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後日談
デート-2(小鳥遊side)
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来週末、デートをすることに決まった。
問題はどこへ行くか、なのだが――
「お前どこ行きたい?」
「うーん。お前はどこ行きたい?」
「……」
「……」
さっきからこの繰り返しだ。
俺は少しでも月見里が退屈しないところに行きたい。だから月見里に決めてもらいたいのだが……
月見里にはそもそも、「行きたい場所」という概念がない。
途方に暮れていると、月見里が勢いよく立ち上がった。そして仕事部屋に入ったかと思えば、でかいホワイトボードを転がしてきた。
月見里はそのホワイトボードに、でかでかとこう書いた。
『議題:週末デートについて』
そしてキリッとした表情でホワイトボードをペンで叩く。
「じゃあ、今から週末デートについて話し合っていく。小鳥遊、何か案はないか」
「……」
完全に課長代理モードに入ったようだ。
俺が呆れて物も言えなくなっている中、月見里はペンを走らせる。
「まず『デートっぽい場所』を出していこう。デートと言えば……どこだ、小鳥遊」
「……」
「なんでもいい。とりあえず思いついたところを書き出していこう」
「……水族館、とかですかね」
しまった。俺も無意識に仕事モードに入ってしまったようだ。素直に案を出してしまった。月見里に敬語を使っているし。
月見里がホワイトボードに「水族館」と書く。
「うん、良い案だ。他にもないか」
「……俺ばっかりに聞いてないで、お前も案を出したらどうだ」
「確かにそうだな。うーん……。デート……と言えば、テーマパークとかかな……」
月見里はペンを走らせながら、俺に「他には?」と質問した。
「……映画、とか」
「いいじゃないか」
課長代理版月見里は、絶対に部下の意見を否定しない。こんなときに思うことでは本来ないはずなのだが……やはりこいつは良い上司だと思った。
まあ、こいつが仕事モードに入ってくれたおかげで、俺も気がねなく案を出せるようになったのは確かだ。
「あとは……動物園?」
「いいな! 癒されそうだ。他には……うーん、温泉地に小旅行もいいんじゃないか?」
「お、いいな。プラネタリウムとか……美術館とか……?」
「うわー、いいじゃん。夜景もいいな」
だんだんホワイトボードが埋まっていく。
あらかた思いつくものを出したあとは、ひとつひとつ吟味していくことになった。
……と、その前に、俺は手を挙げる。
「どうした、小鳥遊」
「ひとついいですか」
「なんでも言ってくれ」
「俺は、夫婦感の強いデートより、恋人感の強いデートがしたいです」
「なるほど。テーマは『恋人っぽいデート』……か。いいな」
じゃあ……と、あくまで月見里の主観ではあるが、「温泉地」や「動物園」などの夫婦感や家族感が強めの選択肢や、「美術館」などの恋人デート感が薄めの場所などを二重線で消した。
その結果、「テーマパーク」「水族館」「映画館」「プラネタリウム」「夜景」の五案まで絞られた。
「テーマパークか……」
月見里と俺は押し黙った。おそらく俺たちは、同じことを想像しているはずだ。
アラサーの男二人が、ド派手なカチューシャを付けている姿を。首にはポップコーンの容器を吊り下げ、頬にはペイントが――
「……」
「……」
キツい。
「やめとくか――」
俺がそう言いかけると、月見里が遮った。
「いや待てっ!」
月見里は額に手を当て、なにやら笑っている。気でも変になったのだろうか。
「小鳥遊……。考えてもみろ。テーマパークだぞ。これほど恋人らしいデートはあるか?」
「いや……さすがにもうそんな年齢では――」
「小鳥遊!!」
「はい」
「テーマパークに年齢制限はない」
「そんなことは分かっている。……お前なんか無理してない? さっきから様子が――」
また言葉を遮られる。
「だが、お前はそう感じているんだな? 〝もうテーマパークでデートするような年齢ではない〟と」
「はい」
「小鳥遊。俺たちは若返らない」
「そんなことは分かっている」
「つまりだ。今行かなければ、俺たちは二度と行かないだろう」
「……」
確かに。(?)
月見里はバンッとホワイトボードに手を叩きつけた。
「小鳥遊!! 行くぞテーマパーク!!」
「まじで言ってる?」
「行くぞ!!」
そういうわけで、俺と月見里は来週末にテーマパークに行くことになったらしい。
問題はどこへ行くか、なのだが――
「お前どこ行きたい?」
「うーん。お前はどこ行きたい?」
「……」
「……」
さっきからこの繰り返しだ。
俺は少しでも月見里が退屈しないところに行きたい。だから月見里に決めてもらいたいのだが……
月見里にはそもそも、「行きたい場所」という概念がない。
途方に暮れていると、月見里が勢いよく立ち上がった。そして仕事部屋に入ったかと思えば、でかいホワイトボードを転がしてきた。
月見里はそのホワイトボードに、でかでかとこう書いた。
『議題:週末デートについて』
そしてキリッとした表情でホワイトボードをペンで叩く。
「じゃあ、今から週末デートについて話し合っていく。小鳥遊、何か案はないか」
「……」
完全に課長代理モードに入ったようだ。
俺が呆れて物も言えなくなっている中、月見里はペンを走らせる。
「まず『デートっぽい場所』を出していこう。デートと言えば……どこだ、小鳥遊」
「……」
「なんでもいい。とりあえず思いついたところを書き出していこう」
「……水族館、とかですかね」
しまった。俺も無意識に仕事モードに入ってしまったようだ。素直に案を出してしまった。月見里に敬語を使っているし。
月見里がホワイトボードに「水族館」と書く。
「うん、良い案だ。他にもないか」
「……俺ばっかりに聞いてないで、お前も案を出したらどうだ」
「確かにそうだな。うーん……。デート……と言えば、テーマパークとかかな……」
月見里はペンを走らせながら、俺に「他には?」と質問した。
「……映画、とか」
「いいじゃないか」
課長代理版月見里は、絶対に部下の意見を否定しない。こんなときに思うことでは本来ないはずなのだが……やはりこいつは良い上司だと思った。
まあ、こいつが仕事モードに入ってくれたおかげで、俺も気がねなく案を出せるようになったのは確かだ。
「あとは……動物園?」
「いいな! 癒されそうだ。他には……うーん、温泉地に小旅行もいいんじゃないか?」
「お、いいな。プラネタリウムとか……美術館とか……?」
「うわー、いいじゃん。夜景もいいな」
だんだんホワイトボードが埋まっていく。
あらかた思いつくものを出したあとは、ひとつひとつ吟味していくことになった。
……と、その前に、俺は手を挙げる。
「どうした、小鳥遊」
「ひとついいですか」
「なんでも言ってくれ」
「俺は、夫婦感の強いデートより、恋人感の強いデートがしたいです」
「なるほど。テーマは『恋人っぽいデート』……か。いいな」
じゃあ……と、あくまで月見里の主観ではあるが、「温泉地」や「動物園」などの夫婦感や家族感が強めの選択肢や、「美術館」などの恋人デート感が薄めの場所などを二重線で消した。
その結果、「テーマパーク」「水族館」「映画館」「プラネタリウム」「夜景」の五案まで絞られた。
「テーマパークか……」
月見里と俺は押し黙った。おそらく俺たちは、同じことを想像しているはずだ。
アラサーの男二人が、ド派手なカチューシャを付けている姿を。首にはポップコーンの容器を吊り下げ、頬にはペイントが――
「……」
「……」
キツい。
「やめとくか――」
俺がそう言いかけると、月見里が遮った。
「いや待てっ!」
月見里は額に手を当て、なにやら笑っている。気でも変になったのだろうか。
「小鳥遊……。考えてもみろ。テーマパークだぞ。これほど恋人らしいデートはあるか?」
「いや……さすがにもうそんな年齢では――」
「小鳥遊!!」
「はい」
「テーマパークに年齢制限はない」
「そんなことは分かっている。……お前なんか無理してない? さっきから様子が――」
また言葉を遮られる。
「だが、お前はそう感じているんだな? 〝もうテーマパークでデートするような年齢ではない〟と」
「はい」
「小鳥遊。俺たちは若返らない」
「そんなことは分かっている」
「つまりだ。今行かなければ、俺たちは二度と行かないだろう」
「……」
確かに。(?)
月見里はバンッとホワイトボードに手を叩きつけた。
「小鳥遊!! 行くぞテーマパーク!!」
「まじで言ってる?」
「行くぞ!!」
そういうわけで、俺と月見里は来週末にテーマパークに行くことになったらしい。
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