「そろそろイキたい?」
耳元で鶯巣社長に囁かれ、僕はこくこくと頷いた。
「いいよ」
「あっ!? あっ、あっ、ふ……っ、あ、イクッ……イクーー」
僕が絶頂を迎えようとした、そのとき――
「ぐあっ!!」
「きゃぁっ!!」
鶯巣社長がうしろに吹き飛んで、ミサさんがベッドから蹴り落された。
「おい。何してるんだお前ら」
突然のことに僕は硬直してしまった。なに? 何が起きている? 義父の仕業?
いや違う。ミサさんを蹴り飛ばした人は、義父じゃない。だって彼のすぐあとに、冷や汗をだらだら流した義父が入って来たから。
「も、申し訳ありません!! SPが勝手に入ってしまいまして……! お怪我がありませんか!!」
「……ええ、大丈夫よ。気にしないで」
「私が連れてきたSPだ。気にするな……」
僕はベッドの前に立ちはだかる、黒スーツを着てサングラスをかけた男性を見上げた。僕以外の人たちも、彼らに視線が向いている。先ほどの会話からして、ドアの前で待機していた、鶯巣社長のSPだそうだけど……
雇い主にこんな乱暴をする人がSP……?
SPはサングラス越しに鶯巣社長とミサさんを一瞥し、低い声を出す。
「こんなこと、俺は許していないが?」
やっぱりSPとは思えない、雇い主――大企業の社長に向かってのタメ口に高圧的な態度……。
それなのに、当の雇い主二人はごまかすようにヘラヘラ笑うだけだった。
「あ、あはは。ちょっと、ほら、若気の至りってやつで……」
「三十七にもなって若気を至るな」
「すみません……」
鶯巣社長が謝り縮こまった。
続けてミサさんが頬を膨らませる。
「仕方ないでしょ? こんなオメガ、我慢できないわ」
「言い訳するな」
「はい……」
いやほんとこのSP何者!?
義父もびっくりして固まっちゃってるよ!?
最後にSPは、ゆっくりと僕に顔を向けた。
「……」
「……」
「……遅くなって悪かった」
「……?」
「帰るぞ、怜」
「え……?」
「は?」
「え?」
「お前、俺が誰か分かってねえの?」
「え、ど、どなたでしょうか……」
僕にこんな怖い知り合いいませんけど……。
するとSPがはぁぁぁ……と深いため息を吐き、サングラスを外した。
「え……」
「これで誰か分かったか?」
「……」
「げ。これでも分かんねえの!?」
嘘だ。これは夢だ。そんなわけない。こんな都合の良いことが起こるわけない。どこからが夢?
「おーい」
「うぅ……うっ……うぐぇ……えぇぇん……」
どうか夢なら覚めないで。またこの人と会えるなんて。きっと目覚めてしまったらもう二度とないだろうから。
夢だと分かりながら、僕は彼にしがみついた。
「朱鷺……っ! 朱鷺、朱鷺ぃ……!!」
朱鷺は僕を抱きしめ、優しい声色で言った。
「お前を取り返しに来たぞ、怜」
「あなたは味見しなくていいのね?」
「……する」
「あら。こらえ性のない人だこと」
「さすがにこんなオメガの前ではね……」
「我慢なんてできないわよ」
「その通り」
うわあ……。上品な人たちだなあって思っていたけど、やっぱり中身はアルファだった……。
二人ともかなり興奮している。鶯巣社長のズボンにはテントが張っているし、ミサさんもスカートの奥からすごく濃いアルファの匂いを漂わせている。
それでも彼らはがっつくことなく、割れ物を扱うかのように優しく僕を愛撫した。
その触れ方がくすぐったくて、思わず目を閉じた。
ここのところ自分本位で乱暴な犯され方しかされていなかったから、なんだか沁みる。
それに二人のアルファ臭が妙に心地いい。東京の人のアルファ臭はこっちと違うのかな。
「んっ……」
下着を脱がされ、鶯巣社長におしりを、ミサさんにかたくなったものを触られる。やっぱり、彼らの指使いは優しくてくすぐったい。
「あ……んん……」
「可愛い声ね」
「たまらない」
鶯巣社長はそう呟き、僕と唇を重ねた。ゆっくりと舌が入り込み、僕の舌と絡み合う。
僕が鶯巣社長と長いキスをしている間、ミサさんは僕の首筋を舌で愛撫する。
「あっ……、あぁっ、んっ……」
なんか、すごい。ベテランの余裕を感じる。こんな前戯ははじめてかもしれない。じれったい、ねっとりとした前戯。でも時に前立腺を刺激したり、竿を激しく擦られたりして、強い快感も与えられる。
だめだ。気持ちいい。
「ふぅん……あっ……」
もどかしくて無意識に腰が浮いてしまう。
「そろそろイキたい?」
耳元で鶯巣社長に囁かれ、僕はこくこくと頷いた。
「いいよ」
「あっ!? あっ、あっ、ふ……っ、あ、イクッ……イクーー」
僕が絶頂を迎えようとした、そのとき――
「ぐあっ!!」
「きゃぁっ!!」
鶯巣社長がうしろに吹き飛んで、ミサさんがベッドから蹴り落された。
「おい。何してるんだお前ら」
突然のことに僕は硬直してしまった。なに? 何が起きている? 義父の仕業?
いや違う。ミサさんを蹴り飛ばした人は、義父じゃない。だって彼のすぐあとに、冷や汗をだらだら流した義父が入って来たから。
「も、申し訳ありません!! SPが勝手に入ってしまいまして……! お怪我がありませんか!!」
「……ええ、大丈夫よ。気にしないで」
「私が連れてきたSPだ。気にするな……」
僕はベッドの前に立ちはだかる、黒スーツを着てサングラスをかけた男性を見上げた。僕以外の人たちも、彼らに視線が向いている。先ほどの会話からして、ドアの前で待機していた、鶯巣社長のSPだそうだけど……
雇い主にこんな乱暴をする人がSP……?
SPはサングラス越しに鶯巣社長とミサさんを一瞥し、低い声を出す。
「こんなこと、俺は許していないが?」
やっぱりSPとは思えない、雇い主――大企業の社長に向かってのタメ口に高圧的な態度……。
それなのに、当の雇い主二人はごまかすようにヘラヘラ笑うだけだった。
「あ、あはは。ちょっと、ほら、若気の至りってやつで……」
「三十七にもなって若気を至るな」
「すみません……」
鶯巣社長が謝り縮こまった。
続けてミサさんが頬を膨らませる。
「仕方ないでしょ? こんなオメガ、我慢できないわ」
「言い訳するな」
「はい……」
いやほんとこのSP何者!?
義父もびっくりして固まっちゃってるよ!?
最後にSPは、ゆっくりと僕に顔を向けた。
「……」
「……」
「……遅くなって悪かった」
「……?」
「帰るぞ、怜」
「え……?」
「は?」
「え?」
「お前、俺が誰か分かってねえの?」
「え、ど、どなたでしょうか……」
僕にこんな怖い知り合いいませんけど……。
するとSPがはぁぁぁ……と深いため息を吐き、サングラスを外した。
「え……」
「これで誰か分かったか?」
「……」
「げ。これでも分かんねえの!?」
嘘だ。これは夢だ。そんなわけない。こんな都合の良いことが起こるわけない。どこからが夢?
「おーい」
「うぅ……うっ……うぐぇ……えぇぇん……」
どうか夢なら覚めないで。またこの人と会えるなんて。きっと目覚めてしまったらもう二度とないだろうから。
夢だと分かりながら、僕は彼にしがみついた。
「朱鷺……っ! 朱鷺、朱鷺ぃ……!!」
朱鷺は僕を抱きしめ、優しい声色で言った。
「お前を取り返しに来たぞ、怜」
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