【完結】【R18BL】男泣かせの名器くん、犬猿の仲に泣かされる

ちゃっぷす

文字の大きさ
上 下
63 / 72
おまけ:夏の北海道

北海道旅行-3

しおりを挟む
 小鳥遊が連れて行ってくれたところは、富良野のラベンダー畑だった。

「これまた可愛らしいところに……」

 突然「恋人っぽいデートがしたい」なんて言い出すようなヤツだ。すました顔をしておきながら、かなりのロマンティストだぞこいつ。
 ……で、俺は小鳥遊のそういうところにトキメキを禁じ得ない。

「なに。お前、俺とラベンダー畑に来たかったわけ?」
「……仕事と帰省で疲れているだろう、お前」
「……?」
「ラベンダーの香りには、リラックス効果があるらしいから」
「ンッ……!!」

 なにこいつ。なにこいつ!!
 旅行一日目はホテルにこもってセックスさせてくれて?
 二日目は俺の疲れを取るためにラベンダー畑?
 全部俺のためじゃん!! こいつ俺のことしか考えていない!!

 俺は小鳥遊の腕をがっしり掴み、人けのない建物の裏に連れて行った。

「お、おい……。どうした」

 俺は無言のまま、小鳥遊を抱き寄せキスをした。

「んっ……、ど、どうしたんだ、月見里……っ」
「俺、お前のそういうとこ好き」
「え」
「めちゃくちゃ好き」
「……」

 小鳥遊は小さく吐息を漏らし、俺を抱き返した。

「俺も、こんな些細なことで喜んでくれるお前が好きだよ」
「はっ。どこが些細だバカ野郎」

 小鳥遊が太ももで俺の股間を押し上げる。

「興奮しているようだが、ホテルに行くか?」
「さすがに今はホテルよりラベンダー畑楽しみたい」
「……そうか」

 小鳥遊の「そうか」がホッとした声だったので、俺の選択は正しかったのだと確信した。

 それからの俺たちはまったりとラベンダー畑を散策した。風に乗ってほんのり漂ってくるラベンダーの香りに癒される。花のまわりを飛んでいるミツバチも可愛かったし、ラベンダーを見て喜んでいる子どもたちも可愛かった。

「やば。なんだこの空間。天国か?」
「どこを見ても安らぐな」
「なんかラベンダー育てたくなってきた」
「ベランダで育ててみるか」
「いいな」

 広大なラベンダー畑の敷地内には、売店が山ほどあった。
 俺たちはそこでラベンダー味のソフトクリームなんてものを購入した。

「見ろ小鳥遊……ヤベェ色してんぞ……」
「薄紫色できれいじゃないか」
「きれいだけど……ほんとに食えるのかこれ……」
「食ってみろ。案外美味いぞ」

 ソフトクリームを口に入れると、爽やかなくちどけと共に、ほんのりとラベンダーの香りがした。

「……ほんとだ。美味い」
「癒されるな……」
「うん。癒される……」

 すっかりラベンダーの香りが気にいった俺たちは、土産屋でラベンダーの種や、ラベンダーの香りがする入浴剤と石鹸を購入した。
 思った以上に堪能した俺たちは、車に戻ってからもしばらくラベンダーとの思い出に浸っていた。

「……また来たい、ここ」
「ん。また来よう」

 小鳥遊は車のエンジンをかけ、富良野の有名なケーキ屋に向かった。

「ここのケーキ、美味いらしい」
「うん。美味いよ、ここ」
「知ってるのか」
「当然。道民だからな」
「食い飽きてるか?」
「このケーキ屋の良いところはな、何度食っても飽きないところだ」
「そうか。じゃあ、寄っていいか?」
「俺も食いたかったから、寄りたい」

 ここのケーキ屋で有名なのはプリンとチーズケーキだ。小鳥遊にも強制的にそれを注文させた。
 小鳥遊はチーズケーキを見つめ、こくりと唾を呑み込んだ。どんだけ楽しみにしてたんだ、こいつ。かわいい。

「いただきます」
「いただきます」

 小鳥遊はチーズケーキを口に入れた瞬間、目を見開いた。それからホウ……と吐息を漏らし、全身の力を抜く。
 俺はニヤニヤしながら言った。

「どうだ。美味いだろ」
「美味い。美味いが……どうしてお前が得意げなんだ?」
「道民だからな」
「北海道には美味いものしかないな」
「だろだろ」
「その筆頭がお前だが」
「はっ?」

 ボッと顔を赤らめた俺と、ニヤニヤし返す小鳥遊。

「なっ。何言ってんだよ」
「お前ほど美味いものを俺は食ったことがないからな。さすが北海道産だ」
「やめろっ。恥ずかしいこと言うんじゃねえっ」

 小鳥遊がくだらないことを言ったせいで、せっかくの美味しいチーズケーキの味が分からなくなってしまった。

 チーズケーキを食べ終えたあとは、近くのチーズ工房でワインとチーズを買った。今晩の晩酌用らしい。
 かなり北海道旅行を満喫している小鳥遊に、俺まで嬉しくなる。

「お前、食うの好きだもんな。北海道と相性が良い」
「実はずっと北海道に行ってみたかった」
「で、どうだ? 初の北海道は」
「最高だ」

 帰りも当然のように小鳥遊が運転しようとしていたので、俺が止めた。

「ちょっと待て。帰りは俺が運転する」
「お前免許持ってんの?」
「持ってるわ!」
「別にいい。俺が運転する」
「今日だけで何時間運転してると思ってんだよ。疲れてるだろ、俺がする」
「……じゃあ、頼む」

 小鳥遊が「悪いな」と謝った。何を謝ることがあるんだ。
 案の定、疲れ切っていたようだ。しばらくすると助手席から寝息が聞こえてきた。

「……ありがとな、小鳥遊。今までで一番楽しい北海道旅行だよ」

 ホテルに着いたらまた忙しくなるんだ。帰り道くらいゆっくり休めよ。
 なんて考えていたら、隣で寝ている小鳥遊がブルッと震えた。
しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

イケメンの後輩にめちゃめちゃお願いされて、一回だけやってしまったら、大変なことになってしまった話

ゆなな
BL
タイトルどおり熱烈に年下に口説かれるお話。Twitterに載せていたものに加筆しました。Twitter→@yuna_org

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

カテーテルの使い方

真城詩
BL
短編読みきりです。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

処理中です...