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夏休み上旬

33話 8月7日:周期外の発情

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 小一時間ほど経っていたと思う。俺がやっと怜の体から舌を離したときには、フローリングに水たまりができていた。

「も……っ、朱鷺……、僕、も、無理……っ」

 口から涎を垂らした怜が、なんとか声を絞り出した。

「えー。まだ舐めたい」
「も……っ、挿れてよぉ……」
「あともうちょっとだけ舐めさせて」
「やぁ……ひぅぅっ……!」

 俺は怜の尻に指を根元まで押し込み、肩甲骨あたりに吸い付いた。

 こんな感じで怜の全身を堪能しているとき、異変が起こった。

「はっ……あ……はぁ……っ」
「……?」

 さっきまでと怜の声の雰囲気が変わった。それに……匂いが、なんか……。

「あ……あっ、あぁぁ……」

 怜から体を離しても、怜の体は熱を増すばかりだ。
 どろ、と大量の愛液が尻からぼったり落ちたのを見て、俺は確信した。

「怜……お前、発情期……?」

 怜は小さく首を横に振った。

「だよな、だってついこの間なったばっかだし……。でも、お前……」

 怜は涙ぐんだ目で俺を見上げる。

「発情……してるよな……?」

 俺の問いに、怜はきゅっと目を閉じる。

「だって……だって……」
「……」
「挿れてくれないからぁ……」

 俺は真顔で射精した。(怜は「あっ」と声を漏らし、物欲しそうな顔で、飛び出した精液を目で追っていた)
 なんだよこいつ。発情期じゃないときに発情してしまうほど俺に挿れてほしかったのかよ。焦らされすぎて発情するオメガなんか見たことねえよ俺。なんちゅうヤツだこいつは。ド淫乱。オメガの申し子。
 本能的に俺を誘惑しようとしやがって。この野郎。卑怯者。可愛すぎる。好きだ。

 俺は真顔のまま怜の脚を開き、一息に奥までちんこを突っ込んだ。

「あぁぁっ!!」

 それだけで怜は射精して、中でもイッて、俺のちんこを千切りそうなほど締め付けた。もう離す気はない、そんな意思を感じた。

 たぶん俺はラットになったんだと思う。それも、今までの軽いラットじゃない。理性なんてひとつも残っていない、しばらくは抜けられそうにない深いラットだ。
 だから俺は、首輪越しに怜の首をがりがり噛んだのだろう。容赦なく、首輪を引きちぎる勢いで。

 何時間経ったか分からない。とにかく俺は、もう精液が一、二滴しか出なくなるまで腰を振っていた。
 そこでやっと俺は怜からちんこを抜いて、仰向けに寝転んだ。その頃には少しラットがマシになっていた。

 だが――

「朱鷺……」
「……」

 怜は俺に覆いかぶさり、射精したばかりでへたりそうなちんこにケツ穴を当てた。そして、無理矢理中にねじ込んで、ゆさゆさと腰を揺らす。

「まだ欲しい……っ」

 こいつも相当深い発情をしているようだ。焦点が定まっていない目で俺を見下ろし、夢中になって腰を振っている。

「れ、怜……っ、も、俺出ないって……」
「やだ、もっと……」
「んっ、も、ちんこ痛いっ、怜……っ」

 怜は頬を膨らませ、俺の首元にかじりついた。キスをしたり、俺の首輪をがじがじ噛んだり、俺の顔や首を舐め回したり……。

「なにお前……俺を殺す気か……?」
「朱鷺……っ、もっと……」
「ったくお前ってやつは……見事に勃ったわ……もう、これで最後だぞ」

 俺は怜を抱き寄せ、下から怜を突き上げた。ガンガン中を突き上げるたびに、怜から甘い声が漏れる。
 体勢に疲れた俺は、怜を四つん這いにさせてうしろから突いた。

「はやく寝ろ、お前……っ」
「あっ! あぁっ、はぁっ、あぁぁっ!」

 容赦なく腰を打ち付ける。いつもは遠慮してそれ以上は押し込まなかった壁――S字直腸、だっけか?――を、今日ばっかりは無遠慮に突き破った。

「あぁぁっ!? あっ、あぁぁぁっ!!」

 今まで聞いたことがない怜の叫び声は、ちょっと心配になるほどだった。喘ぎ声というより、絶叫に近い。
 だが、びっくりするくらいの精液を噴き出させ、さらにガクガクと怜が体を痙攣させた。これは絶頂を迎えている時の体の反応だ。どうやらとんでもない快感を得ているようだ。

 それからどのくらい経ったか分からない。外を見ると、空が明るんでいた。
 あ、あれ……? いやらしい雰囲気になったの、昼前くらいじゃなかったっけ……? どうして翌朝になっているんだ……?

 とにかく、そのくらい経ってやっと怜が気絶してくれた。
 ヤリすぎてちんこが痛い。オメガのケツマンコより俺のちんこが先に限界を迎えるなんてはじめてだ。猛者すぎるだろう、こいつ。

「でも、まあ……」

 俺はすっかり静かになった怜をうしろから抱きしめ、うなじにキスをした。

「そんなお前も好きだ」

 発情期でもないのに発情して。精液が枯れた俺を、気絶するまで求め続けて。
 そんな滑稽なほど俺のことを必要としてくれているお前に、俺がどれほど救われているかなんて、お前は分かっちゃいないんだろう。
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