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おまけ:夏の北海道
北海道旅行-3
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小鳥遊が連れて行ってくれたところは、富良野のラベンダー畑だった。
「これまた可愛らしいところに……」
突然「恋人っぽいデートがしたい」なんて言い出すようなヤツだ。すました顔をしておきながら、かなりのロマンティストだぞこいつ。
……で、俺は小鳥遊のそういうところにトキメキを禁じ得ない。
「なに。お前、俺とラベンダー畑に来たかったわけ?」
「……仕事と帰省で疲れているだろう、お前」
「……?」
「ラベンダーの香りには、リラックス効果があるらしいから」
「ンッ……!!」
なにこいつ。なにこいつ!!
旅行一日目はホテルにこもってセックスさせてくれて?
二日目は俺の疲れを取るためにラベンダー畑?
全部俺のためじゃん!! こいつ俺のことしか考えていない!!
俺は小鳥遊の腕をがっしり掴み、人けのない建物の裏に連れて行った。
「お、おい……。どうした」
俺は無言のまま、小鳥遊を抱き寄せキスをした。
「んっ……、ど、どうしたんだ、月見里……っ」
「俺、お前のそういうとこ好き」
「え」
「めちゃくちゃ好き」
「……」
小鳥遊は小さく吐息を漏らし、俺を抱き返した。
「俺も、こんな些細なことで喜んでくれるお前が好きだよ」
「はっ。どこが些細だバカ野郎」
小鳥遊が太ももで俺の股間を押し上げる。
「興奮しているようだが、ホテルに行くか?」
「さすがに今はホテルよりラベンダー畑楽しみたい」
「……そうか」
小鳥遊の「そうか」がホッとした声だったので、俺の選択は正しかったのだと確信した。
それからの俺たちはまったりとラベンダー畑を散策した。風に乗ってほんのり漂ってくるラベンダーの香りに癒される。花のまわりを飛んでいるミツバチも可愛かったし、ラベンダーを見て喜んでいる子どもたちも可愛かった。
「やば。なんだこの空間。天国か?」
「どこを見ても安らぐな」
「なんかラベンダー育てたくなってきた」
「ベランダで育ててみるか」
「いいな」
広大なラベンダー畑の敷地内には、売店が山ほどあった。
俺たちはそこでラベンダー味のソフトクリームなんてものを購入した。
「見ろ小鳥遊……ヤベェ色してんぞ……」
「薄紫色できれいじゃないか」
「きれいだけど……ほんとに食えるのかこれ……」
「食ってみろ。案外美味いぞ」
ソフトクリームを口に入れると、爽やかなくちどけと共に、ほんのりとラベンダーの香りがした。
「……ほんとだ。美味い」
「癒されるな……」
「うん。癒される……」
すっかりラベンダーの香りが気にいった俺たちは、土産屋でラベンダーの種や、ラベンダーの香りがする入浴剤と石鹸を購入した。
思った以上に堪能した俺たちは、車に戻ってからもしばらくラベンダーとの思い出に浸っていた。
「……また来たい、ここ」
「ん。また来よう」
小鳥遊は車のエンジンをかけ、富良野の有名なケーキ屋に向かった。
「ここのケーキ、美味いらしい」
「うん。美味いよ、ここ」
「知ってるのか」
「当然。道民だからな」
「食い飽きてるか?」
「このケーキ屋の良いところはな、何度食っても飽きないところだ」
「そうか。じゃあ、寄っていいか?」
「俺も食いたかったから、寄りたい」
ここのケーキ屋で有名なのはプリンとチーズケーキだ。小鳥遊にも強制的にそれを注文させた。
小鳥遊はチーズケーキを見つめ、こくりと唾を呑み込んだ。どんだけ楽しみにしてたんだ、こいつ。かわいい。
「いただきます」
「いただきます」
小鳥遊はチーズケーキを口に入れた瞬間、目を見開いた。それからホウ……と吐息を漏らし、全身の力を抜く。
俺はニヤニヤしながら言った。
「どうだ。美味いだろ」
「美味い。美味いが……どうしてお前が得意げなんだ?」
「道民だからな」
「北海道には美味いものしかないな」
「だろだろ」
「その筆頭がお前だが」
「はっ?」
ボッと顔を赤らめた俺と、ニヤニヤし返す小鳥遊。
「なっ。何言ってんだよ」
「お前ほど美味いものを俺は食ったことがないからな。さすが北海道産だ」
「やめろっ。恥ずかしいこと言うんじゃねえっ」
小鳥遊がくだらないことを言ったせいで、せっかくの美味しいチーズケーキの味が分からなくなってしまった。
チーズケーキを食べ終えたあとは、近くのチーズ工房でワインとチーズを買った。今晩の晩酌用らしい。
かなり北海道旅行を満喫している小鳥遊に、俺まで嬉しくなる。
「お前、食うの好きだもんな。北海道と相性が良い」
「実はずっと北海道に行ってみたかった」
「で、どうだ? 初の北海道は」
「最高だ」
帰りも当然のように小鳥遊が運転しようとしていたので、俺が止めた。
「ちょっと待て。帰りは俺が運転する」
「お前免許持ってんの?」
「持ってるわ!」
「別にいい。俺が運転する」
「今日だけで何時間運転してると思ってんだよ。疲れてるだろ、俺がする」
「……じゃあ、頼む」
小鳥遊が「悪いな」と謝った。何を謝ることがあるんだ。
案の定、疲れ切っていたようだ。しばらくすると助手席から寝息が聞こえてきた。
「……ありがとな、小鳥遊。今までで一番楽しい北海道旅行だよ」
ホテルに着いたらまた忙しくなるんだ。帰り道くらいゆっくり休めよ。
なんて考えていたら、隣で寝ている小鳥遊がブルッと震えた。
「これまた可愛らしいところに……」
突然「恋人っぽいデートがしたい」なんて言い出すようなヤツだ。すました顔をしておきながら、かなりのロマンティストだぞこいつ。
……で、俺は小鳥遊のそういうところにトキメキを禁じ得ない。
「なに。お前、俺とラベンダー畑に来たかったわけ?」
「……仕事と帰省で疲れているだろう、お前」
「……?」
「ラベンダーの香りには、リラックス効果があるらしいから」
「ンッ……!!」
なにこいつ。なにこいつ!!
旅行一日目はホテルにこもってセックスさせてくれて?
二日目は俺の疲れを取るためにラベンダー畑?
全部俺のためじゃん!! こいつ俺のことしか考えていない!!
俺は小鳥遊の腕をがっしり掴み、人けのない建物の裏に連れて行った。
「お、おい……。どうした」
俺は無言のまま、小鳥遊を抱き寄せキスをした。
「んっ……、ど、どうしたんだ、月見里……っ」
「俺、お前のそういうとこ好き」
「え」
「めちゃくちゃ好き」
「……」
小鳥遊は小さく吐息を漏らし、俺を抱き返した。
「俺も、こんな些細なことで喜んでくれるお前が好きだよ」
「はっ。どこが些細だバカ野郎」
小鳥遊が太ももで俺の股間を押し上げる。
「興奮しているようだが、ホテルに行くか?」
「さすがに今はホテルよりラベンダー畑楽しみたい」
「……そうか」
小鳥遊の「そうか」がホッとした声だったので、俺の選択は正しかったのだと確信した。
それからの俺たちはまったりとラベンダー畑を散策した。風に乗ってほんのり漂ってくるラベンダーの香りに癒される。花のまわりを飛んでいるミツバチも可愛かったし、ラベンダーを見て喜んでいる子どもたちも可愛かった。
「やば。なんだこの空間。天国か?」
「どこを見ても安らぐな」
「なんかラベンダー育てたくなってきた」
「ベランダで育ててみるか」
「いいな」
広大なラベンダー畑の敷地内には、売店が山ほどあった。
俺たちはそこでラベンダー味のソフトクリームなんてものを購入した。
「見ろ小鳥遊……ヤベェ色してんぞ……」
「薄紫色できれいじゃないか」
「きれいだけど……ほんとに食えるのかこれ……」
「食ってみろ。案外美味いぞ」
ソフトクリームを口に入れると、爽やかなくちどけと共に、ほんのりとラベンダーの香りがした。
「……ほんとだ。美味い」
「癒されるな……」
「うん。癒される……」
すっかりラベンダーの香りが気にいった俺たちは、土産屋でラベンダーの種や、ラベンダーの香りがする入浴剤と石鹸を購入した。
思った以上に堪能した俺たちは、車に戻ってからもしばらくラベンダーとの思い出に浸っていた。
「……また来たい、ここ」
「ん。また来よう」
小鳥遊は車のエンジンをかけ、富良野の有名なケーキ屋に向かった。
「ここのケーキ、美味いらしい」
「うん。美味いよ、ここ」
「知ってるのか」
「当然。道民だからな」
「食い飽きてるか?」
「このケーキ屋の良いところはな、何度食っても飽きないところだ」
「そうか。じゃあ、寄っていいか?」
「俺も食いたかったから、寄りたい」
ここのケーキ屋で有名なのはプリンとチーズケーキだ。小鳥遊にも強制的にそれを注文させた。
小鳥遊はチーズケーキを見つめ、こくりと唾を呑み込んだ。どんだけ楽しみにしてたんだ、こいつ。かわいい。
「いただきます」
「いただきます」
小鳥遊はチーズケーキを口に入れた瞬間、目を見開いた。それからホウ……と吐息を漏らし、全身の力を抜く。
俺はニヤニヤしながら言った。
「どうだ。美味いだろ」
「美味い。美味いが……どうしてお前が得意げなんだ?」
「道民だからな」
「北海道には美味いものしかないな」
「だろだろ」
「その筆頭がお前だが」
「はっ?」
ボッと顔を赤らめた俺と、ニヤニヤし返す小鳥遊。
「なっ。何言ってんだよ」
「お前ほど美味いものを俺は食ったことがないからな。さすが北海道産だ」
「やめろっ。恥ずかしいこと言うんじゃねえっ」
小鳥遊がくだらないことを言ったせいで、せっかくの美味しいチーズケーキの味が分からなくなってしまった。
チーズケーキを食べ終えたあとは、近くのチーズ工房でワインとチーズを買った。今晩の晩酌用らしい。
かなり北海道旅行を満喫している小鳥遊に、俺まで嬉しくなる。
「お前、食うの好きだもんな。北海道と相性が良い」
「実はずっと北海道に行ってみたかった」
「で、どうだ? 初の北海道は」
「最高だ」
帰りも当然のように小鳥遊が運転しようとしていたので、俺が止めた。
「ちょっと待て。帰りは俺が運転する」
「お前免許持ってんの?」
「持ってるわ!」
「別にいい。俺が運転する」
「今日だけで何時間運転してると思ってんだよ。疲れてるだろ、俺がする」
「……じゃあ、頼む」
小鳥遊が「悪いな」と謝った。何を謝ることがあるんだ。
案の定、疲れ切っていたようだ。しばらくすると助手席から寝息が聞こえてきた。
「……ありがとな、小鳥遊。今までで一番楽しい北海道旅行だよ」
ホテルに着いたらまた忙しくなるんだ。帰り道くらいゆっくり休めよ。
なんて考えていたら、隣で寝ている小鳥遊がブルッと震えた。
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