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出張
第十五話
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午後六時。大阪支社での会議を終えた俺と小鳥遊は、カトウさんが予約してくれたホテルの部屋に入った。
目の前の光景に、俺は膝から崩れ落ちる。
「ツインじゃなかったのかよ……!!」
「どうやらカトウさんが間違えたようだな」
ツインルームだと聞いていたのに、実際に部屋にあったのはダブルベッドただひとつ。
俺はキッと小鳥遊を睨みつける。
「お前の差し金じゃないだろうな!?」
「おいおい。自分の部下の失敗を人になすりつけるな。まあ、俺もお前の部下なわけだし、たとえ俺の差し金だったとしても、この失敗は最終的にはお前の責任だ」
「極論極まりないな!?」
「お前は保身のために部下に責任をなすりつけるようなクソ上司なのか? ん?」
「ぐぅぅ……。なぜ俺が責められているんだ……」
「お前が俺たちの上司だからだ」
訳が分からない理論で論破され、俺は押し黙るほかなかった。上司とはなんと損な役回りなのだろうか。
だが……そうだな。カトウさんに任せっきりで、俺が事前になにひとつ確認しなかったのも悪いな。そう考えることにしよう。
「仕方ないな……」
「ああ。仕方ない」
「はあ、汗くさ。先にシャワーさせてもらうぞ」
「どうぞお先に、課長代理サン」
体を洗っているとき、俺は「むぅ……」と唸った。
今晩、俺は小鳥遊とダブルベッドで寝る。
どうせ小鳥遊のことだ。性欲に抗えず俺を抱こうとするに決まっている。
もちろん俺は拒否するつもりだ。当然だ。相手は小鳥遊なんだからな。
たとえ小鳥遊のセックスがとてつもなく気持ちよくても、だ。
しかし。しかしだ。
俺よりあいつの方が力が強い。俺が拒んでも、無理やり挿入されるかもしれない。
もしそうなったら……
「ん……」
俺は尻にシャワーを当てながら、指で中を念入りに洗った。
違う。万が一のことが起こったときに、汚い尻だと思われたくないからというだけだ。
ただ、それだけの理由だ。
「長かったな」
バスルームから出てきた俺に、小鳥遊が言った。
俺は「別に」とだけ応え、ベッドに腰掛ける。
タバコを一本吸ってから、小鳥遊がバスルームに入った。
シャワーの音が遠くから聞こえる。
俺はベッドの端で横になり、スマホをいじった。無意識に、ゲイ向けマッチングアプリの「バド(小鳥遊)」のページを眺めていた。
【絶倫・遅漏です。長時間付き合ってくださる方よろしくお願いします。】
【プレイの希望があれば教えてください。ソフトSMくらいまでならいけます(俺はSです)】
【甘やかすのも得意です】
【遅漏なので失神するまでイカせてしまうかもしれません。長時間耐えられる人お願いします】
何度読み返しても喉が鳴る。
お、俺は、今晩、この人に――
いや、いやいや。待て。何を期待しているんだ俺は。
いいか。誘われても拒否するんだ。こいつはバドさんではない。小鳥遊なんだ。
「何を一人で百面相しているんだ?」
「うわぁぁぁっ!!」
風呂上がりの小鳥遊に声をかけられ、俺は思わずスマホを床に投げ捨てた。
小鳥遊は反対側のベッドに腰掛ける。
「騒がしいヤツだな」
「お、お前が急に声をかけるからだっ」
「さいですか」
小鳥遊が布団の中に入ってくる。
来る。襲われる。無理やりヤられる。
「……?」
来ない。
こっそりうしろに目をやると、ベッドの端で横になっている小鳥遊の背中が見えた。
……あれ?
物音に気付いたのか、小鳥遊が顔だけ振り返る。目が合った俺は体を強張らせたのだが――
「月見里。明日早いんだから、スマホばっか見てないで早く寝ろよ」
「お、おう」
「じゃ、おやすみ」
「お、おやすみ……」
挨拶だけして、小鳥遊はまた背を向けた。
あれ? あれ?
こいつ、俺を抱く気がない……だと……?
俺は顔をボッと赤らめた。
ダブルベッドだからと考えすぎた。
お、俺。何やってんだ。尻の準備までして。
恥ずかしすぎて死にそうだ。
もうさっさと寝よう。このことは全て寝て忘れる。大丈夫だ。寝たら忘れる。
俺は慌ただしく頭まで布団に潜り込んだ。
それと同時に、うしろから小鳥遊に抱きしめられる。
「っ!?」
「さっきから何をバタバタしているんだ?」
そう言って、小鳥遊が俺の耳たぶを唇で挟む。
「ん……」
「何もされないかと思った?」
「う、うるさい、やめろそれ……」
「はは。お前の口は本当に甘えるのが下手だな。でも――」
「あっ……」
小鳥遊の指がツンと俺の股間に触れる。
「こっちは甘え上手だなあ。抱きしめられただけでちょっと勃ってる」
「~~……」
バスローブの中に小鳥遊の手が差し込まれる。俺のまだ柔らかいペニスを握り、指で弄ぶ。
「こうされるの、期待してたんだろ?」
「っ……っ、……お前、まだそんなこと言ってんの……っ?」
「ん?」
俺は小鳥遊の顔に目をやり、睨みつける。
「俺が期待してたんじゃない……、お前がただ、俺を抱きたいだけだ……っ」
おもむろに、小鳥遊が上体を起こす。布団を床に落とし、髪をかき上げた。
「俺はお前と違って意地っ張りじゃないからな。それを否定するつもりはサラサラない」
「え」
そして小鳥遊が意地悪く笑った。
「俺にとっては、どっちがどうとかどうでもいい。どっちでもすることは同じなんだからな。新幹線の中で挑発したのは、お前をここで寝かせるためだ。俺がお前を抱くために」
「あっ……!!」
乱暴に脚を開かれ、アナルに指を入れられる。何度か擦ってから指を抜いた小鳥遊は、その指をペロリと舐めた。
「なんだ。お前もその気だったんじゃないか」
「~~……っ」
「さて。明日の会議は午前十時から。九時にここを出れば間に合うな」
目の前の光景に、俺は膝から崩れ落ちる。
「ツインじゃなかったのかよ……!!」
「どうやらカトウさんが間違えたようだな」
ツインルームだと聞いていたのに、実際に部屋にあったのはダブルベッドただひとつ。
俺はキッと小鳥遊を睨みつける。
「お前の差し金じゃないだろうな!?」
「おいおい。自分の部下の失敗を人になすりつけるな。まあ、俺もお前の部下なわけだし、たとえ俺の差し金だったとしても、この失敗は最終的にはお前の責任だ」
「極論極まりないな!?」
「お前は保身のために部下に責任をなすりつけるようなクソ上司なのか? ん?」
「ぐぅぅ……。なぜ俺が責められているんだ……」
「お前が俺たちの上司だからだ」
訳が分からない理論で論破され、俺は押し黙るほかなかった。上司とはなんと損な役回りなのだろうか。
だが……そうだな。カトウさんに任せっきりで、俺が事前になにひとつ確認しなかったのも悪いな。そう考えることにしよう。
「仕方ないな……」
「ああ。仕方ない」
「はあ、汗くさ。先にシャワーさせてもらうぞ」
「どうぞお先に、課長代理サン」
体を洗っているとき、俺は「むぅ……」と唸った。
今晩、俺は小鳥遊とダブルベッドで寝る。
どうせ小鳥遊のことだ。性欲に抗えず俺を抱こうとするに決まっている。
もちろん俺は拒否するつもりだ。当然だ。相手は小鳥遊なんだからな。
たとえ小鳥遊のセックスがとてつもなく気持ちよくても、だ。
しかし。しかしだ。
俺よりあいつの方が力が強い。俺が拒んでも、無理やり挿入されるかもしれない。
もしそうなったら……
「ん……」
俺は尻にシャワーを当てながら、指で中を念入りに洗った。
違う。万が一のことが起こったときに、汚い尻だと思われたくないからというだけだ。
ただ、それだけの理由だ。
「長かったな」
バスルームから出てきた俺に、小鳥遊が言った。
俺は「別に」とだけ応え、ベッドに腰掛ける。
タバコを一本吸ってから、小鳥遊がバスルームに入った。
シャワーの音が遠くから聞こえる。
俺はベッドの端で横になり、スマホをいじった。無意識に、ゲイ向けマッチングアプリの「バド(小鳥遊)」のページを眺めていた。
【絶倫・遅漏です。長時間付き合ってくださる方よろしくお願いします。】
【プレイの希望があれば教えてください。ソフトSMくらいまでならいけます(俺はSです)】
【甘やかすのも得意です】
【遅漏なので失神するまでイカせてしまうかもしれません。長時間耐えられる人お願いします】
何度読み返しても喉が鳴る。
お、俺は、今晩、この人に――
いや、いやいや。待て。何を期待しているんだ俺は。
いいか。誘われても拒否するんだ。こいつはバドさんではない。小鳥遊なんだ。
「何を一人で百面相しているんだ?」
「うわぁぁぁっ!!」
風呂上がりの小鳥遊に声をかけられ、俺は思わずスマホを床に投げ捨てた。
小鳥遊は反対側のベッドに腰掛ける。
「騒がしいヤツだな」
「お、お前が急に声をかけるからだっ」
「さいですか」
小鳥遊が布団の中に入ってくる。
来る。襲われる。無理やりヤられる。
「……?」
来ない。
こっそりうしろに目をやると、ベッドの端で横になっている小鳥遊の背中が見えた。
……あれ?
物音に気付いたのか、小鳥遊が顔だけ振り返る。目が合った俺は体を強張らせたのだが――
「月見里。明日早いんだから、スマホばっか見てないで早く寝ろよ」
「お、おう」
「じゃ、おやすみ」
「お、おやすみ……」
挨拶だけして、小鳥遊はまた背を向けた。
あれ? あれ?
こいつ、俺を抱く気がない……だと……?
俺は顔をボッと赤らめた。
ダブルベッドだからと考えすぎた。
お、俺。何やってんだ。尻の準備までして。
恥ずかしすぎて死にそうだ。
もうさっさと寝よう。このことは全て寝て忘れる。大丈夫だ。寝たら忘れる。
俺は慌ただしく頭まで布団に潜り込んだ。
それと同時に、うしろから小鳥遊に抱きしめられる。
「っ!?」
「さっきから何をバタバタしているんだ?」
そう言って、小鳥遊が俺の耳たぶを唇で挟む。
「ん……」
「何もされないかと思った?」
「う、うるさい、やめろそれ……」
「はは。お前の口は本当に甘えるのが下手だな。でも――」
「あっ……」
小鳥遊の指がツンと俺の股間に触れる。
「こっちは甘え上手だなあ。抱きしめられただけでちょっと勃ってる」
「~~……」
バスローブの中に小鳥遊の手が差し込まれる。俺のまだ柔らかいペニスを握り、指で弄ぶ。
「こうされるの、期待してたんだろ?」
「っ……っ、……お前、まだそんなこと言ってんの……っ?」
「ん?」
俺は小鳥遊の顔に目をやり、睨みつける。
「俺が期待してたんじゃない……、お前がただ、俺を抱きたいだけだ……っ」
おもむろに、小鳥遊が上体を起こす。布団を床に落とし、髪をかき上げた。
「俺はお前と違って意地っ張りじゃないからな。それを否定するつもりはサラサラない」
「え」
そして小鳥遊が意地悪く笑った。
「俺にとっては、どっちがどうとかどうでもいい。どっちでもすることは同じなんだからな。新幹線の中で挑発したのは、お前をここで寝かせるためだ。俺がお前を抱くために」
「あっ……!!」
乱暴に脚を開かれ、アナルに指を入れられる。何度か擦ってから指を抜いた小鳥遊は、その指をペロリと舐めた。
「なんだ。お前もその気だったんじゃないか」
「~~……っ」
「さて。明日の会議は午前十時から。九時にここを出れば間に合うな」
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