【完結】【R18BL】男泣かせの名器くん、犬猿の仲に泣かされる

ちゃっぷす

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マッチング

第七話

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 ぷんぷん怒っている俺に、小鳥遊が顔を近づける。
 俺は顔をしかめ、そいつの口を手で塞いだ。

「おい。やめろ。キス禁止」
「……」
「お前誰とでもキスすんの?」
「……逆にお前、誰ともキスしないの?」
「キスは好きなヤツとしかしない」
「セックスは誰とでもするのに?」
「セックスはただの性欲処理。キスは違うだろ」
「へー。変なとこ潔癖」
「うるさい」

 小鳥遊はそれ以上言わず、意外とあっさり引き下がった。

 帰り支度をはじめた俺に、小鳥遊が話しかける。

「もう帰んの? ケツの後処理するぞー?」
「いい。自分でできる」
「さいですか」

 服を着てから、まだ素っ裸でタバコを吸っている小鳥遊に折り入って話をした。

「あの、さ……。今日のこと、誰にも……」
「言うわけないだろ。言っても誰も信じねえよ」
「あと、俺の、その……金曜日にしてることも……」
「言わないって。誰も信じねえんだから」
「そのことで俺を脅すの、もうやめてほしい……」

 小鳥遊は返事をせず、じっと俺を見た。

「やめてほしい?」
「当たり前だろ……」
「ふーん。じゃあ……」

 小鳥遊が、唇をトントンと叩く。

「キスしてくれたら、脅さないって約束してやるよ」
「はあ!?」
「安いモンだろ」
「金とかでどうにかならない!?」
「ええ……キスより金の方がマシなんだ?」

 ちょっと引いた声を出し、すぐにニッコリ笑う。

「だったらなおさら、キスしろ」
「クソォ……」
「あ、ちゃんとベロチューしろよ」
「はあ? 最悪だなお前」

 まあ……キスで脅されなく済むなら……仕方がない。

「おい。口ゆすいでこい。タバコの味嫌いなんだよ」
「へいへい」

 小鳥遊は素直に従い、洗面所に向かった。
 おかしな気分だ。いつもなら俺の言うことを聞かないこいつが、なんの文句も言わずに従った。

「はい。口ゆすいできた」
「くちゅくちゅもしたか?」
「マウスウォッシュのことか? したした。……ぷっ。〝くちゅくちゅ〟って。赤ちゃんか」
「う、うるさい! 早くこっち来い!」

 また小鳥遊が素直に言うことを聞いた。

「背が高いんだよ。かがむか座れ」
「はあ。ワガママだな……」

 小鳥遊がソファに座る。俺はそんな小鳥遊のあごに手を添え、唇を重ねた。
 舌を入れると、小鳥遊が舌を絡めてくる。

 ああ。いやだ。だから嫌いなんだ、キスなんて。
 すぐに気持ち良くなって、もっと甘えたいという気持ちが膨らんできてしまう。

 その感情に囚われてしまう前に、俺は顔を離した。

 小鳥遊は不満そうだ。

「は? もう終わり?」
「終わりだ」
「はー。物足りね」
「……」

 俺は小鳥遊に背を向け、帰り支度を再開した。
 そして帰り際、小鳥遊に念を押す。

「今日のことは忘れろ。いいな?」
「……なあ、お前さ。俺とのセックスどうだった?」
「そんなこと聞くな! どうでもない!」
「ふーん。俺は……けっこう良かった」
「うるさい。聞いてない」

 小鳥遊がいらんことを言う前に、俺が先手を打つ。

「いいか。お前とヤるのはこれが最初で最後だ。二度としない」
「……はいはい」
「じゃ。お先に失礼します」
「はは。ここは会社じゃねえっての」

 帰りの電車の中で、俺は項垂れていた。

 気持ちよかった気持ちよかった気持ちよかった。
 今までの全部のセックスを合わせても、今晩のセックスで得た快感には及ばない。
 どうして小鳥遊なんだ。小鳥遊じゃなかったら、俺からリピートの誘いをしていたのに。
 よりにもよって、どうしてそんなセックスをするヤツが小鳥遊なんだよっ……!!

 帰宅してから俺は、先ほどのセックスを振り返って一人でしてした。
 次の日も、その次の日も、このときの快感を忘れられず、あろうことか小鳥遊の顔と体を思い浮かべながら一人でしてしまった。

 絶頂を迎えたあとは、罪悪感と嫌悪感で吐きそうになる。最悪すぎる。
 どうして小鳥遊なんだよ。
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