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夏休み上旬
36話 8月12日:屋台
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花火大会が行われる河川敷に到着したときには、そこら中に屋台が並んでいた。それに、すごい人混みだ。知らない人と触れ合いはしないものの、近くにいるヤツの性の臭いがむわむわ鼻につくほどには距離が近い。俺と怜は、そんな中、人混みの流れに乗ってゆっくりと歩いた。
「怜。気になる屋台あったら言えよ」
「うん!」
は? うん! ってなに? 無邪気? めちゃくちゃはしゃいでんじゃん。可愛すぎないかこの人。
「勃った」
「なんで!?」
「お前のせいだ」
「さっきから冤罪もはなはだしくない?」
怜があっと声を上げ、ある屋台を指さした。
「朱鷺」
「ん?」
「あれやりたい」
「……あたりくじ」
おいおい。あんなのしょうもねえもんしか入ってねえぞ。
「一等のゲーム機欲しい」
「いや、絶対――」
当たるわけないだろ、と言いかけたが止めておいた。怜がやりたいと言っているんだ。たとえ仮に一等のあたりくじが入っていなかったとしても、させてやったらいいじゃねえか。あたりくじっていうのは、当たってもはずれても楽しいもんなんだから。
「よし、やるか!」
「やった!」
「おっちゃん、くじ二枚~」
「あいよぉ!」
俺は適当にくじを引いたが、怜は真剣な表情で意を決して一枚を引き抜いていた。
「同時にめくるぞ」
「う、うん……!」
「いっせーので」
「ふん……!」
ぺら、とめくると、俺はハズレ、怜は五十三等が当たった。
「おお! すげえ当たったじゃん!!」
歓声を上げる俺とは真逆に、怜は「うわあああっ」と絶望の声を上げた。
「ゲーム機当たらなかったぁ!」
「いや、当たるわけねえだろ。良いじゃねえか、何かしら当たったんだから」
「むぅぅ……」
怜は唇を尖らせておっちゃんに当たりくじを渡した。五十三等は――
「ほらよ! 光るカチューシャだ!」
意味の分からねえ虫の触手みたいなものが伸び、先っぽについたライトがレインボーに光るカチューシャだった。
半泣きでそれを受け取る怜と、腹を抱えて爆笑する俺。おっちゃんもちょっと笑いをこらえていた。
意気消沈した怜は、クソダサカチューシャを握りしめて屋台をあとにした。
「こんなの当たらない方がマシだったよ……」
「そんなこと言うなよー。ほら、付けてみろよ。きっと似合うぞ」
「いやだよ! こんなボサ頭でこれ付けたらどうしようもないよ!?」
「そうか。じゃあ俺にくれよそれ」
「えっ」
「俺が付けるわ」
怜の手からカチューシャをひったくり、俺は頭にそれを付けた。
「どう? 似合うか?」
「……ぷぷっ」
「お、似合ってそうだな」
「あははは!」
「しばらく付けとくか」
怜がそんな顔して笑うなら、やっぱりこの五十三等の景品はあたりだったな。
「怜。気になる屋台あったら言えよ」
「うん!」
は? うん! ってなに? 無邪気? めちゃくちゃはしゃいでんじゃん。可愛すぎないかこの人。
「勃った」
「なんで!?」
「お前のせいだ」
「さっきから冤罪もはなはだしくない?」
怜があっと声を上げ、ある屋台を指さした。
「朱鷺」
「ん?」
「あれやりたい」
「……あたりくじ」
おいおい。あんなのしょうもねえもんしか入ってねえぞ。
「一等のゲーム機欲しい」
「いや、絶対――」
当たるわけないだろ、と言いかけたが止めておいた。怜がやりたいと言っているんだ。たとえ仮に一等のあたりくじが入っていなかったとしても、させてやったらいいじゃねえか。あたりくじっていうのは、当たってもはずれても楽しいもんなんだから。
「よし、やるか!」
「やった!」
「おっちゃん、くじ二枚~」
「あいよぉ!」
俺は適当にくじを引いたが、怜は真剣な表情で意を決して一枚を引き抜いていた。
「同時にめくるぞ」
「う、うん……!」
「いっせーので」
「ふん……!」
ぺら、とめくると、俺はハズレ、怜は五十三等が当たった。
「おお! すげえ当たったじゃん!!」
歓声を上げる俺とは真逆に、怜は「うわあああっ」と絶望の声を上げた。
「ゲーム機当たらなかったぁ!」
「いや、当たるわけねえだろ。良いじゃねえか、何かしら当たったんだから」
「むぅぅ……」
怜は唇を尖らせておっちゃんに当たりくじを渡した。五十三等は――
「ほらよ! 光るカチューシャだ!」
意味の分からねえ虫の触手みたいなものが伸び、先っぽについたライトがレインボーに光るカチューシャだった。
半泣きでそれを受け取る怜と、腹を抱えて爆笑する俺。おっちゃんもちょっと笑いをこらえていた。
意気消沈した怜は、クソダサカチューシャを握りしめて屋台をあとにした。
「こんなの当たらない方がマシだったよ……」
「そんなこと言うなよー。ほら、付けてみろよ。きっと似合うぞ」
「いやだよ! こんなボサ頭でこれ付けたらどうしようもないよ!?」
「そうか。じゃあ俺にくれよそれ」
「えっ」
「俺が付けるわ」
怜の手からカチューシャをひったくり、俺は頭にそれを付けた。
「どう? 似合うか?」
「……ぷぷっ」
「お、似合ってそうだな」
「あははは!」
「しばらく付けとくか」
怜がそんな顔して笑うなら、やっぱりこの五十三等の景品はあたりだったな。
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