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夏休み上旬

14話 7月23日:俺んちセックス

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 夏休みが始まってからも、俺はダラダラと高浜――怜(れい)の家に居座っていた。家に帰ってもなにもないし、怜と離れるのがなんか惜しくて、「帰るわ」の一言が言えない。
 迷惑じゃないかな、なんて心配もないことはなかったが、高浜は「帰れ」とも言わなければ、嫌な顔ひとつせず、狭苦しいシングルベッドで大人しく俺と寝ていた。

 しかし困っていることが一つある。俺の体に合うサイズの服がない。怜は俺より一回り小さいので、シャツもズボンも、俺が着たらぴっちぴちだし丈が短い。ちなみにパンツは伸びるから大丈夫だ。

「あー、どうしよっかなー」
「どうしたの?」
「服だよ服。お前の服、小せえんだもん」
「あー」

 いったん実家に取りに帰ろうかな、と言おうとして、なんか恥ずかしくなった。
 いったんって、ここに戻ってくる気満々じゃねえか。なんだ? 俺はここに住み着く気なのか?

 悶々とくだらないことで悩んだ結果、俺は怜にこんな提案をした。

「なあ、お前んちにずーっといるの飽きたんだけど、俺んち遊びに来ねえ?」

 我ながら、素直じゃない言い方だ。

 怜は目をぱちくりと瞬き、素直な仕草で頷いた。

「うん、行く」

 あー……。
 こいつのあっさりとした素直な性格が、俺はどうしようもなく好きなんだ。

「やば」
「どうしたの?」
「勃った」
「えー」
「お前のせい」
「僕が一体何を」

 そんなやりとりをしつつ、俺たちは出かける準備をした。夏休みに入って三日が経っているのに、俺は制服で外を出る。怜はラフな私服でふわふわと歩いている。眼鏡は外してコンタクトレンズを付けているが、長い前髪とボサ頭は健在だ。わざわざボサ頭にセットしている怜を見るのはけっこう面白いんだ。

 家に引きこもっているときはフリスク(抑制剤)を飲んでいなかったが、今日はまた一度に五錠飲んでいた。そうしないとキツすぎるオメガ臭が抑えられないらしいんだが、副作用がないわけじゃないようで、怜も飲むときに苦い顔をしていた。……今度医者に連れて行って、ちゃんとした薬を処方してもらおう。

 俺の実家に到着したころには、俺も怜も厚さでフラフラになっていた。
 怜は俺の家を見上げて、口をあんぐり開けている。

「豪邸だ……」
「大げさ。ただの一人暮らしにはでかすぎる、がらんどうの建物だよ」
「……」

 実際、一般家庭の一軒家よりは多少ででかいが、豪邸というほどのものじゃ決してない。

「入って」
「お、おじゃまします……」

 怜はきょどきょどとあたりを見回しながら、遠慮がちに中に入った。
 玄関のドアを閉めた俺は、がまんできずにうしろから怜を抱きしめた。

「っ、」

 黙って首筋の匂いをすんすん嗅ぐ。やっぱりフリスク飲むと匂いが薄くなるが、怜の匂いのまんまだ。落ち着く。
 怜はしばらく好きにさせていたが、いつまで続くか不安になったのか、俺の腕を軽く叩いた。

「ちょっと、長い……」
「すんすん」
「あと、勃ってる……」

 俺はぐり、と怜の腰に勃起したちんこを擦り付ける。

「怜……、俺、行く前から我慢してた」
「……そうだね。我慢してたね」
「もう限界なんだわ」
「……」
「抱いていい?」

 返事の代わりに怜が振り向く。唇を重ねると、舌を絡めてきた。なんだよ、怜もノリノリじゃねえか。

「ベッド、行こ」
「ん……」
「ソファでもいいけど。そっちの方が近い」
「ベッドがいい」
「ん、じゃあ俺の部屋行こ」

 部屋に入り、冷房を最低気温に設定してから、俺は怜をベッドに押し倒した。
 前髪をかき上げると、毎度息を呑むほどきれいな顔がひょっこり現れる。何度キスしても足りない。こいつを食って俺の一部にしたいくらい、こいつと一つになってしまいたい。

 服を脱がせると、白くてつるつるの肌があらわになる。どうしてこんな真夏に真っ白なんだこいつは。
 俺はガツガツと、怜のケツに指を差し込んだ。なんだ、ちゃんとこいつもビチョビチョじゃねえか。
 キスをしながらズボンをおろし、怜の脚を開かせる。こいつとヤルとき、いつも余裕がなくなって、一気にちんこを突っ込んでしまう。

「んんんーっ……!」
「あぁぁっ……ぐっ……! あっ……はぁぁぁ……っ!」

 ほんとに恥ずかしいんだが、うるさくて長い方の喘ぎ声が俺だ。仕方ないんだって。こいつのケツ、まじで名器すぎるんだから。気持ち良すぎて頭おかしくなるんだ。念のために言っておくが、こいつ以外とのセックスで喘いだことなんて一度もないからな。

「あっ、やばっ、怜っ……! も、お前のケツマンコどうなってんだよほんとクソがっ、あっ、も、やばいっ、気持ちいっ……あぁっ、あっ」
「んっ、あっ……んん……っ、は……っ」

 俺の喘ぎ声がうるさいからというのもあるかもしれないが、怜の喘ぎ声は品があって余計にエロい。甲高い声なんか出さないし、「もっと」とか「きもちいいん」なんて陳腐なエロセリフはめったに言わない。
 だから俺のキモい喘ぎ声が余計に悪目立ちして、ヤッたあとはいつも恥ずかしくなって落ち込むんだけどな。

「あっ、あっ、も、出るっ……! 怜っ、イッていい……っ?」
「ん、いいよっ、ん、んんっ……」
「んっ……、あぁっ……!!」
「~~っ……――」

 昨日もヤッたのに、ものすごい量の精液が噴き出した。

「あ、あっ、あー……っ」

 俺の精液を注ぎ込まれると、怜は決まって中でイク。俺の精液を根こそぎ持っていこうとするように、きつく締め付けて絞りだそうとするから、その快感で俺はまたイキそうになる。というか俺は一度、それでイッた直後にすぐイッたことがある。

 雑で早いセックスだったのに、冷房を付けていても汗だくになった。
 俺は怜に長いキスをしてから、隣に倒れこむ。

「もう無理。お前とのセックスが気持ち良すぎて、俺はバカになりそうだ」
「バカになったらいいよ。朱鷺が満足するまで、付き合ってあげるから」

 怜の言葉に、俺は苦笑した。
『満足するまで付き合ってやる』か。俺がいつもオメガに対して言っていた言葉だ。
 まさかそれを、余裕しゃくしゃくのオメガに言われることになるなんてな。全く。こいつにはずっとかなわない。
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