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夏休み前
8話 7月18日:ブラックのホットコーヒー(と先生と憂さ晴らしセックス)
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なぜだか分からないが、高浜のまわりだけ時間の流れ方が違う気がする。濁流のようにいろんな情報や人間関係が渦巻いている世の中で、高浜だけは、穏やかというか、ゆるやかというか、そんな雰囲気がある。それはこいつがスロウジャズを好んでいるからかもしれないし、静かな空間での読書が好きだからなのかもしれない。
ファミレスにいるときだって、こいつのそばにいるといつもより騒音が聞こえにくくなる気がした。
だから、高浜が小さな声で話していても、脳みそにくっきりとこいつの声が刻まれるのだろう。
「朱鷺くんは、コーヒーが好きなの?」
「……別に」
テーブルに載るコーヒーカップを指さして、高浜が尋ねた。
本当は氷たっぷりの炭酸飲料が飲みたかった。それなのに、かぶれ高浜が大人ぶってホットコーヒーなんて選んだから、ちょっと恥ずかしくなって俺も同じものを淹れた。ムカつくことに、あいつは砂糖もミルクも入れやがらかった。だから俺もブラックにした。なんでこんな暑い日に、熱くて苦い飲み物を飲まなきゃいけないんだ。
高浜はスス、とコーヒーを啜り、眉をハの字にした。
「もしかして、僕に合わせてくれた?」
「別に」
「無理しなくていいのに」
俺は頬がカッと熱くなったのを感じた。どうして俺が、同級生のぼっち底辺オメガに、子どもみたいな扱いをされないといけないんだ。ホットコーヒー飲んでいるくらいで偉そうにしやがって。
大人ぶってすましているお前も、どうせベッドの上ではアンアン喘いで俺のちんこ欲しがるんだろ。ああ、さっさと抱きてえ。どっちが上か、分からせてやりてえ。
食事を終えてファミレスを出た俺は、高浜に手を振った。
「じゃあな、高浜。気を付けて帰れよ」
「うん。今日は付き合ってくれてありがとう」
「気にすんなって。俺もお前とメシ食いたかったし」
すると高浜が目を瞬き、目じりを下げた。
「ありがとう」
「おん」
「……ねえ、朱鷺くん」
「おん?」
「僕にひとつも触れないのは、僕に気を遣ってくれているの? それとも無意識?」
心臓が跳ね上がった。
こいつがどういう意図でこの質問をしているのか、全く読めない。
「……無意識では、ない」
そう答えるので精いっぱいだった。
高浜は「そっか」と呟き、控えめに、でもものすごく嬉しそうな笑顔になった。
「ありがとう。嬉しい」
あ、終わった。
触れないことを「嬉しい」と言われてしまった。
夏休みあと二日しかないのに、こんな調子じゃ夏休みまでに抱くことは絶望的だ。
◆◆◆
高浜と別れたあと、むしゃくしゃした俺はクラスの担任に電話をかけた。
《どうした?》
「先生、今から会える?」
《これまた急な……。先生、ヒマじゃないんだが……。せめて一時間待ってくれないか》
「抱きたい」
《……》
「今すぐ抱きたい」
《……分かったよ……。今から帰り支度するから、家で待ってなさい》
「うん」
その三十分後、先生が俺の家に来た。
相変わらず静かで誰もいない家を見て、先生はため息をつく。
「親御さん、今日もいないのか」
「その方がいいんだよ。先生がそんな顔すんなよ」
「わ、悪い……」
俺の両親はアルファの男女だ。政略結婚をさせられて一緒になった二人は、なんとか子どもを一人産んだものの、それ以上は無理だと言って子作りをやめた。
それから数年後ーー俺が幼稚園児くらいのころ、両親はこっそり家の外で愛を育んでいたオメガを家に連れてきて、そのまま住まわせた。俺は、両親とそいつらの番とで五人暮らしをしていたんだ。
その歪で複雑な家庭環境に根を上げた俺は、中学生に入った頃から家出を繰り返しては警察に連れ戻されていた。
そんな俺を見兼ねて両親が話し合った結果、俺が一人で生活できる年齢になったらーー高校に上がったタイミングでーー俺を家に残して両親が家を出るという決断をした。それは俺の望む結果でもあった。
そして今、俺はこのだだ広い家で一人暮らしをしている。ちなみに両親は、それぞれどこかで番としあわせそうに同棲している。
俺の両親は、夫婦の仲はイマイチだったが、俺のことは溺愛していた。だから俺と離れ離れになって二人とも悲しんでいたし、今でもときたま連絡が来る。
だが俺は両親が嫌いだ。溺愛されていることすら都合がいいヤツらだと感じて腹が立つ。そのため俺はあいつらが出ていってから今まで、電話に出たこともメッセージを返したことも、一度もない。
そんな俺を心配して、担任の先生はよく俺の家に家庭訪問に来てくれていた。
寂しさをまぎれさせるため、俺は先生に欲情した。哀れな俺を拒めなかった先生は、俺に体を許した。それから定期的に俺に抱かれているうちに、いつの間にやら先生が俺の体に夢中になり、こうしてワガママな俺の言いなりになった。
だが、先生は俺を好きになったりしないから安心できる。なぜなら先生の俺に対する最も大きな感情は、今も変わらず〝哀れ〟だからだ。
ソファに腰掛けた俺は、ズボンのチャックを開けながら手招きした。
「先生、来て」
「……」
「舐めて」
俺の前にひざまずき、俺のちんこをしゃぶる先生。その顔はすぐにとろんととろけ、だんだんと熱を帯びてくる。
「はは、そんなおいしいの、俺のちんこ」
「うん……」
「だらしねえ顔」
先生が美味しそうにちんこを咥えているところを見下ろすのは気分が良い。射精すると、これまた一滴残らず美味しそうに吞み込むし。
ベッドで四つん這いになれって言ったら、大人しく言うことを聞くし。
「尻、自分で拡げて」
「ん……」
「うわ、もうべちょべちょじゃん。まだ触ってないのに」
「は、早く……挿れて……」
「俺のちんこ欲しいの?」
「欲しいからぁ……っ」
「仕方ねえなあ」
乱暴に中に押し込んだだけで、先生は艶めかしい声で鳴いた。
いつも偉そうに生徒に指導している先生が、教え子のちんこで悦んで腰をくねらせている。
「はは。大人なのに、みっともねえな、先生」
「あっ、あんっ、あぁぁっ、気持ちい! 気持ちい!」
「そういや先生も、いつもブラックコーヒー飲んでるよね」
「あぁぁっ、んあっ、あぁっ、イクッ、イクッ」
「いくら大人ぶってたって、ベッドの上ではただのメスなんだよなあ」
遠慮なしに、先生の中に精液を注ぎ込む。するとケツがキュゥっと締まり、痙攣したかと思えば、先生のちんこから精液が噴出した。
「はは。触ってもないのに射精したんだ? 相変わらずの激よわちんこ」
「あっ……あぁ……。朱鷺……もう一回……」
「なに? 忙しいんじゃなかったの?」
「いいからぁ……っ、もう一回……」
「なんだよ、仕方ないな。わざわざ来てもらったし、先生が満足するまで抱いてやるよ」
「あっ、あぁーっ! 朱鷺っ、気持ちいっ、あぁっ、あぁあ!」
先生を思う存分乱れさせて、いくらか気分がすっきりした。
……何が触れられなくて「嬉しい」だ。はん。
ファミレスにいるときだって、こいつのそばにいるといつもより騒音が聞こえにくくなる気がした。
だから、高浜が小さな声で話していても、脳みそにくっきりとこいつの声が刻まれるのだろう。
「朱鷺くんは、コーヒーが好きなの?」
「……別に」
テーブルに載るコーヒーカップを指さして、高浜が尋ねた。
本当は氷たっぷりの炭酸飲料が飲みたかった。それなのに、かぶれ高浜が大人ぶってホットコーヒーなんて選んだから、ちょっと恥ずかしくなって俺も同じものを淹れた。ムカつくことに、あいつは砂糖もミルクも入れやがらかった。だから俺もブラックにした。なんでこんな暑い日に、熱くて苦い飲み物を飲まなきゃいけないんだ。
高浜はスス、とコーヒーを啜り、眉をハの字にした。
「もしかして、僕に合わせてくれた?」
「別に」
「無理しなくていいのに」
俺は頬がカッと熱くなったのを感じた。どうして俺が、同級生のぼっち底辺オメガに、子どもみたいな扱いをされないといけないんだ。ホットコーヒー飲んでいるくらいで偉そうにしやがって。
大人ぶってすましているお前も、どうせベッドの上ではアンアン喘いで俺のちんこ欲しがるんだろ。ああ、さっさと抱きてえ。どっちが上か、分からせてやりてえ。
食事を終えてファミレスを出た俺は、高浜に手を振った。
「じゃあな、高浜。気を付けて帰れよ」
「うん。今日は付き合ってくれてありがとう」
「気にすんなって。俺もお前とメシ食いたかったし」
すると高浜が目を瞬き、目じりを下げた。
「ありがとう」
「おん」
「……ねえ、朱鷺くん」
「おん?」
「僕にひとつも触れないのは、僕に気を遣ってくれているの? それとも無意識?」
心臓が跳ね上がった。
こいつがどういう意図でこの質問をしているのか、全く読めない。
「……無意識では、ない」
そう答えるので精いっぱいだった。
高浜は「そっか」と呟き、控えめに、でもものすごく嬉しそうな笑顔になった。
「ありがとう。嬉しい」
あ、終わった。
触れないことを「嬉しい」と言われてしまった。
夏休みあと二日しかないのに、こんな調子じゃ夏休みまでに抱くことは絶望的だ。
◆◆◆
高浜と別れたあと、むしゃくしゃした俺はクラスの担任に電話をかけた。
《どうした?》
「先生、今から会える?」
《これまた急な……。先生、ヒマじゃないんだが……。せめて一時間待ってくれないか》
「抱きたい」
《……》
「今すぐ抱きたい」
《……分かったよ……。今から帰り支度するから、家で待ってなさい》
「うん」
その三十分後、先生が俺の家に来た。
相変わらず静かで誰もいない家を見て、先生はため息をつく。
「親御さん、今日もいないのか」
「その方がいいんだよ。先生がそんな顔すんなよ」
「わ、悪い……」
俺の両親はアルファの男女だ。政略結婚をさせられて一緒になった二人は、なんとか子どもを一人産んだものの、それ以上は無理だと言って子作りをやめた。
それから数年後ーー俺が幼稚園児くらいのころ、両親はこっそり家の外で愛を育んでいたオメガを家に連れてきて、そのまま住まわせた。俺は、両親とそいつらの番とで五人暮らしをしていたんだ。
その歪で複雑な家庭環境に根を上げた俺は、中学生に入った頃から家出を繰り返しては警察に連れ戻されていた。
そんな俺を見兼ねて両親が話し合った結果、俺が一人で生活できる年齢になったらーー高校に上がったタイミングでーー俺を家に残して両親が家を出るという決断をした。それは俺の望む結果でもあった。
そして今、俺はこのだだ広い家で一人暮らしをしている。ちなみに両親は、それぞれどこかで番としあわせそうに同棲している。
俺の両親は、夫婦の仲はイマイチだったが、俺のことは溺愛していた。だから俺と離れ離れになって二人とも悲しんでいたし、今でもときたま連絡が来る。
だが俺は両親が嫌いだ。溺愛されていることすら都合がいいヤツらだと感じて腹が立つ。そのため俺はあいつらが出ていってから今まで、電話に出たこともメッセージを返したことも、一度もない。
そんな俺を心配して、担任の先生はよく俺の家に家庭訪問に来てくれていた。
寂しさをまぎれさせるため、俺は先生に欲情した。哀れな俺を拒めなかった先生は、俺に体を許した。それから定期的に俺に抱かれているうちに、いつの間にやら先生が俺の体に夢中になり、こうしてワガママな俺の言いなりになった。
だが、先生は俺を好きになったりしないから安心できる。なぜなら先生の俺に対する最も大きな感情は、今も変わらず〝哀れ〟だからだ。
ソファに腰掛けた俺は、ズボンのチャックを開けながら手招きした。
「先生、来て」
「……」
「舐めて」
俺の前にひざまずき、俺のちんこをしゃぶる先生。その顔はすぐにとろんととろけ、だんだんと熱を帯びてくる。
「はは、そんなおいしいの、俺のちんこ」
「うん……」
「だらしねえ顔」
先生が美味しそうにちんこを咥えているところを見下ろすのは気分が良い。射精すると、これまた一滴残らず美味しそうに吞み込むし。
ベッドで四つん這いになれって言ったら、大人しく言うことを聞くし。
「尻、自分で拡げて」
「ん……」
「うわ、もうべちょべちょじゃん。まだ触ってないのに」
「は、早く……挿れて……」
「俺のちんこ欲しいの?」
「欲しいからぁ……っ」
「仕方ねえなあ」
乱暴に中に押し込んだだけで、先生は艶めかしい声で鳴いた。
いつも偉そうに生徒に指導している先生が、教え子のちんこで悦んで腰をくねらせている。
「はは。大人なのに、みっともねえな、先生」
「あっ、あんっ、あぁぁっ、気持ちい! 気持ちい!」
「そういや先生も、いつもブラックコーヒー飲んでるよね」
「あぁぁっ、んあっ、あぁっ、イクッ、イクッ」
「いくら大人ぶってたって、ベッドの上ではただのメスなんだよなあ」
遠慮なしに、先生の中に精液を注ぎ込む。するとケツがキュゥっと締まり、痙攣したかと思えば、先生のちんこから精液が噴出した。
「はは。触ってもないのに射精したんだ? 相変わらずの激よわちんこ」
「あっ……あぁ……。朱鷺……もう一回……」
「なに? 忙しいんじゃなかったの?」
「いいからぁ……っ、もう一回……」
「なんだよ、仕方ないな。わざわざ来てもらったし、先生が満足するまで抱いてやるよ」
「あっ、あぁーっ! 朱鷺っ、気持ちいっ、あぁっ、あぁあ!」
先生を思う存分乱れさせて、いくらか気分がすっきりした。
……何が触れられなくて「嬉しい」だ。はん。
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